あたしが白蘭さまに拾われてから三日がたった。
ミルフィオーレは不思議なことだらけで、あたしは監視付きではあるものの自由にアジト内を散策していた(果たして監視付きで“自由”と言えるかは謎だけど)

正ちゃんの所を訪れて正ちゃんを散々弄った後、あたしはふらふら歩く。
アジト内は広くて、いつも新しい発見だらけで楽しい。
今日は一体どんな発見があるのかなー?
……ん?
何だろう、今、廊下の壁に違和感を感じたけど……。
ゆっくり右手を壁に近付ける。

「触ってはいけません」

あと少しで壁に届くところで監視員に止められた。
どうやら触ってはいけないらしい。
でも、ダメって言われたら逆に触りたくなるよね!
監視員の制止を無視して、あたしは真っ白な壁に触った。
刹那、ガタンって何かが動く音がして、あたしは壁の向こうへと引きずり込まれる。

「遥様ッ!」

遠くからあたしを呼ぶ声が聞こえたけれど、あたしがそれに応えることが出来ないまま無惨にも壁は元に戻った。
……まさか壁が動くとは。
一体何年前の武家屋敷だろうか。
さすがミルフィオーレのアジトだ。

さて、これからどうしよう。
辺りを見渡しても真っ暗で何も見えないし。
さっきの壁とは全く正反対の色だ。
多分、確証は無いけど呼べば白蘭さまが迎えに来てくれる気がする。
……でも白蘭さまは面白いことが大好きだから来ないかも。
ああ、白蘭さまがニヤリと笑う姿が目に浮かぶ。
とりあえず何か行動を起こさないと何も始まらない。
まずは歩こう。

「そこにいるのは誰です?」
「え?」

声と同時に光が現れる。
うわ、急に明るくなったから眩しい。
目が開けられないよ……!!

「ハハンッ、貴女でしたか」

漸く光に慣れて目を開けると、そこにはロン毛のイケメンなお兄さんがいました。
お兄さんはあたしのことを知っているようだけど、あたしは全然知らない。
誰ですか?

「初めまして、ですね。桔梗といいます。白蘭様の忠実なる部下の一人です」
「白蘭さまの……そうですか」

そうだよ、一応ミルフィオーレのアジト内だし、敵じゃないよね。
なんだか安心して、あたしはへらっと笑った。
緊張が解けたよ……。

「ハハンッ。白蘭様が構う訳が解りました」
「?」
「一体何故此処に?」
「廊下の壁を触っただけなんですが」
「おや、もしや扉が見えましたか?」
「え、あれって扉だったんですか。絡繰りだと思ってました」
「一応トリカブトに隠してもらっていたんですけどね……貴女、何者ですか?」
「あたしは白蘭さまに拾われた唯の人です。あ、白蘭さまにとっては唯の玩具かもしれないけれど」

自分で言ってて悲しいけど、それが現実だ。
どうして白蘭さまがあたしを拾ったのか、今でも不思議に思っている。
白蘭さまに一度理由を訊いたら、そんなのキミが気にすることじゃないよって一蹴された。
白蘭さまはいつも本当のことを言ってくれない。

「桔梗さんはあたしのこと、白蘭さまから聞いてるんですか?」
「聞いてますよ。貴女はいつもふらふらしていて多分その内会うからその時は丁重に、と言われました」
「……白蘭さま、あたしのことを何だと思ってるんですか」

確かにいつもふらふらしてるけど、なんかまるで犬とか猫扱いだ!

「ハハンッ。貴女は本当に面白い人です。大丈夫ですよ。白蘭様は貴女を大事に思ってますから」
「……根拠無いです」
「根拠が欲しいならば白蘭様の元へお行きなさい」
「行っても教えてくれませんよ」
「大丈夫です。さぁ、お行きなさい」

桔梗さんがあたしに手を伸ばす。
その瞬間意識が遠のいてきた。
あれ、なんか視界が暗く……デジャヴ!!




******





「遥チャン、お帰り」
「…………びゃく、らんサマ」

遠くから、あたしの名前を呼ぶ白蘭さまの声が聞こえる。
これは幻聴?
それとも──

「狸寝入りは良くないな〜」
「……狸寝入りしているつもりはないんですが」
「やっと起きたね♪」

意識が漸くはっきりして瞼を持ち上げると、目の前に白蘭さまの綺麗な顔があった。
今更そんなことには驚かない。
だって白蘭さまはいつも唐突だから。
でも、もしかしてこの体勢って……

「ボクの膝枕はどうだい?」
「……本当に白蘭さまって不思議な方です」
「それは誉め言葉として受け取っておくよ♪」
「そうしてください」

白蘭さまの怪しい笑みに、何故だか恥ずかしくなった。
思わず白蘭さまの首に両腕を回す。
自分の顔が白蘭さまに見えないように、ぎゅっと抱き付いた。
白蘭さまは相変わらず笑っている。
うぅ、余裕って感じだなぁ。

「遥チャンはボクから逃れられないね♪」
「……否定出来ないのが悔しいです」
「キミを拾ったその時から、遥チャンはボクのだもん」
「ふふふ、白蘭様には勝てません」




根拠が欲しい
(あたしは貴方に愛されてますか?)




「そういえば、桔梗さんに会いましたよ」
「ああ、それは夢だよ♪」
「……へ? ど、どこから!?」
「最初から♪」
「はいぃぃぃ!?」
「(嘘だけどね〜。可愛いから黙ってよ♪)」




補足説明ですが、ヒロインの設定は白蘭の恋人(自覚なし)です(笑)ボンゴレとの闘争で家族を亡くしたヒロインを白蘭が拾ったっていう……よく分からん設定。白蘭なら欲しいと思ったものは何でも拾いそう(←)ヒロインは白蘭に愛されてます。

2010.08.17 掲載


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