いじめっこ
「リドルん!」
「………」
あたしの声でリドルんが振り向く。
そして、絶対零度の視線で睨まれた。
くすん、リドルんてば相変わらずつれない。
でもリドルんて呼ぶのは入学式の時からの癖だから今更変えられないよね!
リドルんと呼んだ瞬間に周りのファンさんが一斉にあたしを睨んできたのはスルー。
だってリドルの本性も見抜けないバカな女共にそんな目で見られたって痛くも痒くもない!
「ねぇ、あんたトム様の何?」
一人の世間知らずのオジョーサマがあたしに突っ掛かってきた。
えーと確かコイツはアリス・ウォーカーだったっけ。
二個上の純血。
あたしはソイツをスルーしてリドルんに歩み寄った。
「ちょっと、あなた何様のつもり!?私を無視するなんていい度胸じゃない!」
それでもスルーしようとしたら次は腕を掴まれたため、仕方なく彼女を見た。
「あら、ウォーカー先輩こんなところでどうしたんですか?」
その一言でキレたらしい。
額に青筋が浮き、まあ綺麗と言えなくもなかった顔は怒りで歪んだ。
「ちょっと、いいかしら…?」
リドルんの手前だからだろうか。
彼女はこの場では喧嘩を売ろうとはしなかった。
「ええーっ、無理です」
「……………本当に、いーい度胸…」
彼女の形相は先程とは比べ物にならない程歪み、今にも殴り掛かりたそうに右手がブルブルと震えている。
リドルんはめんどくさくなったのか「じゃ、僕はダンブルドア教授に呼ばれてるから」とさっさと行ってしまった。
そうしてその場にいる女共が勝ち誇ったように下卑た笑みを浮かべた。
「今夜12時またここに来ることね。来なかったらどうなるか分かってるわね?」
「わかりませーん、ちゃんと説明してくださーい」
その言葉で殴られそうになったが、丁度いいタイミングでスラグホーンが来た。
「ああ、これ、君たち、何してるのかね」
それを目にした彼女らは苦虫を噛み潰したような顔をして、擦れ違いざまに「運が良かったな」と呟いた。
まあ、俗に言う負け犬の遠吠えと言うやつだ。
食堂で少し魔法を使って、あたしはリドルの隣に座った。
にこやかな笑みを絶やさぬままにリドルは話しかけてきた。
「次リドルんなんて呼んだらどうなるか分かってるな?」
「えへん、癖だから仕方ない!」
「何で威張ってるの」
「あ、そうだ。今日12時に呼び出されたー」
「そうか」
「心配しろよ」
「死んでくれて結構」
「ぎゃぼん!」
あ、今ウォーカーと目があった。
手を振ってみた。
面白い表情をされた。
「リドルんてば人気過ぎー!ちょっとはあたしにモテ度くれ!」
「残念ながら君がモテるには生まれ変わるしかないね」
「それ遠回しに死ねって言ってる!?」
「死ね」
「わぁ直球ストライク来たー」
「僕は食べ終わったから先に談話室にいることにするよ」
「あ、うちも行く」
あ、そ、とリドルんはさっさと歩き出し、そんなリドルんの横を歩くあたしをリドルファンの方々が睨み付けてきた。
何だか面白くてリドルんの腕に抱きついてみる。
リドルんも女避けになると思ったのかお咎めはなかった。
夜12時、言われた通りの場所で待つが中々来ない。
「むう」
「あら、脅えずに来たのね」
後から姿を現したウォーカーは何やら息切れしている。
後ろに6人いるが、彼女らも息切れしている。
「あっれー?遅かったですねー」
「煩いわね!」
「もしかしてさっきまで腹痛とかなってました?皆」
相手の顔から血の気が引いていく。
図星だったようだ。
「皆一気になっちゃうなんて」
あはっと笑ってリアは続けた。
「もしかして夕飯に何か入ってたんじゃないですか?」
にこぉっと不自然な位ににこやかに笑えばさすがの女子達でも察したのか、ハッとした表情でこちらを見た。
「まさか、あんた…」
「3…、2、」
「っ、よくも…」
「1」
相手が杖を出したのとあたしが「0」と言ったのは同時だった。
呪文を言う前に、どうやら自分達の変化を感じたらしい。
「あれぇ、先輩方、顔色悪いですよぉ?」
何したの、と聞きたいだろうが声を猿の声に替えたため、キーキーとしか出ない。
「あっれぇー?キーキー言ってて何て言ってるのか聞き取れませんよぉ?」
クスリと笑ってリアは杖をヒョイと振った。
するとあちこちに魔法薬等が現れた。
「あ、次あたしに喧嘩売ったらどうなるか、もう分かってますよね、オジョーサマ」
バサリとローブを翻しそのままリアは去っていった。
翌日、魔法薬を自分達で作ろうとして失敗した女生徒7人が哀れな姿で発見されたそうだ。
いじめっこ
(いい加減やめたらどうだい?)(愉しすぎて止められない!)