▼ 聞こえていたのかもしれない
※現実世界ではスマホでどこでもいっしょはできませんがある設定です
「ただいまー、トロ!」
私はスマホを起動して、トロに話しかける。スマホでどこでもいっしょが遊べる、ということでDLして、トロと話すことが日常なのだ。
とはいえ、実際喋るわけでもない。音声を認識してくれるわけでもないが、こうして話しけることが日課になっているのだ。
『ねえねえ、今日はなにしてあそぶ?』
「そうだね……じゃあ、しりとりしようか」
私はそう言って、メニューからしりとりのボタンを押す。まずは私からってことで適当に短い単語を入れる。教えた言葉をトロが言っていく、そんな流れだ。
『寿司』
「しか……シナモン。あ、んがついた」
『やったー!トロの勝ちニャ』
スマホ内のトロが喜ぶ。しりとりには負けてしまったが、トロが喜んでくれるならいいか。
私はベッドに寝転がり、スマホを布団の上に置く。
「ねえ、トロ。聞いてくれる?」
『どうしたのニャ?』
「今日ね、仕事でうまくいかないことがあったんだ……。些細な失敗だけど、これを引きづってしまう自分が嫌になるんだ」
『……』
「って、トロに愚痴こぼしても仕方ないか!さ、夕飯でも作るか!」
私はそう言って、部屋を出ようとする。スマホ内のトロがセリフを続けたことに気が付かずに。
『トロはいつでもななしのことを見守っているニャ。落ち込んだ時はいつでもトロを頼ってくれてもいいのニャ』
「……?なんか声がしたけど気のせいか」
私はなにか聞こえた?と思ったが、気のせいかと思って部屋を出た。
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