「いってらっしゃい」
「ろおおおおおのっ、ぶわかああああああ!」
海に向かって叫んでみたけれどそれがローに届いたかどうかなんて言うまでもなくて。届いた筈なんて万が一にもなくて。あたしは溢れる涙を止める術なんて知らなくて。
「ローの、ばか…」
次は呟いてみた。それでもこの現状が変わることなんてなくて。どうして何でが頭の中でぐるぐると回る。廻る。ううん、本当はどうしてかなんて、何でかなんて知ってる。分かりたくないだけで、解りたくないだけで。お前は戦えないから、闘えないから。ローの最後に言った言葉がどうして何での後に続いてぐるぐると。あたしは一緒に行きたかった、生きたかった。一緒に行きたい、生きたい。でもローの船はとっくのとうに出航してしまっていて。今更追い掛けるなんて力はあたしには無くて。今更追い掛けるなんて勇気はあたしには無くて。せめて船出の時くらい教えてほしかった。いってらっしゃいも言えないなんて。
「愛してるから…っ、」
必ず戻ってこいとあたしは叫んだ。涙は拭いた。涙は貴方が帰ってきた時の為にとっておくから。
すうと息を吸って思い切り叫ぶ。
「必ず海賊王になって帰ってこいばかあああああっ!」
待ってるから。
そして息を整えて言う。
「いってらっしゃい」
(帰ってきたら、お帰りなさいって、笑顔で言うよ)
(キャプテンどうしたの?)(今、何か………)(?)(いや、きっと気のせいだ…)