鬼ごっこ


「っはぁ、はぁ……」


リアはもつれる足で一生懸命に走りながら後ろを見た。

彼は余裕であたしと一定の距離を保ちながら着いて来ている。

あたしは右の入り組んだ路地裏に飛び込み、全速力で走った。

そしてまたすぐ左に移動して右に移動してを繰り返した。


「っ………」


心臓の動悸が激しい。

そっと音を立てないようにリアはその木箱の陰に座った。

そして必死に縮こまって出来るだけ見つからないようにする。

しばらく耳をすませてみたが、音は全く聞こえない。

ほっと息をついた瞬間にそう遠くないところからぴちゃ、という足音が聞こえた。

リアはハッと息を止め、必死に祈った。


どうか彼に見つかりませんように。


だがその願いも空しく、リアの隠れていた木箱は男によって壊された。


「………………ぁ…ぅ」


恐怖でかすれた声が出る。


そんな…ありえない。

何で見つかったの…。


そんなことを考えながらリアはまた走った。

逃げられないのはわかってる。

霧を実態として掴むくらいに彼から逃げきることは難しい。


でも、もしかしたら。


一欠けらの希望に縋り付きリアは走った。

もう足はくたくたで、何度も躓き何度も転んだ。

バッと左に曲がると、運の悪い事にそこは行き止まりで、引き返そうと後ろを向いたらそこには彼がいた。

恐怖で呼吸が上手く出来なくなる。


「逃がさねぇ」


舌なめずりをしながら彼はあたしの首に手をかけた。


「まだわからねぇのか、お前がおれのモノだということが」

「…っぁぅ…っく」


息が上手く吸えず、頭がボーっとしてきた。


「逃げたいなら逃げろよ」


逃げ出せるならな、と彼はあたしの耳元で囁いた。


「リア、このまま殺して欲しいか…?」


首を横に振りたいが彼に首を絞められているためそれはかなわない。


死ぬのはイヤ…。


「お前を殺すも生かすも、おれの自由だ…。お前はおれのモノだ」


あたしに言い聞かすよう、彼はお前はおれのモノと繰り返し言った。





狂っている。




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