我が家の猫は甘えん坊


「クロコダイルぅ」

「鬱陶しい」


膝元で甘えた声を出すリアを一蹴し、サラサラと書類にペンを走らせていく。

そんなクロコダイルを不満そうに見ると璃紅はクロコダイルの吸っている葉巻に目を止めた。

そして何を思ったか両手を出してクロコダイルを上目遣いで見た。


コイツがおれに対して上目遣いを遣うときは何かねだるときだ。

無視をするに限る。


「……………」

「ん」


そう言って再度手を差し出すリアに態とらしく溜め息をつき、葉巻を渡してやった。


しかしリアはぶんぶんと首を振り、葉巻を受け取ろうとしない。


意味が分からねェ。


「何だ」

「あたしね、昔見た映画で、葉巻吸ってる人が吸殻を部下の手に押し付けるの見て、いつかクロコダイルにやってもらおーって考えてたんだー」

「お前はMか」

「違うよぉ。ただあの時部下の人が率先して手を出してるのなんかいーなーって」

「ハッ、それはてめぇの仕事じゃねぇさ」

「ぶぅ」


リアは納得がいかないのか渋い顔をしながらも頷いた。


「イイコだ」


そう言って頭を撫でてやれば少しは気が済んだのか顔がへにゃへにゃとしたものに変わった。


しばらくすると膝に重みを感じた。

またかと思ったが放っておいた。

しかしいつまで経っても退く気配がない。

寝ているのかと思って下を見てみるとバッチリと目があった。


「ハァ………」


クロコダイルは一つ溜め息をついてリアを抱き上げた。


「くぁあー」


すぐ下で満足したようなリアの欠伸が聞こえた。


全く。




我が家の猫は甘えん坊
(とんだ拾いモンしちまったな)(何が?)(何でもねェ)

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