愛してるから壊したい10題 | ナノ
▼ 6.じゃあ死んでくれる?

「ごちそうさまです」
「はいよ」

私はキッチンのブーディカさんにトレーを返す。
食堂を出て、仕事に戻ろうと医療室へ向かおうとする。
廊下を歩いていると、いきなり腹に激痛が走った。何者かに殴られたような感覚だ。

「……!」

声を上げることなく、このまま私は意識を失ってしまった。
一瞬だけ見えた景色には黒髪の男が映っていたのだった。



「……ハッ、ここはどこ!?」

私が目覚めると、そこは暗い部屋だった。
部屋の中はとても暗く、何が出てきてもおかしくない。
私がキョロキョロと辺りを見渡していると、一筋の明かりが見えた。

「おっ、目覚めたか」
「えっ、その声、燕青さん?」
「ご名答。いやー、アンタ運ぶのはちと大変だったんだ」

目の前に現れた燕青さんはケラケラ笑っている。何がそんなにおかしいのだろうか。
私はそんな燕青さんに恐る恐る聞いてみる。

「燕青さん、燕青さん、ここはどこですか?」
「ここは倉庫だ」
「な、なんで、私がここに……?」
「何って、俺がアンタをここに連れてきたんだ」
「あっ!」

私はここで倒れる前に一瞬だけ見えた景色を思い返した。
黒髪の男……すなわちそれは燕青さんだったのだ。
だからって、燕青さんが私を殴って倉庫に連れてきたのは謎だが。

「……どうするつもり?」
「別にどうもしないさ」
「じゃあなんで倉庫に連れてきたんですか?」
「そりゃ、アンタが好きだから……って言ったら驚くか?」
「えっ」

突然の爆弾宣言に私は驚いた。まさか、ここで告白されるとは思ってなかったのだ。
私が固まっていると、燕青さんは手を目の前に振り「おーい」と声をかけている。

「な、ななな、なな」
「あれ、そんな驚いた? アンタはそんな鈍くないと思ったんだがな」
「いや、正直驚いてますよ」
「そーかぁ、そりゃ何よりだ。で、そんなアンタに一つ言っておくことがある」
「なんでしょう」
「……死んでくんねえかなぁ」
「!」

燕青さんが突然低い声で呟いた。刹那、私の後ろにある壁が少しえぐれた。
燕青さんが拳で私の後ろの壁を破壊したのだ。私は一瞬、固まってしまい、思わず「ひっ」と声が出てしまった。

「なん、で」
「アンタを誰にも渡したくなくてさ、だから、死んでくれ」
「えっ、ちょっ、分からない」
「だーいじょうぶだって、痛いのは一瞬だけだからさ!」

燕青さんはそう言って笑う。ヤバイ、逃げなきゃ。だが足は動けず、床にへたり込んだままだ。
このままじゃ殺されてしまう。床に這うような体制になってしまい、中々上手く逃げられない。
ゆっくり、倉庫の出口に進もうとすると、燕青さんの足が私の手を踏んだ。

「うぐっ!」
「逃がさねえ」
「は、離して、ください」
「嫌だね。放したら嫌でもここを出ようとするだろ?」

そう言う燕青さんはニヤニヤと私の足を踏みながら笑っている。
私はとにかく逃げようとするも、燕青さんが手を踏んでいるせいかまともに動けない。
そのまま燕青さんは私の顎を持ち上げると、こう言った。

「アンタはこのまま俺が殺してやるよ」

6.じゃあ死んでくれる?
お題:確かに恋だった


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