愛してるから壊したい10題 | ナノ
▼ 3.もっと傷ついてよ

※痛い表現あり


「……! やばい、このままじゃ」
「もらった!」
「あっ、ライチュウ!」

ライチュウはグソクムシャのシザークロスを喰らい、瀕死になってしまう。
私はバトルを挑まれた。その相手はスカル団ボスのグズマであった。
彼に一方的に試合を挑まれた私は断ろうにも断れず、このままバトルになってしまったのだ。

「ライチュウ、大丈夫!?」

私はすぐ倒れたライチュウに駆け寄り、「ごめんね」と謝ることしかできなかった。
私はライチュウをモンスターボールに戻し、ここから去ろうとする。

「おい、どこに行くつもりだ」
「きゃっ……!」

突然足に激痛が走る。アリアドスの毒針だ。
いつの間にか出していたんだろう、グズマの後ろからアリアドスが現れる。
毒針を足に打ち込まれた私はその場でうずくまり、激痛に顔をゆがめる。

「な、なにをするの……!」
「逃がさねえぜ」
「私に……なにか……恨みでもあるんですか!?」

私が狼狽するとグズマは「ハッ」と鼻で笑う。
まるで獲物を見つけたルガルガン(まよなかのすがた)のようなギラギラとした瞳だ。
そのままグズマは毒針を刺した方の足を踏みつける。

「!? うぐっ、はぁっ……!」
「いい顔してんじゃねえか、なあ!」
「ぐうッ、はぁっ!?」

このままグズマは足をグリグリと踏みつける。
痛みが激痛となって襲い掛かり、意識も飛びそうだ。
ここでグズマは何かを取り出した。毒消しだ。
私は一縷の望みで毒消しに手を伸ばす。グズマはそんな私を見て、あざ笑う。

「こいつが欲しいのか?」
「……お願い……だから、それを……渡して……」
「いいぜ。渡すってんなら条件がある」

グズマはこのまま笑いながら顔を近づかせる。
意識が朦朧とする中でニヤついたグズマの顔が映る。なんでこんなことをするんだろうと思いつつも、今はライチュウを早くポケモンセンターに連れて行ってあげたいのと私も毒が回ってきて意識を手放してしまいそうな感覚に襲われる。

「お前が俺様の物になるってんなら、渡してやるぜ」
「……!」
「断るなら命の保証すら危ねえかもなあ? ななしさんよ」
「……」

私は絶句した。今、この男は、なんといったのか。そう、グズマの所有物になれと言ったのだ。
正直この男に屈するのも嫌だが、そんな状況でもない。
私は絞り出すように声を発した。

「……お願いします」
「ハッ、いい返事じゃねえか。おら、使え」
「……ありがとうございます」

私は毒消しで毒を治しながら、グズマを見つめる。
グズマは「何見てんだ」って顔で睨んでくる。正直怖いです。
私は振り絞って聞いてみた。

「あの、なんで……こんなことするんですか……」
「一目会ったときからてめえはこの俺様がぶっ壊してやりてえと思ってな」
「えっ、だから、なんで」
「てめえが気に入らねえからだよ、島巡りトレーナーのななし」

グズマはそう言うなり、私の顎をクイっとあげさせる。
顔が近い。ギラギラした瞳が私をとらえて離さない。
私はビクビクしながらグズマから目を逸らそうとする。だが逸らすことはできない。
グズマはニヤリと笑って、こう告げた。

「傷つけて、痛めつけて、屈服させたかったんだよ」


3.もっと傷ついてよ
お題:確かに恋だった


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