▼ 5.これが僕の愛し方だよ
「はー、やっと終わった」
書類作業を終え、私は畳の上に盛大に寝転がる。
こんなところ誰かに見られたら叱咤されるかもしれない。だが長い執務から解放された時の解放感は大きい。
私が横になっていると、トントンと、襖を叩く音が聞こえた。
「ちょっと待って……入ってもいいよ」
「僕だよ、ななしちゃん」
襖を開けて入ってきたのは光忠だった。
光忠がなぜこんなタイミングで入ってきたのかは謎だが、何やら真剣な目をしてるように思えた。光忠の金色の瞳からギラギラとした熱意を感じる……と思ったからだ。
「どうしたの? なにかあったの?」
「いや、僕がななしちゃんに会いたかったからだよ」
「会うって、本丸にいる間は何時でも会えるよね?」
「……何もわかってないな」
「え?」
突然光忠が低い声で呟いたかと思えば、突然私の上に覆い被った。
私は押し倒されてることに一瞬遅れ、何が何だかわからない状態だ。
ハッとして私が光忠の腕を振りほどこうと思うも、びくともしない。刀剣男士とはいえこうもびくともしないのか。
「は、離して……」
「どうして? やっと2人になれたんだよ?」
「強引すぎるよ! なんでこんなこと」
「何でこんなことを? はは、ななしちゃん、本当にわかってないな」
光忠は私の耳に顔を寄せ、こう呟いた。
「その気になれば、いつでもななしちゃんを連れていけるってことだよ」
「!?」
「そのためには、多少強引な手を使ってもいいのさ」
これはまずい。神域に連れていかれるかもしれない。
神隠しにあってしまったら元も子もない。
私はジタバタして逃れようとするも、やはりびくともしない。
「無駄だよ」
「!」
光忠は腕を掴んでいた手を離し、抱きしめた。抱きしめられているとはいえとても重く感じる。
手を動かそうにもできず、このまま光忠の胸に抱き留める形になる。
そして、また耳元に唇を寄せ、こう呟いた。
「君を離さないよ、ななしちゃん」
5.これが僕の愛し方だよ
お題:確かに恋だった
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