※貴女は普通の人間の設定ではありません。恋愛要素≒皆無。3期があると聞いて何の情報も聞かずに南條が勝手に妄想して出来上がった作品です。当たり前ですが実際には全く関係ないので悪しからず




ルルーシュはふわふわと浮かんでいた。
実際にはどうなのか解らない。
視界は全て漆黒の闇で見えないのだ。
しかし、浮遊感だけは感じられていた。
これ以上視覚が戻らなければ、もう光を見ることは出来なくなるかもしれない。
と、そこまで考えてルルーシュは自分を嘲笑った。
もう、光など見えなくてもいいじゃないか。
自分は――死んだのだから。

やがて、ぼんやりと光が見えてきた。
もしかすると、あれが“あの世”というやつなのだろうか。
やがて見えてきたのは、一人の女だった。
何処かしら雰囲気が柔らかくて、遺してきた最愛の妹に似ていた。
だからだろうか、いつもは警戒心を持つルルーシュが、彼女には全く持つことなく会話を始めていた。
話す中で解ったことは、彼女の名前が遥であるということだけだった。
しかし、遥はルルーシュのことを多く知っていた。
彼の生い立ちも、彼の家族のことも、彼の知人のことも、彼が行ってきたことも知っていた。
ルルーシュはそれが少し気に食わなかった。

ある日(とは言っても時間の感覚など全くないのだが)、遥が突然こう言ってきた。

「ルルは本当にナナリーが好きだね」
「好きだけど、それは悪いことか?」

多分、自分がナナリーのことばかり話すからだろう。
とにかく遺してきてしまった妹が心配で心配で仕方ないのだ。
話していないと、自分が壊れそうだった。
だからルルーシュは悪いと思うことなく、そう答えた。
ルルーシュの答えに、遥は笑った。

「全然悪くないよ、うん。ナナリーを好きでいてくれてありがとう」
「は? どうして遥が礼を言うんだ?」

兄である自分ならともかく、何故全く関係ないはずの遥に礼を言われなければならないのだろうか。
この時、ルルーシュは不思議で不思議で仕方がなかった。

「ナナリーの幸せは私の幸せ。だから、ありがとう」
「意味は解らないが、礼を言われて嫌だと思う奴はいないからな。素直に受け取っておくよ」

遥と話し始めて、漸く解ってきたことが二つある。

「でも」
「でも?」
「貴方は最期の時を間違えた」
「…………」
「しかも、よりにもよってナナリーの目の前で最期を迎えた。それは許しがたいこと」

そのうちの一つは、遥は異様に、兄であるルルーシュよりもナナリーのことを気にかける。
それは時に執拗なぐらい心配している。
シスコンと言われていた(不本意だが)自分よりもなのだ。

「遥に許されなくても、俺はあの時最期を選ぶしかなかったんだ。たとえ、ナナリーの目の前であっても」
「ナナリーは……ルルが愛したナナリーは、貴方が生きて隣にいることを望んでいた。それを貴方は……ナナリーを最悪な形で裏切った」

そしてもう一つ解ってきたこと。
それは――

「ナナリーを裏切ったお前に安らぎなどない」
「おい、口調が機械的になってるぞ」
「お前はナナリーを――」
「遥!!」
「!?」

ナナリーの話になると、時折こうやって誰かが乗り移ったように機械的な口調になることである。
こうなったときは大抵大声で彼女の名前を呼ぶと意識を取り戻す。
最近では頻度が多くなっていた。

「……ごめんなさい。また“私”を見失いそうになった。ありがとう」
「それは別に構わないが、俺に何か話があるんじゃないか?」
「そうだった。ナナリーのことを考えていたら、話がズレてしまったの。本当に話したかったのは……」

遥はそう言うなり両手で水を掬う形を作る。
するとそこに、はっきりとは輪郭を持たない丸い何かがぼんやりと浮かんだ。
ルルーシュは今まで見たことのないそれを思わず凝視する。

「これは?」
「貴方の魂」
「!? どういうことだっ」
「私の一存で、ここに留めておいたの。ここはまだあの世じゃないよ」

遥の言葉に、ルルーシュは頭が混乱した。
この世界はどうやら“あの世”ではないらしい。

「……俺は、遥が現れた時点でここがあの世だと思っていた」
「貴方には、私が何に見える?」
「死神」
「あっさりと酷いこと言うんだね」
「違うのか?」

ルルーシュの問いに、遥は考える仕草をする。

「……違うよ。私は別に魂を狩ることはしてない。私の存在意義はルルとナナリーだから」

遥の答えは、ルルーシュを混乱させた。
とりあえず、遥が死神ではないことは解った。
では、何のために彼女はここにいるのだろうか?

「意味が解らない」
「私の仕事は、ルルの魂をナナリーの許へ戻すこと。それだけよ」
「そんなことが出来るのか!?」
「一度だけね」

ルルーシュは死ぬ前の状況を思い出す。
自分はあの時、世界を混乱させた悪としてスザクが扮するゼロによって殺された。
今、自分が戻ることは――

「……だが、俺が戻っても混乱が起きるだけだ。だから」
「駄目よ。ナナリーにはルルが必要なの。ルルが嫌がっても、私が無理矢理戻すから」

刹那、ルルーシュは自分の足の感覚が無いことに気付いた。
ぼんやりと見える目で足元を見ると、自分の足は透けて無くなってきていた。
ルルーシュは驚き、遥を見る。
そして自分の疑問をぶつけた。

「何故そこまでしてナナリーに拘る?」
「…………」
「最後に教えてくれ!」

下半身は全て消えた。

「……私は、ナナリーと一緒に産まれるはずだったの。だけど、私は生を受けずにこの役目になった。それが運命だったから。絶対、ルルがナナリーを遺してここに来る運命だったんだよ」
「……俺の妹?」

胸の下まで消えた。

「ルル……ルルーシュ、今度はナナリーを悲しませないでね」
「ッ!? ま、待て! 俺が戻ったら遥はどうなる?」
「……え?」

左腕が消えた。

「お前は俺がいないと自分を見失いそうになって、消えるんじゃないのか?」
「……ルルを戻せたら、私の役目はお終い。だから、別に消えてもいいの」
「そんなの駄目だ! 俺が許さないっ。俺は無理矢理戻すのに、自分は消えるのか!?」

後は頭と右腕しか残っていない。

「だって、やっとこの暗闇から抜け出せるんだよ? ルルが来てくれなきゃ光なんて無かった! ルルが消えたらまた暗闇の中にいなくちゃいけないっ」
「遥……」
「だからこのまま消えさせて……。ルル、今まで私に光をくれてありがとう。そして……サヨナラ」


右腕が消え、残すは頭のみとなったときに見えたのは、涙を流す遥の微笑みだった――。




気が付けば、ルルーシュは生きていた。
一度死んだはずの自分が、地上に立って呼吸をしていた。
生き返った自分は、自然の摂理から逸脱した存在だと思う。
しかし、彼女は自分を生き返らせてしまった。
そして、彼女は消えた――。

「……ッ」

背中から倒れこみ、緑が広がる草原に自分を預ける。
少し痛みを感じて、ルルーシュは自分の顔を右手で覆った。
どうやら痛みを感じるぐらい、自分は生きているらしい。
生きているという感覚に、思わず吐きそうになる。
だが、吐き出せるものは身体に無いらしく、ただ咽るだけだった。

これから、自分は何をすればいい?
彼女が言うようにナナリーの傍にいればいい?
しかし、今更どんな顔をしてナナリーに逢えばいい?
ナナリーからしたら自分は亡霊じゃないか?

疑問がルルーシュの頭の中をぐるぐる廻り回る。
ルルーシュは、ただただ苦笑した。

「おにーさん、どうしたの?」
「!?」

急に頭上から声がした。
若い女の声に、ルルーシュは聞き覚えがあった。
そう、つい先程まで間近で聞いていたあの声――

「もしかして、具合悪いの? ウチに来る?」
「……遥」
「どうしてあたしの名前知ってるの? おにーさん、誰?」

右手を外し、少女の顔を見る。
そこには、彼女と同じ顔をした少女がいた――。


神は俺を見捨てていなかった。
いや、生き返った時点で見捨てていなかったのかもしれないが、俺は相当、神に愛されているに違いない。
彼女と巡り会わせてくれて感謝するよ。
たとえ、彼女に俺の記憶が無くても――。

「俺の名前はルル。初めまして、遥」
「あ、初めましてルル!」

手始めに、彼女と共に生きよう。
まずはここが何処で、そしてあれから何年の時が経っているのかを知ろう。
ナナリーに逢うのはそれからだ。

俺は、この命で次の世界を見ていく――




次の世界へ
(今回俺は傍観者になる)




*fin*


ギアスの3期が決定したと聞き、妄想に妄想を膨らませ出来上がった作品。ヒロインの設定としては、ナナリーの双子の姉です。双子ですが、顔は似てません。二卵性双生児です。

2009.12.28 掲載
2010.04.06 修正

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