※隣人設定




私には、好きな人がいる。
その人は隣に住む人で、探偵事務所の助手をしている。
いつも探偵さんの隣にいて、探偵さんに向けた凄く柔かな笑みに、私は惚れてしまった。
でも、その人には好きな人がいるみたいで、私には入り込む隙間なんか無いと思う。
だって、彼女といる時は凄く嬉しそうな表情だもの。
私といる時とは違う、照れたような表情。
私も、彼にあんな表情をさせることが出来たらいいのに。

「遥さん、これ、くれんの!?」
「はい。トーヤ君は甘いものは好き?」
「大好き! やったー、ありがと!!」
「どういたしまして」

バレンタインデー、それは好きな人にチョコレートを渡す日。
そう聞いたのは、つい最近だった。
だから急いで作って、お隣さんである探偵事務所の面々にあげることにした。
彼だけにあげるのは変に思われるから、探偵さんやもう一人の助手であるトーヤ君にもあげることにした。
トーヤ君はお菓子が大好きだから、きっと喜んでくれると思った。
探偵さんは礼儀正しいから、きっと凄くお礼を言ってくるんだろう。
……あの人は、どうだろうか?

「遥さん、わざわざありがとうございます。大変だったでしょう?」
「いいえ。全然苦になりませんでした。皆さんの喜ぶ顔が見れてよかったです」

探偵さんが律儀にお礼を言ってくれた時、彼はポカンとしていた。

「あの、アトウッドさん……?」
「あ、あぁすみません。このようなものを貰うのは初めてだったので」

アトウッドさんは照れたように笑った。
あぁこの感じ、私は好きだ。

「アトウッドさんなら貰い慣れていると思いました」
「そ、そうですか? 普段エドワード様が貰うのは多く見てきましたが、わたし自身はあまり……」
「では、今年はどうなんですか? 家主さんや他の住人の方からは?」
「貰っていませんよ。遥さんが初めてです」

その一言で、私は喜んでしまった。
不謹慎かもしれないけれど、私のチョコレートが最初で良かった。
凄く嬉しい。
思わず微笑してしまうと、探偵さんがこっそり耳打ちしてきた。

「良かったですね。シーヴァも喜んでるし、満更でもないようですよ」

いつ私の気持ちがバレたのだろうか?
でも探偵なんだし、これぐらい解って当たり前なのかもしれない。
今年は、アトウッドさんに一番にあげることが出来てよかった。




I am the first.
(まずは一歩進めました)




*fin*




今年のVD小説でした。現在フリーではないのであしからず。しかし、私は一体何が書きたかったんだ……。

2010.06.24 掲載

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