森の中、悪魔達に追われていた所を助けてくれたカイナがケイナの妹だと判明した。
今までシルターンに縁がある、という事くらいしかわからなかったのだからそれは大した収穫だったわけだが、それからどうにもケイナの様子はおかしかった。
しかし聞き出すにしても自分は上手く聞けそうにない、とケイナが話してくれるのを待っていたフォルテだったが、どうにもそんな様子が見られない。
痺れを切らしたフォルテはストレートに聞く事にしたのだ、どうしたんだ、と。

「別にどうもしないわよ?」
「そんなわけねぇだろ。アイツと会ってからおかしいだろうが」
「アイツって…カイナちゃんの事?」

どうやら自覚はあるらしい。
それを肯定するとケイナは途端に表情を曇らせる。
それ程に悩んでいるのだと理解すると同時に、ミモザのようにシルターンの事を知っているわけでもない自分に何の助言が出来るだろう、と考えてしまう。

「妹、なんだろ?せっかく会えたんだ、もっと喜べよ」
「嬉しくないわけじゃないのよ。寧ろ何も覚えてない事が申し訳ないくらいだわ」
「いいじゃねぇか、何か思い出すきっかけになるかもしれねぇだろ」

そうね、と苦笑を浮かべるケイナ。
みんなの――ケイナ本人さえ知り得ない彼女の事を知っているカイナとの出会いは幸運だったと言える筈である。
ケイナもレルム村に行く時点で、悩んではいたが記憶を取り戻そうとしていたのだ。
しかし、それが最も彼女が悩んでいる事柄でもあるのだが。

「…もし、もしもよ?記憶が戻ったとして、今の…みんなの事を忘れてしまったら…?」

不安そうにケイナはそう述べる。
それが、今一番のケイナの悩みらしい。
考えもしなかった事柄にフォルテの思考は一瞬停止した。

「有り得ない話じゃないでしょう?最近そんな事ばかり考えてしまうのよ」
「まぁ有り得ないってこたぁねぇだろうな」
「もし、そうなったらフォルテはどうする?」

不安気な表情のままケイナは何かを期待するような瞳でフォルテを見つめる。
その問いに考える事もなく一息つくとフォルテは口を開いた。
それがケイナの欲する応えなのかは考えずに。

「別に何も変わらねぇだろ、出会った時に戻るだけだ。お前には、またオレを知ってもらえばいい」
「……フォルテ」
「心配しなくてもお前が相棒である事に変わりはねぇよ」
「…そうね」

フォルテの言葉に先程までとは違い、明るい笑顔を見せたケイナ。
まるで肩の荷が下りたようなその表情にフォルテも安堵した。
意図せずしてケイナの悩みを解決してしまったのだが、フォルテとしてはただ自分が思った事をそのまま口にしただけの事だった。
勿論、彼女の思いもそうであって欲しいと願いながら。




呆れた後に君は笑った





■実はこの話は書き始めてから1ヵ月くらい経ってます。なのでかなり話が迷子になりました。でもとりあえずね、悩んでるケイナを支えるフォルテみたいなのが書きたかったのでそれが伝われば満足です。



お題配布元:雲の空耳と独り言+α