「エドワード様、こんな物が扉の前にありました」
エドワードの誕生日当日、下宿屋の皆で誕生日パーティーを楽しんでいる中、買い出しに行っていたシーヴァが小包を持って帰宅した。
小包を受け取ったエドワードは、包装を解く。
中から現れたのは、翡翠のペンダントと一通の手紙だった。
「これは……懐かしいな」
「エドワード、これに思い出でもあるのか?」
トーヤの問いに、エドワードは肯定した。
「僕がまだバルフォア校に通っていた頃だった。シーヴァが所用で僕の傍にいなかった時に、たまたま庭園を散歩してたんだ」
途中立ち止まり、風によって聞こえる木々のざわめきに耳をすましていると、明らかに人工的なガサガサという音が聞こえた。
次の瞬間、目の前に黒い影──いや、少女が現れた。
男子校であるため、少女がいることは有り得ないはずだ。
エドワードは驚きでブルーの瞳を真ん丸にした。
「あれ、ここは……?」
少女の声で現実に引き戻され、エドワードは冷静に答えた。
「ここはバルフォア校。男子校だよ」
「男子校…!? ご、ごめんなさい! すぐ出て行くから捕まえないでっ」
「大丈夫、捕まえないよ。迷っているなら案内しようか?」
「滅相もございません! 貴方みたいな綺麗な瞳の方と歩いていたら、逆に目立っちゃうし……」
「綺麗な瞳、ね……。キミも綺麗な瞳をしているよ。まるでこの翡翠みたいだ」
エドワードは手元に持っていた翡翠のペンダントを少女に見せた。
少女は興味深くペンダントを見つめる。
「どうしてペンダントを持っているの? これって婦人用よね」
「先輩が冗談半分で贈ってくれたんだ。今日は僕の誕生日だからね」
「誕生日! おめでとう!! あ、私何もプレゼント出来ないけど……」
「出逢ってすぐの人、ましてやレディにそんな事は求めないよ。……そうだ。名前は教えてくれるかい?」
「遥よ。貴方は?」
「僕はエドワード。今日出逢ったのも何かの縁だ。先輩には悪いけれど、これをあげるよ」
ペンダントを遥の前に差し出すと、彼女は翡翠色の瞳を大きくした。
「今日はエドワードの誕生日なんだから、私が貰ってもダメじゃない?」
「しかし、僕はこれをどうするか悩んでいるんだ。ここは男子校だから持っていると凄く目立つんだよ」
エドワードは少し思案して、遥に提案した。
「じゃあ五年後の今日、もう一度遥がプレゼントしてくれるかい? 五年後なら僕も学校を卒業しているし、遥も気軽に受け取れるだろう?」
「五年後、エドワードはどこにいるの? 実家?」
「一応実家を出るつもりだ。でも、実家に問い合わせてくれたら分かるだろう。僕も実家にそう伝えておくから」
「分かった。じゃあ五年後の今日、エドワードに届けるね」
遥はペンダントを受け取り、ニコッと笑った。
その笑顔を見て、エドワードも笑ったのだった──。
「ということがあったんだ」
「なんか、色々とぶっ飛んだ話だな! 本当にプレゼントしてくれたんだ」
「彼女は律儀な人だったからね。あの後も結局、一人で帰ってしまった」
エドワードはペンダントに同封されていた手紙を開く。
そこには彼女の手書きで色々書かれていたが、最後の文を見て、エドワードは微笑した。
「エドワード様、如何なされましたか?」
守り役の問いに、エドワードは朗らかな表情で答えた。
「シーヴァ、この小包は誰が届けたんだろうか」
「!? まさか……」
「ちょっと迎えに行ってくるよ。すぐ戻るから」
エドワードは扉を開けた。
そこには、壁を背もたれに座る遥の姿があった。
「やっぱりいた。中に入らないのかい?」
「……私は部外者だし、入りづらいです」
「何を言っているんだ! 遥は大切な僕のお客様だ。入っておいで」
遥に右手を差し出し、エドワードは笑った。
「遥の手紙の最後の一文、僕は承諾した。皆に紹介したいから、来てくれるかい?」
「うぅ……恥ずかしい」
「僕と一緒に入ろう。二人なら大丈夫だ」
遥はチラリとエドワードを見て、彼の右手に自分の左手を重ねた。
「エスコート、よろしくお願いします」
「仰せの通りに、マイレディー」
二人は揃って部屋に入った。
『貴方とずっと一緒にいたいです』
あの時の約束を
(ずっと覚えていてくれたんだね)
Happy birthday to Edward!
2009.06.30
この話は色々矛盾だらけなのですが(文中でトーヤが突っ込んでくれてます)、そこはスルーでお願いします(泣)ここでヒロインの裏設定をば。ヒロインは絶世の美女がいると噂を聞き、バルフォア校にやって来ました。男子校だとは知りません(笑)迷った挙げ句の果てにエドワードと出逢うわけですが、天使さながらの容姿にヒロインは少しショックを受けます。「この人が絶世の美女…!?」まぁ話したら男だったので、間違いにはすぐ気付きましたが(笑)しかし女の自分より美人なエドワードを見て、やっぱりショックです。エドワードって罪な男ですね(笑)彼と話すうちに、ヒロインは徐々に惹かれ始めます。容姿ではなく、彼の頭のキレの良さにです。自分があまり良くないので、惹かれてしまうのですね。五年後ではありますが出逢えることを信じて、彼女は五年を過ごしました。五年後、エドワードに言われたように彼の実家を訪ねた時は彼の家族に囲まれて大変だったらしいです(笑)「エドワードが女性を連れてきた!」とかなんとか。エドワードが連れてきたわけではありませんが(笑)そしてラストに至るわけです。因みにヒロインの年齢はエドワードと同い年で、容姿はそこそこよろしいです。あれ? これって裏設定っていうかアナザーストーリー? むしろ別に話を作った方が良かったですね…(滝汗)色々ありましたが、これにて完結!(←)
2009.06.24 掲載
2010.04.06 修正