※高校生設定




「雲雀さ〜ん、いますか?」

遥はとあるマンションの一室の扉を開き、そう呼び掛けた。
理由は唯一つ。
この部屋の主に逢うため。

「遥。僕の部屋に入るときは何をするんだったかな」
「……ノック?」
「疑問系なのが気になるけど、遥だから許してあげるよ」

部屋の主、雲雀恭弥はソファーから立ち上がると、遥の手を引いて部屋に招き入れ、もう一度ソファーに座った。
されるがままになっていた遥は、一つの疑問を雲雀に訊ねる。

「雲雀さん、どうして雲雀さんの膝の上に座らなきゃいけないんですか」

遥は、雲雀の膝の上に座らされていた。
彼女の質問に、雲雀はさらりと答える。

「ノックをしなかった罰だよ」
「これって罰なんですか?」

雲雀の方に向き直し、首を傾げる遥を見て、雲雀は自分の胸が高鳴るのを感じた。

──これだから、彼女といて飽きない。

「雲雀さ〜ん、どうしました?」
「遥。いい加減名前で呼んでほしいんだけど」
「急に話題を変えますね……」
「あとはその敬語も止めさせないとね」
「別に敬語でもいいじゃないですか」

遥は頬を膨らませ、雲雀から顔を逸らした。
雲雀は両手で遥の顔を戻し、彼女に言い聞かせる。

「遥は今何歳だっけ」
「十七です」
「じゃあ僕は何歳だっけ」
「……十七です」

自分の年齢も判らないのかと言うつもりでいたら雲雀に睨まれたので、遥は素直に答えた。

「僕らは同い年だね。じゃあ遥の敬語はおかしいんじゃないかな?」
「私の口調は変わりませんから」

雲雀の膝から立とうとする遥を、雲雀は遥の腰を掴んで引き止め、膝の上にもう一度座らせる。

「百歩譲って敬語は許してあげるよ。でも」

遥の耳元で、雲雀は囁いた。


「ほら、恭弥って呼んでみせてよ」


「ッ!! ……ひ、雲雀さんはズルいです」
「僕のどこがズルいの?」

遥は林檎のように顔を真っ赤にさせ、雲雀を下から睨む。
しかし、それは雲雀には逆効果だった。

「遥、そんなに可愛い顔をしたって今度は譲らないよ」
「……解りました。じゃあ恭弥さんで」
「恭弥」
「恭弥さん」
「恭弥」
「恭弥さん」

言い合っている間に、やがて遥は笑い始めた。
一方、雲雀は気に喰わないようだったが。




十分に笑った遥は、今度こそ雲雀の膝の上から立ち上がり、雲雀に向かって微笑した。

「それじゃあまた遊びに来ますね」
「第一、遥は何しに来たの」

雲雀の問いに、遥はまた微笑する。
雲雀が疑問に思っていると、遥は部屋の扉を開けて、雲雀に手を振った。


「恭弥に逢いたかっただけです」


そう言い残し、遥は部屋を後にした。
残された雲雀は……

「なんだ。ちゃんと言えるじゃん」

クスリと微笑していた──。




僕の名前を呼んで
(キミの声で聴きたいから)




*fin*




復活で雲雀夢でした。ただ雲雀さんにヒロインを膝抱っこさせたいが為に出来た小説(←)動機が不純すぎる……(汗)お気付きの方もいらっしゃると思いますが、この小説は以前オリジサイトの方で掲載していたものです。それを加筆修正してこちらに再掲載しました。

2010.03.24 掲載
2010.04.06 修正

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