狂気的片恋のセリフ10題 | ナノ
▼ 10.行かないで愛してるんだ

※中編主と同じ


「ななし、おはよう」
「はい、おはようございます。ベレトさん」

私は食堂に入ってきたベレトさんに挨拶を交わした。ベレトさんもお辞儀をして食堂の椅子にかける。
「なにか用意しますね」と私が言うと、「ああ」と短い答えが返ってくる。

「ベレトさん、早いですけどどうしたんですか?」
「ななしが起きていると思ってな」
「私は何時でも早く起きてますよ」
「そうか。……みんなはまだ来てないようだな」
「?」

ベレトさんから何か聞こえた気がするけど私は気づかず、そのままキッチンへ行こうとする。
と、ベレトさんが急に立ち上がり、私の前へ立った。

「ななし、話がある」
「えっ、な、なんでしょう」

私は急にベレトさんが目の前に立ったことで困惑する。それはあまりにも突然だったからだ。
私はキッチンへ向かおうとするがベレトさんが通せんぼしてる状態で行くこともできない。

「あの、キッチンへ行きたいんですが」
「行かないでくれ」
「え、でも、お茶入れられないんだけど」
「……俺は君を愛している」
「!」

突然ベレトさんが私の耳元に唇を寄せ、呟いた。あまりの突飛な行動に私は固まってしまう。
幸い他のみんなは来ておらず、私はフリーズを解いてベレトさんの方を向く。

「な、ななな、なんで」
「……二度もいわせないでくれ。俺は君を愛している」
「な、何かの冗談ですよね?」
「冗談ではない」

そう言ってベレトさんは私の手を掴んだ。もうそろそろ他のみんなが起きてきてもおかしくない時間帯だ。
私はベレトさんの手を振りほどこうとするがベレトさんは中々離してくれない。それどころか手をぎゅっと握ってきている。

「あの、離してください」
「それはできない」
「ベレトさんも好きですけど……きゃっ」
「このまま離しはしない」

ベレトさんは手を掴んだまま離そうとしない。これはどうしたもんかと思っていると、食堂から声が近づいてきている気配を察した。
私は離そうとしないベレトさんに頼もうとしたその時、ベレトさんが手を離した。
おそらく他のみんながくることを察したのだろう。手を離してくれたそうだ。

「……続きはまた後で」
「あっ、行っちゃいました……」

ベレトさんはそう言って食堂から出て行ってしまった。私はベレトさんの背中を見つめ、ただこの場で立ち尽くすのだった。


10.行かないで愛してるんだ
お題:狂気的片恋のセリフ


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