計算違い


「リドル様、あのっ!」


またか。

人気の無い廊下で二人きり、そして決まって赤くなる女。

トムはもううんざりしていた。

しかし決して苛ついているのを悟られてはならない。

何故なら今まで作り上げてきた優等生という立場は壊してはならないからだ。


「何だい?」


あくまでにこやかに対応する。


そして女の口から出たのはやはり告白の言葉だった。


「あたし、あなたのことが好きなんです!」

「ああ…、ありがとう。でも僕には他に好きな人がいるから…すまない」


もう何度も繰り返し言ってきた言葉を言った。

これで大抵の女は去る。

しかし極一部は無理な要求をしてきたり好きな人が誰か問い詰めたりしてくる。


果たして彼女はどちらのパターンか。


「そ、ですよね…あの、じゃあお願いがあります!」


後者のパターンだったらしい。

面倒くさくなってきたな。

舌打ちをしたい気分だが、こんな小さなことで僕の人生計画が狂ってはならない。


「あたしに貴方の言葉で死ねって言ってくれませんか!」

「………は」


彼女の口から出た意外過ぎる言葉に流石の僕の鉄仮面の笑みもひきつった。


「あ、引きました!?でもあの、お願いしますッ!」

「な、何でそんなお願い…」

「変態に思われてもいいんで!」

「いや、僕が聞いてるのは理由……」

「あ、すんませんッ、あの、あたし、昔から好きな人に死ねって言われて殺されるのが夢だったんです…」

「………………」


無理な要求ではなかった。

なかった、が。


………………。


「へえ、面白い性格してるね」

「すすすすんません」

「死んでくれないかな」















「あたしあの時はまさかリドルがここまで腹黒だったとは思わなかったんだもん」

「ふうん?」

「そりゃ腹黒っぽいなーとか思ってたよ?思ってたけどさ…」

「まだ無駄口叩く余裕あるんだ?じゃあもう力込めようかな」

「いや既に限界だから!これ以上首絞められたら確実に死ぬ!だからそろそろぎゅゆぇっっ!」

「僕に殺されるなんて本望だろう?」



計算違い
(声掠れるまで絞めやがったこの野郎!)(次は声帯潰そうか)(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)




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