フラットの中は今日も賑わっている。
この所住んでいる人数が増えたのだから当然だろう。
リプレはいつものように台所に立ち、エドスとジンガは仕事へ。
その他の人達は自分に当てられた部屋でゆっくりしているのか、姿はあまり見えない。
そしてガゼルもいつも通りやる事がないのかブラブラしていた。

「ガーゼールー!」

そうしていると玄関の方から自分を呼ぶ声がした。
声の主は幼馴染みでありフラットの一員であるハルだ。
向こうから出向かないという事は何か手伝って欲しい事があるのだろうと予想しながらガゼルは玄関に向かった。

「何の用だよ、ハル」
「どーせ暇してんでしょ?」
「だから、何の用だって」
「買い物行くから荷物持ち、お願い」

そう言って微笑むハルの手には確かに財布が握られている。
断らせる気など微塵もない、というような笑顔にガゼルは小さく溜め息を吐いた。

「あのなー、俺はここを守るっていう仕事があるんだよ」
「それなら大丈夫でしょ、人数増えたし何よりハヤトだっているし」
「だったらハヤトに頼めばいいだろうがよ」
「あんたそんなに嫌なわけ?」

何とか断ろうとするガゼルにイラっとしたのか、ハルはガゼルを睨み付けた。
それを見て再び溜め息を吐くと、ガゼルはハルの横を通り抜けて玄関を開けた。
ハルはわけがわからなくてその背中をただ見ていた。

「何やってんだよ。買い物、行くんだろ?」
「付き合ってくれるの?」
「しょーがねーからな。ほら行くぞ」

何だかんだでガゼルは付き合ってくれるのだ。
それにハルは嬉しくなって先に出て行ったガゼルをスキップしそうな勢いで追い掛けた。

「お前が買い物なんてめずらしいな」
「うん。偶にはお手伝いしなきゃと思ってね。リプレに任せっきりじゃ悪いでしょ?」

フラットの家事全般はリプレが担当している。
元々フラットにはリプレとハルの二人しかおらず、分担すれば良かったのだろうが、如何せんハルは家事全般が苦手だったのだ。
それでも昔は手伝いをしていたのだが、どうもリプレの仕事を増やしてしまう事の方が多かった為、それも断念した。
そこで久しぶりに何か手伝いを、と思ったら買い物を頼まれたのだ。
人が多くなって買う物も多いし、外は危ないから誰かと一緒に行って来て、と。

「付き合ってくれてありがとう、ガゼル」
「いーって。一人で出歩かれたらたまったもんじゃねぇからな」
「一人じゃ行かないって。その時はハヤト連れてくし」
「バーカ、俺がまた行ってやるよ。どーせ暇だからな」

ガゼルの言葉にハルは頬を緩ませる。
ここの所、オプテュスに絡まれたり、マーン三兄弟といざこざがあったりと皆忙しそうだった。
だからこうしてガゼルと二人きりでいるのも久々のように感じる。
ただ買い物に行っただけではあったが、ハルにはそれが幸せな事のように思えた。




なんでもない日常





■非戦闘員の夢主でお送りしました。糖分足りなくてすみません…。