※全国大会後。他県からの転校生設定




「謙也ぁ、暑いよ」
「知るかボケ」
「うわっ、女の子に向かってボケとはなんですか」
「う、煩い!」
「いやいや、謙也の方が煩いから」

夫婦漫才をしている謙也と遥を遠目からちゃっかり見ている白石と小春は、こっそり溜め息を吐いた。
謙也と遥は全国大会が始まる前から両想いであるにもかかわらず、何故か全国大会が終わった今でも相変わらず同級生の関係のままだ。
そんな二人が焦れったくて、白石と小春は二人をくっつけるために色々と作戦(夕焼けが綺麗に見える教室で二人っきりにしたり、謙也の机の中に『早よ告白しぃや!』と入れてみたり)をしてきたのだが……

「蔵リン。謙也くん、なかなか告らないわねぇ」
「謙也のヘタレっぷりもここまでくると、ただのアホとしか言いようがないわ」
「小春ぅぅぅぅ! 浮気か!? 死なすど!」

二人がこそこそと話していると、遠くからユウジの声がする。
小春はあの二人を見ていたい気持ちがあったが、このままでは二人の邪魔になり兼ねないので、ユウジの許に行くことにした。

「……蔵リン。悪いけど迎えが来ちゃったからあとはよろしくね」
「ああ。任しとき」

ユウジに連れられ去っていく小春を見送りながら、白石は教室に二人っきりの焦れったい二人を見た。
二人は相変わらず夫婦漫才を繰り広げているが、よく見ると、遥の様子がおかしい。
白石は思わず端正な眉を顰めた。

「ねぇ謙也」
「何や」
「実はあたしね……地元に帰ることになったんだ」
「な、何やて!?」

遥の突然のカミングアウトに、謙也だけでなく白石も動揺する。
今までそんな話は聞いたことがない。
このままでは二人は何も言わないまま離れ離れになってしまう。
白石は柄にもなく冷や汗を流した。

「転校してきた時、なかなか馴染めなかったあたしに、謙也は一番最初に話しかけてきてくれたよね。あたし凄く嬉しかったんだ」

遥は謙也に微笑する。
謙也は口をポカンと開けたまま黙って話を聞いているだけだ。
白石はあることに気付き、焦った。

(あかん! 謙也より先に遥が告ってまうで!!)

「謙也、あたしは」
「遥。ちょい待っとき」
「へ? 謙也っ」

何故か浪速のスピードスターは全速力で白石の許に来た。

「なんや謙也。俺がおるの気付いとったんか」
「白石! 頼むっ。俺に力をくれ!!」
「……アホか。自分で逝ってこいや」
「え、漢字が違うで!?」
「って冗談抜きで、自分の力だけで告らな意味ないで」
「……解ってる。解ってるけど」
「せやからお前はヘタレって言われるんや。ほら、遥が待っとるで」

白石は謙也の背中をポンッと押した。
謙也が教室に戻ると、遥は呟くように謙也の名前を呼んだ。

「……謙也」

遥は夕焼けをバックに謙也を待っていた。
その姿は、謙也に力を与えるのに十分過ぎるほど綺麗だった。
一度大きく深呼吸をしてから、謙也ははっきりと言った。


「遥、俺はお前が好きや。めっちゃ好きやねん。せやから」
「謙也!!」

謙也が言い終わる前に、遥が抱き付いてきた。
謙也は慌てて態勢を保つ。

「あたし、やっぱり四天宝寺に残る!」
「え、残る?」
「だって、ずっと謙也といたいもん」
「(いたいもんって……可愛ぇなぁ)」

謙也は遥をギュッと抱きしめた。
そして遥の耳元でそっと囁いた。

「一生放さへんからな、遥」




その様子をじっと見つめる白石は、ホッと一息吐いた。

「やっとくっついたか……」
「部長、何してますの?」
「!? 財前か……別に何もしてないで」
「そーッスか。……あの二人、やっとくっついたみたいですね」
「お、財前も気付いとったか」
「気付いとったっちゆーか、遥先輩に相談されてたんで」
「何やて? 何でクラスメートの俺に相談せんのや」
「さぁ? 頼りないんとちゃいます?」

財前は爆弾発言を投下してその場を去った。
白石はしばらく石化していたが、やがて財前を全速力で追いかけた。




焦れったい二人
(二人をくっつけたのは部長でした)




*fin*




庭球で謙也夢でした。謙也といったらヘタレ! ということで出来た話です(笑)でも何故か白石までヘタレと化してます。何故なんだ……? そして謙也夢なのに白石の方がメインになってる気がします。おかしいな……(←)関西弁、そして彼らの口調がおかしいのは、いつものことなので気にしないでください!(直せ)お気付きの方もいらっしゃると思いますが、この小説は以前オリジサイトの方で掲載していたものです。それを加筆修正してこちらに再掲載しました。

2010.10.31 掲載

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