※有利の双子の妹設定
ある日、有利がずぶ濡れになって帰ってきた。
空は快晴だったのに、全く意味が解らない。
とりあえず有利をお風呂に直行させた。
有利がお風呂に入っている間に有利と一緒に出掛けていた村田くんに理由を訊いたら、「ごめんねー。渋谷のやつ、イルカプールに落ちちゃってさ〜」ってのんびりした口調で言われた。
どうやったらイルカプールに落ちるんだ、マイブラザーよ。
しかも朝着ていた服はどうした。
……最近、有利は変だ。
勝利お兄ちゃんと同じぐらい、変人。
多分、そう言ったら真っ向から否定されるけど。
わたしだって勝利お兄ちゃんと同等に扱われたら嫌だ。
「遥ー、風呂上がった」
「ん。さて、何故濡れたか話してもらおうかな」
「……話さなきゃダメ?」
「勿論。わたしに隠し事など百年早いよ、有利」
「……ハイ」
それから色々有利から話を聞いた。
内容は全く意味が解らなかった。
でも、時々懐かしい感じがした。
眞魔国、血盟城、ギュンター、ツェリ様、グウェンダル、ヴォルフラム、コンラッド──。
どれもみんな、懐かしい。
何でだろう?
こんな不思議な感じは初めてだ。
……本当に?
「遥?」
「有利、わたしは有利の双子の妹だからかな? 有利の話が凄く懐かしい感じがするんだ」
「懐かしい感じ?」
「そう。ずっと前に、その人たちと逢った感じ……なのかな?」
「うーん……おれに訊かれてもなぁ。そういえば、おれの魂は元々眞魔国にあったとは聞いた! でも、おれと遥は魂が一緒なワケじゃないし……」
有利は腕を組んで考え始めた。
こういうの苦手なのにごめんね、有利。
でも有利の答えが聞きたいの。
「……ダメだ。頭が悪いおれじゃ分かんねー!」
有利は真っ黒な頭をガシガシとかき混ぜた。
本当に綺麗な漆黒の髪だなぁ。
「有利、ごめん」
「いや、寧ろおれが悪いし」
俯くわたしに、有利がわたしの頭を撫でようと右手を伸ばす。
でも、それは叶わなかった。
「え……」
「!? 遥!!」
最後に見た有利の顔は、今にも泣きそうだった。
******
気が付けば、わたしは別世界にいた。
有利が話していた別世界。
そこに今、わたしはいる。
あれから何日経ったのか、あまり分からない。
地球ではあまり時間は経っていないのだろう。
いつか、有利に逢える日が来ると思っていた。
やっと逢えると思っていたのに、こんな形では逢いたくなかった。
──有利の敵として。
「遥様、お時間です」
「……今行きます」
わたしの大切な片割れ。
最後に泣きそうだったあの顔を、今でも鮮明に思い出せる。
またあの顔をさせてしまうバカな妹を、許してね──
あの表情をもう一度
(兄不孝でごめんなさい)
そして兄妹は邂逅する。
お互い相容れぬ存在として──
*fin*
あれ、有利誕生日記念として書くつもりだったのに、何でこんなに暗いのだろうか?(←)とりあえず補足説明をしますと、ヒロインは有利の双子でありながら、実は人間サイドのお偉いさんの魂を引き継いでいたのです。……え、シマロン? サラレギー? 私、そんな人知りません(←
2010 07.31 掲載