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ざあざあと強い雨が、合宿所の屋根に降り注いでいる。雨粒はぱたぱたと音を立て、重力のままに地面へ滑り落ちて行く。濡れたアジサイが美しさを醸し出していた。
天候は、雷や風を伴うか、と聞かれればそこまで酷くはないようだが、屋外練習は中止になる程度ではあった。
コーチ陣は会議があるらしく、要件だけを伝えると監視はせずにさっさと会議室の方へ行ってしまう。要件とは、今日は各自でトレーニングをするようにという事だった。
指示を受けた選手らは、ジム、屋内コート、体育館と様々な場所で各々が体を鍛える。胸筋を鍛える道具やランニングマシーンと言ったハイテクな機械を使う者もいれば、地道に腹筋背筋体幹など、物に頼らずに汗をかく者もいた。


そんな中、人気の全くない場所……もとい機械の不良品や廃棄物をまとめて置く倉庫に連れ込まれる者がいた。何やら無理矢理だったようで弱いが抵抗を試みている。が、それは虚しく、監視カメラも何も設置されていない倉庫内へ呆気なく引きずりこまれて行った。
中で、連れ込んだ方が電気をつける。外から入り込む薄暗い光を頼りに、人差し指をスイッチに触れさせた。カチッという音と共に薄暗い明かりが灯る。橙色をした光は、機械の廃棄品に囲まれる二人の人物を照らし出した。
スイッチに指を当てる毛利と、強制的に引きずりこまれ少々の焦りの表情を浮かべて座り込む越知がそこにいた。
雨が勢いを増して豪雨になりつつある音が室内に響く。時折ぱぱっと消えかかる電球を背景に毛利はにこりと笑った。

「月光さん。ここに来た意味、分かっとるっすよね?」

ぞくり。越知の背中に冷たいものが走った。
彼から目を逸らさずに、ゆっくり唾を飲み込む。笑みは壊れない。冷や汗が垂れた。何故わざわざここへ連れ込んだのか、大体見当はついている。それ故の反応だった。
毛利は表情を崩さぬまま、木製の床にかかとを擦らせながらこちらに近づいて来た。その異様な圧の所為で体が動かない。ただ彼が近づいてくるのを眺めるしかなかった。
触れられるくらいの距離になると、突然上ジャージのチャックを下げられた。羞恥混じりのやめろという声は聞こえていたのだろうか。いや、恐らくノーだ。火照ってしまう体温を気にせず、毛利は中に着ていた半袖ユニフォームの襟を広げた。

「……まだ残っとるんすか、痕。」

ふっと鼻で笑われる。びくりと少し身を引いた。
鎖骨に、以前毛利が付けた印が浮き出ていた。それも一つではなく何箇所にも渡って。
雪のように白い肌に、紅色のキスマークはかなり目立つ。越知は思わず背けた顔を赤らめながら掌でそれを隠した。前髪の所為で細かな表情は分からないが、かなり動揺しているようだ。それを確認した毛利は更に笑う。

「かわええ反応っすね。せやけど……今からもっと可愛くさせたりますわ。」

喋り終わるや否や、顔を至近距離まで近付けられた。
顎をやや強引に掴まれる。強制的に上を向かされると、眩しい電球が目に入った。その所為で目を瞑りかけると、突然口内に熱を感じた。急な事に覚えず身じろぐも、すぐに大人しくなった。
貪られるような激しいキス。彼の舌が優しく中を掻き回す。啜りきれなかった唾液が口端から溢れて伝った。息継ぎをする事さえ惜しいものに感じられ、生理的に瞳が潤んだ。

「…………んぅっ、ふ……」

熱くて、気持ち良くて、ひとりでに細い声が漏れた。キス以外何もされていないのに体がひくひくと反応してしまう。無論、股間も例外ではない。合間の吐息までもが熱く感じられてどんどん酔いしれていった。
ふるふると体を震わせる相手から口を離した毛利は、その異様な体温と反応に些か驚いた。だがすぐに首筋に吸い付きながら力任せではあるが優しく押し倒してやる。
愛する人がこんな姿になるのはいつ以来だろう。舌と唇で鎖骨の窪みを弄りながらジャージをはだけさせる。
長袖は完全に脱がせて彼の横において置く。半袖はと言うと、ある分のボタンをすべて外して捲った。
だらしなく露出させた肩に舌をねぶらせてから、捲り上げたユニフォームの下に隠れる薄い胸板に手を這わせる。美白でもしてるのかと問いたくなるような肌は、セックスをするたびに見惚れてしまう。その上引き締まった筋肉は美しく、性欲をそそる。固くなく柔らかくもなく、塩梅がいいと言うかバランスが取れていた。
かする程度に胸を撫でていると、指の腹が桜色の突起を捉えた。同時に彼の体が反応したのが伝わって来た。
親指の先端で転がすようにくにくにと弄んでみる。押し潰したり、爪で軽く引っ掻いたり。しかし少し刺激が強かったようだ。

「ひっ……やめ、っ!」

ひくひくっ、と大きく体が跳ねた。かなり高く、そして大きな声だった。無意識だったらしい。真っ赤な顔の彼は乱された衣服の隙間から手を出すと、喘ぐ口を覆う。きゅっと瞑った瞼が震え、睫毛の先に付着した涙が揺れる。もうすでに立ち上がっているモノは、ズボンを雄々しく突き上げていた。先走りはぐしょぐしょに濡れていて、布にシミを作っている。それを見られるのは羞恥以外の何物でもない。途轍もなく恥ずかしい思いをしたと越知は唇を噛む。
毛利は、そっと下半身に手を伸ばした。布越しでも分かる巨根につんつんと触る。

「あっ……やめ、ろっ……!」

「やめろ言われてやめる奴なんざおりまへんで。」

毛利が両手をズボンにかける。それと下着を同時に下げた。布が性器に擦れるだけでもまた感じてしまう。中々脱ぎたがらないのをよそに、一気に足首まで下げられる。それからすっかり脱がされて衣服を放られると、手でモノを鷲掴みにされた。

「っ?!」

熱い掌と圧迫感に、たまらず射精しかける。先から溢れ出る透明な粘りけのある液体が毛利の指に付着した。人差し指と親指の腹を擦り付けるようにして粘りけを確かめる。

「随分と濡れてるっすねえ……溜まってたんすか?」

若干の微笑みを浮かべながら、ずいっと顔をそれを近づけた。太く、固く、長い恋人のそれ。毛利は目を瞑ると口一杯に含んだ。越知は長い脚を閉じようとするも、彼が股の間に座っているので無理であった。思い通りにならない歯痒さと快感。みるみる内に快楽の波が激しくうねる。
粘液と熱が混ざりあって、摩擦が発生する。口内と舌のぬめり気が竿を刺激した。もぐもぐと咀嚼しながら、先端部を吸い上げる。いやらしい吸入音が二人の耳に届くと、毛利は頬を緩め、越知は小さな声を上げた。

「毛利っ、……もう、いいから……挿れ、てくれっ」

強く感じるもどかしさ。上体を起こした越知は、自身にしゃぶりつく相手の頬を両手で優しく挟んだ。
頬に肌の温かみを感じた毛利は、しゃぶっていたものから口を離す。

「挿れて欲しいんなら、言い方ってもんがありまっせ?」

瞳に映った彼は、顔を赤らめながら息を荒げていた。頬にへばりつく髪は、うっすらかいている汗かもしくは悪天候の為の湿気か、色っぽさを滲ませている。

「挿れて……くださ、い……」

越知にとっては精一杯の懇願だった。
ただでさえ年下に敷かれているというのに、辱しめの言葉を吐かされる屈辱感。しかもそれは自分の意思であってそうではない。二人きりとは言え恥ずかしいものは恥ずかしい。思わず顔を背けた。

「しゃーないっすねぇ……暴れんで下さいよ?」

舌舐めずり。単純な動作にもいちいち反応してしまう。
片方の足首を掴まれ、ぐいっと頭側に押される。そうすると竿と孔がよく見えるようになった。敏感に反応を示す性器が晒されているようだった。毎度の事ながら慣れずに目を背けたままにした。

「いっ……あ!」

蕾に異物感を感じた。湿り気のない指が内部に入ってきたのだ。それは圧迫感と快感を伴う。二本のそれでぐりぐりと内壁を抉られ、出したくもない声が漏れた。
ぐちぐちと粘膜が伸縮する。普段はきつく締められている排泄器官が、たった二本の指により確実に広がっていく。中で蠢く別の個体に息を詰まらせながら、かはっとよだれを垂らした。

「ふは、そんなにええんすか?」

火照る顔を覗き込まれる。と同時にまた奧を突かれた。むず痒いようなイイような形容しがたい感覚。本数の増えた指はきつくて、背を弓なりに反らした。

「あ…………きつ、ぃ……」

しゃくり上げるような呻きは、雨音に掻き消されて外には聞こえない。

「まーた、冗談言わへんで下さいよ。これから俺が入るんすから、しっかり慣らしとかんとね?」

毛利はニヒルに笑って見せた。そうしてから自身を挿れる為に指を抜いてやる。異物の許容を許していた越知の孔は、ひくひくと相手を求める様に微かに収縮した。
毛利はジャージと下着を少し下ろした。布の奥には越知程には及ばないがそれでも立派な雄が覗いている。固そうな雄に貫かれる自分を想像してしまった越知は、淫らに息をこぼしながらゆっくり瞬きをした。

「挿れまっせ?」

足首を掴まれたまま、蕾に竿があてがわれる。先程まで指を飲み込んでいた孔は、それを素直に受け入れた。ずぶりずぶりと侵食される痛みと圧迫感に圧されて、足指に力が入る。一方毛利も締められる様で、全てを挿入するまでに時間を要していた。
やがて竿が全部入りきると、律動をし始めた。

「っ、あぁ、……は、ぁ……」

始めこそは遅々としていたものの、慣れてくるにつれ速度は速まってゆく。前立腺を掠められ、肌と肌を打ち付けられ、越知の頭がぼうっとしていく。何物にも代えがたい淫らな欲求が思考を包んだ。
目が霞んだ。奧を突かれるたびに、呻きにも似た喘ぎが漏れる。熱い。熱を帯びたモノは内壁を削るように擦ってきた。文字通り一体化したような錯覚に陥り、目元を手で覆った。視界が闇と化すと、一段と音がすんなり入ってくる。自分の喘ぎ声、毛利の喘ぎ声、部屋に響く肉と水の音。それが聞こえる事で更に興奮する。時折耳元で言葉を囁かれ、吐息をかけられる。耳が弱点の越知はそこを執拗に責められ身を捩り続けた。

がくんがくんと体を激しく揺らしながら、登り詰めてくる絶頂の存在を感じた。握り拳に力が入る。唾を飲み込む喉が震えた。限界は着実に近付いている。もうそろそろだ。

「月光さ、ん……っ、そろそろ、あかんとっ、ちゃいます?」

一筋の汗を垂らしながら、毛利が問うてくる。その顔にはもう余裕のよの字もない。彼も絶頂に支配されるかされないかのところなのだろう。頬が紅いのが辛うじて分かった。
ぼやけた焦点を鮮明にしようと、越知は目を細めた。手を伸ばして彼の頬を両手で包み、引き寄せる。脳ははっきりと毛利の顔を認識した。目が合い、にこりと微笑まれる。抑制の利かない越知は無理に上体を起こして唇を重ねた。ほんの一瞬だったが刹那、ぴりぴりと弾ける電気のような快感に体を支配された。

「…………いっ……!」

激しい動悸と詰まる息。限界を迎えた越知は、一際大きく胴体をうねらせた。痙攣するように足をばたつかせると共に白濁を噴射させる。放物線状に押し出された精液は、自分の腹部にべったりとかかった。
同時に、思い切り締め付けられた毛利も中で果てる。濃厚で多量の熱は、越知の内部に絡むようにして付着した。粘度の高い白濁と我慢汁と腸液とで、竿の先端部はぐしゃぐしゃに濡れている感じがする。毛利は根元に手を添えると、収縮してがっちりと自身を咥える孔からそれをゆっくり引き抜いた。水音を立てながら出てきた竿は全てを出し切っており、固さはまだ残るものの柔らかみを醸し出していた。液体をポケットティッシュで拭き取り、元通りに下着の中にしまうと、ふと越知の方を見やる。彼は顔を両手で覆い、仰向けに転がっていた。腹にかかった白濁はそのままで、放っておいたら臭いが移ってしまいそうだ。仕方ないなとごしごし拭いてやる。

「月光さん」

……反応はない。大方恥ずかしすぎて掌をどけられないのだろう。ふいっと顔を背けられて、毛利は苦笑する。

「月光さん、今日のトレーニングさぼった理由は内緒でっせ。」

さぼった理由とは、つまりセックスをしていて時間を潰してしまった事だ。
そんな事は言わずもがなだろうと、越知は内心声を荒げた。


今までも、セックスを理由にさぼってしまった事が何度かあった。最初は反対していたものの、渋々応じてしまったのがきっかけだった。それからと言うもの、全てを預けたあの日から事を重ねるごとに深みに堕ちていく。まるで底無し沼に囚われたかのように。もがけばもがく程に苦しめられ、快楽に溺れる。振り払う事は、絶対に出来ない。
これからも、こいつのさぼりに付き合わされるのだろう。猛々しく強気な恋人にすっかり敷かれた越知は、深く溜め息を着き、そして掌の奥でそっと目を瞑った。




END




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