▼ 2.その顔、好きだな
「ッ……!」
「ハハッ、いい顔しちゅーな」
いきなり歩いていたら岡田さんに首筋に刀を突き付けられた。
岡田さんに何か気に障ることをしたのだろうか。否、何もしてないハズだ。
悪口を言ったわけでも、避けていた訳でもない。ただ、本当に覚えがないのだ。
私は刀を突き付けられようとも振り絞って岡田さんに尋ねる。
「あの……! 私、なにか気に障ることでもしたのでしょうか?」
「いんや、別に」
「じゃあ何でこんなことするんです……?」
「何って、そりゃあ……」
岡田さんは舌なめずりをしながら私の顔を嘗め回すように眺める。気分は蛇に睨まれた蛙のようであり、緊張が背中を駆け回る。
早く解放してほしい……と思いつつも岡田さんはなお、刀を私の首筋に向けたままだ。
「おまんの苦痛に歪む顔を見たいと思うてのう」
「な、なんで私なんですか……!」
「おまんを一目見たときからじゃき」
「ッ……!」
私は刀に当たらないように後退する。後退すると、岡田さんも刀をこちらへにじり寄らせる。
私の首と刀が当たりそうな距離になっており、後ろには壁、前には刀を持った岡田さんがいて逃げ場はどこにもなくなってしまった。
「これで逃げ場はのうなった。観念するがよな」
「い、いい加減、離してください……」
「嫌じゃ。おまんはわしの物じゃき。逃がす気はない」
「うう……」
「いい顔じゃのう」
岡田さんの顔が近くなる。ああ、これは到底逃げられない。
まるで今の岡田さんは獲物を捕らえた狼のようだ。岡田さんはギラギラした瞳でこちらを見つめている。
観念したように私は目をつむるのだった。
2.その顔、好きだな
お題:確かに恋だった
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