狂気的片恋のセリフ10題 | ナノ
▼ 1.そんなに嫉妬して欲しかった?

「あっ、キバ……」

私はジム戦の終わったキバナに声をかけようとするが、ファンの人達がキバナを取り囲み、和気あいあいと話していた。
邪魔するのもなんだし、後で話しかければいいや、と思って私はこの場を後にした。

「ん? あれ、ななしじゃねえか」

キバナが私に気が付いていたことにさえ気づかずに。



「ねえ、ユキハミ。ここ最近キバナと話す機会ってないよね」
「ハミ」
「別にそんな話とかしたい訳じゃないけど……やっぱ寂しいなって」

私は手持ちのユキハミに話かけながら近くのベンチに座っていた。
ここ最近、キバナはファン達との交流を大事にしている。ファンを大事にするのはいいのだが最近ロクに会ってない、話してないのでちょっと寂しいと思い始めている自分がいるのだ。
私だってキバナと話したい、と小さな嫉妬心が生まれる。下手なことしてキバナを困らせるのも嫌だ。
どうしたらいいのかわからず、唸っていると、隣に誰か腰かけた。キバナだった。

「やーっといたか、ななし」
「……キバナ」
「さっき見かけたから話しかけようとしたらどっか行っちまうし、どうしたんだよ」
「そ、それは……」

私は口ごもる。嫉妬してた、なんてとても言えたもんじゃない。
キバナは私のユキハミを抱っこし、「どうしたんだろうなー?」と聞いている。ああ、もう。

「ファンの人達に嫉妬したくないし、キバナにも嫉妬してほしかった訳じゃない……」
「あ? 嫉妬だあ? オレさまがいつ、嫉妬したんだよ」
「嫉妬してたのは私ってことだよ」
「オレさまのファンに嫉妬するほど構ってほしかったのか、ななしちゃんは」
「ち、違い……そうかも」
「そんなにななしに嫉妬してほしかったと思ったオレもオレだが、そう思い悩むなよ」
「うう……」

私はキバナからユキハミを受け取り、口ごもる。確かに嫉妬したけど、思い悩んでいたのも事実だ。
私はなんて最低なんだろうか。関係ないファンの人達にまで嫉妬心を持ってしまった自分が恥ずかしい。
ユキハミを抱きながらぼんやりしていると、キバナが腕を差し出してきた。

「悩んでないで帰ろうぜ、ななし」
「あ、ああ。そうだね」
「……今度から思いつめんなよ」
「キバナこそ、嫉妬してほしかったとか思わないでね」
「へいへい」
「ハミハミ」

こうして私とユキハミとキバナは家へ戻るのだった。
これからキバナに心配かけないように嫉妬心は押し黙っていよう、と思いつつ。

「オレさまとしては嫉妬に狂ったななしを見たかったけどな」

なんてキバナが呟いたことすら私は気づかずにいた。



1.そんなに嫉妬して欲しかった?
お題:狂気的片恋のセリフ10題

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