【正反対のクローバー】

<書き直しver>

私は小さくため息を吐いた。
彼女は、幼い。客観的に見れば、とても私と彼女が友人だなんて思えなかった。

ただでさえ鬱陶しい茹だるような暑さの夏、番号順という問答無用で決められた外掃除。中々抜けない雑草を延々と抜く作業。それらを突っ込むはずの大きなごみ袋は穴が空いている。

これだけでも不快指数はうなぎ登りだというのに、彼女ときたら。

「手、動かしてよ」


「え、うん。ごめんなさい」


目の前の蝶を目で追っていたり、白詰草を結って薬指につけ、「指輪ー」なんてことをしていたり。

ガキか、君は。仮にも中学生でしょうに、なんてことは言わない。経験上分かっているからだ。こういう奴には言っても無駄だ。
私は1人呆れ返りながら、働かない友人の分までやらなければならない理不尽をため息に変えた。

「あっ」

不意に彼女が声をあげた。目を輝かせて草むらにしゃがみこむと、汚れることも躊躇わずに小さな色白の手を伸ばす。そして右手の平に何かを乗せると、私の方に駆け寄ってくる。

女の子らしい薄桃色の手のひらに行儀よく置かれたものを見て、私は聞くともなしに呟いた。

「四つ葉…」

彼女はそれを胸の前に、両手で大事そうに持って微笑む。

「いいことあるかなぁ」

彼女の問いに答えずに、私はセイタカアワダチソウを抜く。草抜きを続けた私の手はアクで黄色くなっていて、それがいやでも目に入る。

私の反応が悔しかったのか、彼女はもう一度それを私に見せた。

「ほら、キレイでしょう?」

自分の手元の草から、ゆっくりと彼女に視線を移す。

右手を私の方にぴんっと伸ばして、首をかしげて見せる彼女はとても愛らしい。

無垢な表情の彼女に不快感を抱く私に、嫌気が差した。別に彼女をキライな訳ではない。ただ、自分とあまりに違うから気に食わないというだけ。自分が、夢見がちでいられる側の中学生でないことぐらい、私はもう知ってしまっていた。


私はふと彼女の足元を見た。そこには踏まれてこうべを垂れている、大多数の三つ葉の群生地が広がっている。


私は少しだけ、含みを持たせて言ってみた。

「君らしくて、似合っている」

「ありがとうー」

えへへと間延びした声で笑う彼女には、案の定通じていなかったのだった。

リメイク版【完】





<原文ver>


クラスが変わって1ヶ月ばかりした頃、私はまた今日もため息をついている。教室につくと、私を見つけた彼女が満面の笑みであいさつしてきた。彼女こそが、私の悩みの種だった。悩み、と言っても彼女が悪いわけではない。

「あっ!!」

不意に彼女が声をあげた。たっと駆けて、草むらに手を伸ばす。そして右の手のひらに何かを乗せてまた私のところへ戻ってきた。女の子らしい小さな手の上に、行儀よく置かれたものを見て、私は彼女にきく。

「四つ葉?」

彼女は、それを胸の前に、両手で大事そうに持って微笑んだ。


「うん。昔から私、こういうことがよくあるんだ。」

続けられた「いい事あるかな」という彼女の問いに答えずにいると、彼女は「ほら、」ともう一度それを私に見せた。

「キレイでしょう?」

右手を私の方にぴんっとのばして、首をかしげてみせる彼女はとても愛らしい。しかし私はあっと声をあげそうになった口をあわててとじた。

そのかわいい彼女の足元には、踏まれてこうべをたれている三つ葉の群落がひろがっている。

少しだけ嫌味を込めて言ってみた。

「…あなたらしいね。」

「ありがとー」

えへへ、と間のびした声で彼女は笑った。

案の定、彼女には伝じていなかった。

原文【完】




<一言>
昔の創作物をつっこみたい衝動を抑えつつ投下。

誤字脱字句読点、突然の場面転換。色々やらかしてくれています。ルーズリーフに突発的に書いた代物。おそらく学校で、でしょう。書いた記憶が全然ないのに、何を書きたかったか覚えているのが不思議です。昔から何度も同じようなものに焦点を当てて書いているんだな、書きたいものの根底はまだ変わっていないんだな、と再確認しました。幼い天然系の女の子と、しっかりしているかわりに劣等感や羨望でひねくれてしまう女の子。正反対な子は書いていて楽しいです。
中学生って、こういう大人とも子供ともつかない不安定さを書きやすいんですよね。「自分以外の何者かでありたい願望」「無い物ねだりを認め、現状に納得していく過程」っていう私の書きたい主題の、一番初めの段階。隣の芝は青い。それを知ってしまうことが始まりな気がします。
子供っぽいあの子も、悩んでいるし、羨望している。ただ、それに主人公が気付けないだけで。

それともう一つ面白かったのは、私が二次創作でごく最近(といっても1月だが)書いた白詰草という象徴も出てきていたこと。私、変わっていない(笑)笑ってしまいました。

リメイク作ったのはノリです。今私がこの主題で書くなら、こうするだろうと思って書きました。こういう普段やらない作業が、何気に楽しかったのでした。


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