リクエスト | ナノ
▼ そんな私達は

「あっ、ほらほら、タマゴが孵るよ」
「おお、そうか」
「とか言ってるそばからスマホロトム準備してるし……」

そろそろ生まれるであろうタマゴを前にスマホロトムを向けるキバナ。
かれこれ2日前に預け屋さんからいただいたタマゴだが、なんのポケモンかは知らされていない。
預け屋さんは「大事に育ててくださいね!」と言われたが、いざ孵るタマゴを前に私もキバナもワクワクしていたのだ。
タマゴの殻が完全に割れ、タマゴからはピチューが孵ったのだ。

「ピッチュー!」
「わあ、ピチューだ!」
「よし、ピチュー。このままだ」
「ピチュピ?」

キョトンとするピチューを前に、キバナはスマホロトムを向け、シャッターを切ろうとする。
それを見た私はキバナを止めようとする。

「ちょっと、驚かせちゃダメ」
「わーったよ。ほら、ピチュー、来な」
「ピチュ」
「ずるい、私もピチュー抱っこしたい」

ピチューを抱き始めるキバナに私は羨むような視線を向ける。
キバナはピチューを抱き、「よしよし」と頭を撫でる。

「次は私に抱っこさせてね」
「はいはい」
「ピチューッ」
「眠かったみたいだね」

ピチューは屈伸をした後、キバナの腕の中で眠ってしまった。
キバナからピチューを受け取り、今は私の腕の中で眠っている。
これが赤ちゃんを育てる感覚か……と思っているとキバナが「お前、すげー顔ニヤケてるぞ」と言われた。ちょっと照れる。

「あれ、キバナさんにななしさん」

突然、声をかけられた。その声の先を見るとチャンピオン、ダンデを打ち破ったトレーナー、ユウリがいた。
ユウリは声をかけた後、こちらへ接近してきた。

「チャンピオンじゃねえか。どうした?」
「いえ、ちょっとワイルドエリアを探索しようと思って、旅の支度をと」
「そうか。無理すんなよ」
「はい! ところでこのピチュー、可愛いですね」

ユウリは私の腕の中で眠っているピチューを撫でた。
ピチューは腕で寝がえりを打ちながら「ピチュウ……」と気持ちよさそうに眠っている。

「実はつい先日、預け屋でタマゴをもらいまして」
「そうだったんですね! ふふ、かわいい」
「おい、ななし。あんまり動かすなよ」
「分かってるよ。起きたらフーズ食べさせないと」
「せめて柔らかくしておけよ」
「りょーかい」

私はピチューを起こさないように抱っこする。ピチューもまた気持ちよさそうに寝息を立てている。
そんな私とキバナのやり取りを見ていたユウリがくすくす笑ってこう言った。

「なんか、2人って夫婦みたいですね」
「な!?」「え!?」
「いきなり何を言うのかな、ユウリ!」
「オレさまとななしが付き合ってるからっていきなり夫婦はねーだろ」
「ちょっと、それどういう意味よ」
「まだ早えってことだよ」

私とキバナが言い争うとしようとしたところ、私の腕の中のピチューが「ピチュ……」と不機嫌そうな顔をした。
私もキバナも言い争うのをやめて、ピチューをなだめる。

「ごめん、ピチュー。落ち着いてね」
「悪ィ。うるさかったか?」
「じゃあ、私、ワイルドエリアに行きますね」
「あ、ユウリ、またね」
「無茶はすんなよー」

ワイルドエリアに向かうユウリを見送り、私とキバナとピチューが残された。
私もキバナもお互い黙り、ジムへ帰ろうとする。

「あ、あのさ、本当は、夫婦と言われて嬉しかったかな」
「バカ野郎。オレもだ」
「じゃあ、帰ろうか」
「おう。ピチューもそろそろ起きちまうしな」

そう言って私達はジムへ戻るのだった。


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