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邪魔なカッターシャツを脱いで放ると、下着を外させてローションの栓を開ける。体温で暖めておいたそれは生ぬるくトロリと滴り、大きな陰茎とその周りを包み込んだ。割りと鮮やかな赤を、透明な液体が更にいやらしく引き立てる。手のひらに蜜を馴染ませ、甘ったるく熱で握りこんだ。
「ん……くっ、ぁあ」
ビクッと背を反らせた齋藤は、脚を思い切り突っ張らせた。
「あまり動かないで、良いところを触れない」
竿を優しく撫でながら、こぼれたジェルを後ろの穴に擦り付ける。足首を掴んで股を広げると、皮膚の薄い場所を丁寧にマッサージする。何度か緩く押し続けていると、その内にきゅっと締まった蕾がひくひくと伸縮し、指先を軽く咥えこんだ。
「おや、随分と食い付きのいい口だな」
いとも簡単に入ってしまった指をあえて抜かず、時間をかけて挿入しようと試みる。しかし予想とは反して、あっという間に中指を全て飲み込んでしまった。
それでも流石に慣れていない刺激なのか、指1本で大分きつかった。ローションの量を足し、了解を得て薬指も重ねてみるが、処女のそれには厳しいようだ。やみくもに傷付けてしまいたくはないので、素直に1本に戻した。
「どういった感じだ?」
内壁を何度かこすってやりながら、黒部は問う。枕をぎゅっと抱き締めながら、彼は横を向いた。
「っ、うぁ……少し良いけど何か、……違和感が」
関節を折り曲げて、内側を叩いたり押したりしてみる。
「前立腺のあたりも奇妙か?」
「んっ……あ、痒いだけ……」
「……そう、か」
黒部はちょっぴり寂しそうに目尻をすぼめた。当然と言えば当然の反応なのだが、もしかしたらという期待もあった為少ししょんぼりと肩を落とす。
「まあその内慣れるだろう。前立腺も開発すれば良い」
「……はは、43にもなって前立腺開発されるのかぁ」
半目になった齋藤が力の抜けた笑みを浮かべる。
「嫌か?」
「いや……、黒ベエがやりたいようにしてくれたら嬉しいよ」
「なら、エネマグラでも用意しておこうか」
「あ〜……本格的に開発されそうだな……」
「完璧に開発してあげよう。……今だってその第一段階だ」
しっかりとほぐしながら奥の奥まで優しく愛撫を続けた。回すように指を動かすと、時たま喘ぎが漏れてくる。
やがて筋肉の緊張が解け始めたのか、少しばかりだが余裕も出てきた。たっぷり水分を含ませて壁を広げ、色んな箇所をまさぐった。
齋藤は段々と自分で腰を動かすようになった。女にも劣らないような色っぽい姿が目に焼き付く。それなりには気持ちいいらしい。ふと顔を見ると、唾液が滴っている事に気付いた。
余分かと思えるほどに慣らし終えると、粘膜に強い刺激を与えないよう指を抜いた。完全に離れる前に、あっ……という悲しげな声が聞こえ、黒部は数回まばたきをした。
「……もっと、いじっていて欲しかったか?」
あふれそうな涙を拭った齋藤は目を瞑った。
「ぁ……、黒ベエが、触っててくれるなら……それで幸せだよ」
「そうか……」
スラックスのベルトを、片手で器用に外した。チャックを下ろし、下着からモノを取り出す。
「……アナタのお陰で、私も割りとキツいんだ」
固く反ったぺニスを見るなり、齋藤はビクッと背を震わせた。平均など比べ物にならないそれは、フルーツの果肉の様にみずみずしく、繊細な薄紅が鎌首をもたげる。
「……ねぇ、入るかな……?」
「入らなかったら、次回またやろうか」
ポケットからコンドームを取り出し、封を破る。円形のゴムを先に当てると、慣れた手付きで装着した。
「入って欲しいなぁ……」
大袈裟に唾を飲み込む。尻の筋肉が少し締まった。
足首を握る手に力が入り、更に開脚させられる。潤滑油で濡れた股間が気味悪く光を反射する。
「痛かったら、遠慮せずに言って欲しい」
敏感な窪みに、雄の先端が触れた。腰が前に倒れると共に、亀頭が肉壁を抉る。指よりも強い刺激を受け、強烈な痛みに襲われた。表面に感じる鋭さと、内側に感じる鐘のような鈍さに悶絶する。シーツを掴む手に欠陥が浮き出た。
「あぁ……っ、い……いたっ……!くろべっ……いたい!」
目尻を真っ赤にして大粒の滴をこぼした。異変に気付いた黒部がピタリと動きを止める。
「……抜こうか?」
歯を食い縛る姿が痛々しく思えた。足首を放して己のモノに片手を添えようとしたその時、汗ばんだ腕が首元に巻き付いた。バランスを崩し、彼の胸元へと顔が近づく。
「あっ」
ぶつかってしまう、と思ったがそんな衝撃はなかった。その代わり、顔のすぐ横に湿った髪の毛が張り付く。齋藤は上体を起こして肩を抱き締め、男の体にもたれ掛かっていた。
耳のすぐ後ろで、こもった吐息が肌をくすぐる。彼の肩甲骨にそっと手を添えた。
「……至さん?」
「…………抜かなくていい……もう少しゆっくり、に、して……」
「え……?」
「血、がっ……出てもいいから……いれて」
「……どうして?このままでは苦痛を伴うだけでは?」
肩に暖かい滴がぽたりと落ちた。まばらに纏まった黒髪が柔らかな肌をつつく。
「……そりゃ、痛いけど……それだけじゃ、ないんだ…………黒ベエとね、っ……繋がってるだけで、嬉しいんだよ……」
「……!」
ずるずると腕が外れ、ボスンとベッドへ背中から倒れ込む。横に流れた涙がシーツに小さなシミを作っていた。
睫毛が震え、灰色の眼球が乾く。何も言えない空間が黒部の精神を包んだ。局部的に感じる熱と、視覚と聴覚から入りこむ刺激の強い甘みが、男を黙らせた。
ハッと我に返ったのはその数秒後だった。時計の秒針がやけに頭にこだました。ふと斜め下を見やると、変わらぬ淫らな姿がある。
ブツンと何かが切れた。いや、とっくの昔に切れていたのかもしれないが、どっちにしろ、吹っ飛んだ事に気付いたのは今のこの瞬間だった。
途端に、心がメラメラと燃え上がるような熱に浸される。優しさで抑えていた強欲の蓋が外れたのだ。
「3日は座れない事を覚悟してくれ」
口を釣らせた黒部が、喉元に噛みつく。細長い体躯がビンと伸びきった。彼の中に半分入っていたぺニスが存在を主張し、掻き分けるようにズブズブと侵食してくる。
「あっ……!ぁあ、っく……、んん!いっ……!」
苦しそうに詰まった息を吐き出す。全身に汗がにじんだ。
全部入りきるまで腰を押し込んだ。隙間が無いほどギチギチに密着した肉棒を動かそうと、下半身を引く。潤滑油とコンドームのお陰で辛うじてピストンできたが、奥を突かれる衝撃と入り口が引き裂かれんばかりの太さにまた悶えた。苦痛に歪む表情が、可愛らしさと悲しさを携えて黒部の心に突き刺さる。
「痛い……か?」
「あ゙っ、ぅあ……いだい……っ!」
「正直、気持ちよくはない、だろう……?」
「ん……ぅ!少し、……だけっ……」
「そう、か……」
目元を真っ赤にした齋藤に、男は優しく……且つ怪しげに語りかける。
「体勢を……変えても大丈夫か?」
「ぁ……どう、……するの?」
「バック」
一瞬怯んだようだったが、齋藤はこくんと首を縦に振った。
黒部が笑う。腰を優しく持ち上げて、回転させる。両膝をシーツにしっかり着かせると、やんわりと尻を撫でた。ひくりと下半身が震えたのが分かった。
ゆっくりと壁に竿を擦り付けながら、男は齋藤の陰茎に手を伸ばした。細長い指が勃起した肉棒に絡み付く。
「いっ!……ぁ、……くっ、ん!」
ひどいヌメり気と痺れるような熱が走った。
「アナタの竿を……扱いてあげようと思ってね。初夜なんだ……、後ろで感じられないのは、致し方ないだろう」
下半身を打ち付けながら、亀頭をいじくる。先走りからドロリと蜜が溢れた。竿全体を手のひらで擦ってやると、布を握っていた彼の拳が更に固くなる。がくんと項垂れて、ただひたすらに喘いでいる。
「気持ち良いか……?」
「う……んっ、ぁ……!」
ゆさゆさと全身を揺らして激痛と快楽に身を溺れさせる。奥を突いた時にぎゅっと固く咥えられる感覚が、黒部を虜にした。
やがて、動きが自然と激しくなってゆく。肉が打ち付けられたり、グチャッグチャッという粘液が擦れたりする音が2人の耳を犯した。
その時、ビリッという鋭い何かが、孔を刺激した。直後、齋藤の上半身が、崩れるようにベッドへ倒れこんだ。皮膚が裂けて切れてしまったのか、突っ込まれる度に感じていた痛みが余計に酷くなった。
「ぁ……ぐっ!いた、ぁ……ぅう……!」
唾液が白いシーツに滴る。黒部が彼の肩に手を添えた。
「痛いか?」
「い゙だ……ぃだいっ!けど、……だい、じょうぶ……!」
「……我慢はするなよ」
「ひ……っ、あぁ!」
優雅な手付きで、亀頭を柔らかく潰される。呻きが一際大きくなった。血が滲む接触部が熱を発する。貫かれる速度がどんどんと増していった。
陰茎を扱かれ、後ろを抉られる。初めての感触に戸惑いつつも、確実によがっていた。今までになかった締まり具合と反応に、黒部の中でも興奮が渦を巻いて広がる。お互いにかなり良いところまで来ている事には気付いていた。
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