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寿三郎が、水族館に行きたいと言った。
久しぶりの休みで、うきうきしているのだろう。合宿に参加していれば、1日まるっと休めることはそうあんまりない。寿三郎が目を輝かせているのを見れば、俺は首を横に振る道理はなかった。
とても、楽しそうな顔をしていた。早く行きたいという言葉は何度も聞いた。その度に、俺にも浮き足立つ心が存在することを実感した。
当日はとても浮かれた。同じ部屋で待ち合わせ、日帰りのデートだった。クローゼットの奥から私服を引っ張り出して鏡の前で何度もコーデを合わせ直した。らしくないと言われてしまえばそれまでだろう。
2人で合宿所を出て、バスに揺られる。何時間も乗っていなければならないのだが、2人で話していれば長時間のバスでも一瞬だった。
ああ、楽しい。満たされる。水族館に着く前から、そんな気持ちに浸された。
手は繋がない。人前で目立った行動はしたくないのだ。その代わり、スキンシップーー手を引っ張ったり、肩を叩いたりーーは多い。
お目当ての水族館に着くと、寿三郎はより一層目を輝かせた。俺の腕を引っ張って、イルカショーを見たいと鼻息を荒げる。端的に言って、可愛かった。お前の好きな所なら、どこでも着いて行ってやろうと思った。

そんな時だった、スマホが機械的な音を立てて鳴ったのは。



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