私が好きな犬飼雅彦くんは、転校生の桃園くんにゾッコンだ。
幼稚舎から同じクラスの私より、犬飼くんは桃園くんのことが頭を占めていた。
一介のクラスメートである私のことなんて微塵も考えていないと思っていたけれど、まさか転校生──しかも四月に転校してきたばかりの桃園くんに負けるだなんて。
今まで約十年間の私の努力は何なの?

「遥、アンタ今凄い表情になってるわよ」
「ほっといてよ。生まれつきなんだから」
「えらくブルーね……。あ、犬飼くん」
「え、何処にいるの!?」
「なーんてね。やっぱり犬飼くんか」
「……からかわないでよ」
「あたしは犬飼くん嫌いだわ。だって遥をこんなに苦しめるんだもの」
「ありがとう。その気持ちだけで十分だから」

私は良い友人を持ったと思う。
でも、私の悩みは犬飼くんにしか解決出来ない。

「犬飼くんのバーカ」
「ボクが何ですか?」

背後から犬飼くんの声が……犬飼くん!?

「い、いつからそこに?」
「先程からです。梶原さん、ボクに何か用事でも?」
「…何でもないよ」
「そうですか。ではボクは先生に呼ばれているので失礼します」

犬飼くんはノートを一冊手に持って教室から出て行った。
あー……また話す機会を逃した気がする。

「遥、犬飼くんは諦めたら?」
「無理。だって好きだから」
「それは解るけど」
「私は、桃園くんが大好きなところも含めて犬飼くんが好きだから」

今思えば、犬飼くんは幼稚舎の頃から桃園くん一筋だった。
桃園くんが来た時、高猿寺くんや雉乃木さんと「わが君が来たー!!」って喜んでいたし。
……私は、桃園くんには勝てない。
だけど、諦めはしない。

「遥、帰ろう?」
「うん」

愛譚学園で恒例となっている、鬼のパンツ改め鬼のスーツを聞きながら、私は友人と帰った。
勿論、犬飼くんの声だけを拾って──。




勝てない恋
(だけど私は諦めない)




*fin*




初めて雅彦夢書いたんですが、雅彦の出番がなさすぎて笑っちゃいます(←)もう少し長く書きたかったなぁ…。それにしても、何故雅彦夢だと祐喜が悪者扱いになってしまうのだろうか…。いや、全然悪くないんですけどね!

2009.08.31 掲載
2010.04.06 修正

top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -