先輩は、新堂さんのことが好きらしい。
それはきっと、僕と知り合うずっと前から。
別にそれは構わない。
でも、こうして新堂さんと何かある度に来られると
こちらも心が痛い。



≪限定独占欲≫




「ここ最近ずっとですよ」
「何が?」

僕の横でパンを食べながらきょとんとする先輩。
放課後の屋上。
いつもは僕一人なのにここ最近毎日いるこの人。
そして僕の隣でお菓子やらご飯やら食べながらただ僕を見ているだけなのだ。

「一体何があったんですか」
「別に何もないよ」

嘘だ。
先輩は基本的に僕といることは少ない。
僕の所に来る時は、必ずと言っていいほど新堂さんと何かあった時だ。
そもそも他に友達だっているだろうに、何故僕の所へ来るのかよくわからない。
一体僕は何だと思われているのでしょう。

「もしかして邪魔?」
「邪魔というか、理由を仰らないので聞いてるだけなんですけど」
「理由がなきゃ、ダメかな」

それは反則というものだ。
そんな風に言われたら構いませんと言うしかないじゃないか。
一方的な僕の想いを知ってて言っているのだろうか。
そうだとしたらかなりの悪女である。

僕だって、こうして来てくれることは嬉しい。
ただ、いつも新堂さんの代わりなんだろうと思わされる。
喧嘩をしたとか、新堂さんに人気が出て近づけなくなったとか
来る時に必ずそんなことを言っている。
いつだって新堂さん新堂さんと新堂さんのことばかり。
そんな人が何もなくここにいるわけがない。
隙があれば新堂さんといたいはずなのだから。

なのにそれを教えてくれないなんて、卑怯です。

「…ごめん、嘘だよ。ずるいよね、私」

じっと見てたせいか、いつの間にか泣きそうになっている先輩。
ハンカチを渡すと、ありがとうと言って笑う。

「新堂にね、彼女できちゃったんだ。
 それで、辛くて、顔も見たくなくて」
「新堂さんから告白したんですか?」
「ううん、違うんだけど…」

あぁ、だったら先輩は、別れたと同時に戻ってしまうんだろう。
またそうして僕は、来るかどうかもわからない先輩のために屋上で待つのだ。
本当は図書室で読んでいたい時もある。
本当は家に帰りたい時もある。
それでも、先輩が来てくれるならと待っている僕は、どうしても先輩が大好きで。

このまままた新堂さんに返すくらいなら。

「ずっといればいいじゃないですか」
「え?」

ずっとずっと、新堂さんが別れたって僕と一緒にいればいい。
そう思うのに、そう言いたいのに。

「…別に、気が済むまでいてくださって構いませんよ」
「うん、ありがとう」

先輩が来る度に苦しくなるのは
きっと勇気がない自分を思い知らされるからなんだろう。
でもいつか、せめて理由だけでも聞ければいい。
いつかいつか。
もしかしたらまた新堂さんの所に戻っても
たまにでも僕を思い出してくれるのなら。

「先輩は、笑ってた方がいいですよ」
「そうかな」
「えぇ。少なくとも、僕は笑っていてほしいです」

笑ってください。
僕の前では。
僕のためだけに。

せめて、新堂さんから離れているこの間だけは。



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