リクエスト | ナノ
▼ 私の瞳

私は今、ナックルシティに来ている。
ついさっき、相棒のパルスワンと共にワイルドエリアを抜けてきたばかりなのであちこち泥まみれだ。早くポケモンセンターへ向かわないと。
ポケモンセンターを探してウロウロする。目の前に誰か来てることにも気が付かずに。

「いたっ……!」
「おっと」

倒れそうになる私を、誰かが支えてくれたようだ。
パルスワンも近寄ってきて、「クウン」と泣き始める。どうやら心配してくれてるらしい。
私はパルスワンに「ありがと」と返し、支えてくれた人の方を見る。

「あ、ありがとうございます……」
「おう、気にすんな」

支えてくれた人物はニッと笑った。
この人物をどこかで見た気がする。確か、ナックルシティジムリーダーのキバナさんだ。

「あなたは、確か、キバナさん……?」
「いかにも、キバナさまだぜ」
「え、でも、ジムチャレンジとかは大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。もう少ししたら戻るからよ」

キバナさんはグッと親指を立てる。
私は「ありがとうございます」と返し、ポケモンセンターへ向かおうとする。が、キバナさんが突然私の腕を掴んだ。
私は一瞬、何が起こったかわからず「?」を浮かべる。キバナさんはそんなことはお構いなしに私の顔をまじまじと見つめる。あまりの恥ずかしさに爆発しそうだ。

「な、なんですか……?」
「いや、お前、オッドアイなんだなって」
「!」

私は被っていた帽子を目深に被りなおそうとする。
私は生まれつきオッドアイであり、それが原因でからかわれたりいじめられたりしたのだ。
この目を隠すように帽子を目深に被ったりして、なんとかやり過ごしてきた。だが、ここでオッドアイがバレてしまった。
私はキバナさんから逃げるように後ろを向いて走りだそうとするが、キバナさんの腕はまだ私の腕を掴んでいる。
パルスワンもキバナさんに向かって敵対心むき出しで睨んでいる。ああ、早くこの場を去りたい。

「落ち着けって、パルスワンもお前も」
「い、いえ、もう、離してください……!」
「パルルッ……!」
「なんていうか、その瞳、綺麗だなって」
「えっ」

そんなことを言われたのは初めてだ。
私のこのオッドアイは昔から人に気味悪がらていたのだ。今更こんなことを言う人がいるなんて。
私は思わず地べたに座り、泣いてしまう。

「うっ……くっ」
「あちゃあー……泣いちまったか」
「ワン!」
「いきなり悪かったな、ほら、おぶってやるからよ」

そう言うなりキバナさんは私に背中を差し出す。どうやらおぶってくれるようだ。
未だ敵対心マシマシのパルスワンを一旦戻し、私はキバナさんの背中へダイブする。なんだかとても落ち着く背中だ。暖かい。

「悪かったな、ポケモンセンターまで送るぜ」
「……ありがとうございます。後、この瞳について綺麗って言ったのはあなたが初めてです」
「そうかそうか。綺麗なんだから誇ってもいいと思うぜ」
「……いきなりは無理ですよ」

私はキバナさんの背中で苦笑した。
と、ポケモンセンターへ着いたらしく、キバナさんは私を降ろした。私もキバナさんの背から降り、立ち上がる。

「先ほどは本当にごめんなさい。ありがとうございます」
「いいってことよ。そういや、お前、名はなんだ?」
「私はななしです」
「じゃあななし、また会えたらいいな!」

キバナさんはそう言って去っていった。
私もまた、ポケモンセンターへ入っていくのだった。



戻る



book

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -