さよならペシミスト | ナノ




僕は、恵まれているんだろうな、とは思っていた。

さよならペシミスト

親の教育方針で、裕福な家庭に育ったにもかかわらず僕は公立の小、中学校に通っていた。


一度教えられれば、基本的に何でも覚えられた。ルックスは女受けするようだったし、部活は無所属だったのに運動も人並み以上にできた。
政治家とその秘書を親に持っていて裕福で、そんな境遇から優等生も演じてやった。
自分で言うのもなんだけど、なんて可愛いげのない子供だったろう。

僕の長所は、僕を形作るすべてであった。同時にそれらは人間としては、すべてにおいての欠点でもあった。自分には感情が少し欠落しているらしかった。
太宰治の人間失格を読んだ、「あぁ、これは僕だ。僕と同じ人間がこんな所にいる。」
勿論僕は、変なモノに手を出すほどの愚者にはなれなかったが、そのとき感じた嬉しさが、一番の感情の揺れだなんて、僕は確かに道化であった。




うっすらと目を開けると、なんてことはない、僕が最近住むようになった部屋のベッドの上。
らしくもない夢を見た。小学校、中学校時代の僕の過去。

誰とでも仲良くしたけど、友達だと思える人はいなかった。僕は誰にも本当の性格―虚無主義である自分を見せた事はなかったしこれからも見せることはないのだろうと思っていたのに。


転機は突然訪れる。友達をすっ飛ばして親友になったソイツと、初めて大学で出逢ったのだ。

あの日はよく覚えている。
「あー、俺お前と話してみたかったんだよねぇ。」
ソイツは明るい茶髪に染められた癖ッ毛を太陽に反射させて、へらりと話し掛けた。

貴方と話すことなんて何もないのに。確かこの人はどこぞの社長令息だったはずだ。女遊びにかまけた、チャラいやつ。
「本当!?うれしいなぁ!」

「あー、そっちじゃなくて、」

僕の道化師の仮面は次の瞬間崩れ落ちた。

目に妖しい光を湛えて、声を低く小さくしてソイツは嘲笑(ワラ)った。
「本性出せよ、俺と同じ卑屈な目をしてる人間さん。」
「安心しろ、俺とお前は同類だ。」



ソイツはまたへらりとして陽気な声を出す。今度は分かった、いつものコイツは演技なのだ。
「いやーお仲間サンに初めて会ったからチョーシ乗っちゃったよ。あ、また話し掛けッから、そんときゃ面白い話よろしくなぁー。」
頭上で星が回っている僕に笑ってアイツは手を振り去っていった。

それから僕達は頻繁に話すようになり、驚くほど互いは馬が合い、共感できる事に気付いた。


僕は相変わらず虚無主義であったが、同類を得た僕は驚くほど吹っ切れた。
昔のように僕はそれを悲観することは無くなったのだ。


さよならペシミスト
(悲観論者)

(僕は道化だ。だったら道化師らしくこの世の総てを演じてやろうじゃあないか!!)


お題 風雅


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