「…はぁ…」

21時を過ぎても連絡無し。きっと友達と呑んでいるのだろうけど、連絡くらいしてほしい。作って食べるのを待っていた夕飯はとっくに冷めてしまっている。

「……」

[友達とご飯行くから適当に夕飯食べて!]と送られてきたメッセージに[了解]と一言送ってスマホをポケットに入れた。たまには一緒に外で飯でも食おうと思って名前の好きそうな店に行こうとしたのに、こういう時に限って何でだよ。

「ただいまー」
「……おかえり」
「ご飯食べた?ってカップラーメン食べたの?」
「…別に何食べてもいいじゃん」
「…そうだけど…」

そういう言い方しなくてもよくない?と呟いた言葉に、俺が何食おうと名前には関係無いじゃん。と言われた言葉に腹が立った。

「何それ…!何でそういう言い方しか出来ないの…?!」
「事実を言っただけじゃん、俺が好きなもの食べちゃダメ?」
「誰もそんな事言ってないじゃん!」

さっきまで楽しく友達とご飯を食べていたのに、こんな気持ちになるんだったら帰って来なければ良かった。

「名前、そろそろ仲直りしたらー?」
「……」
「気持ちは分かるけどさ、あの家に一人じゃ松川くん可哀想だよ?」
「…一静は一人が良いんだよ」
「そんな事ないでしょ」

それに松川くん料理出来ないんでしょ?それはヤバくない?と言われてもどうせ好きなものでも食べているだろうし、私には関係無いからと捻くれた考えと、心配している私と、寂しい私がいて。

「松川、いい加減謝ってこい」
「……」
「どう考えてもお前が悪い」
「…少しは俺の味方しろよ…」
「いやタイミング合わなかったのに苛つくのは分かるけどさー言い方があるだろう?」

それにそろそろお前身体壊すぞー?ろくな飯食ってないんだろ?と言われて、最近の食生活が酷いのは分かっているし、旨い飯が…名前の飯が食いたい、名前に会いたいと思う自分がいる。

「……」

家に帰ると玄関に名前の靴があって。リビングへの扉を開けると、いつもの定位置に座っている名前がいて、それを愛しいと思った。

「……おかえり」
「…ただいま…」
「「……」」
「…名前…ごめん…」
「……私もごめんね…」

ご飯作って待っていたのに帰って来ない事に苛々したり悲しくなったり。一緒に外食でもしようと思ったら先を越されそれに苛々して悔しくなったり。ちょっとしたすれ違いが原因でケンカをして。

「一静と一緒にご飯食べたいし、でも友達も大切にしてほしい」
「俺も名前の飯が食いたいし、名前と食いたい」

勿論友達も大切にしてほしいと俺も思っている。けれど俺だけを見てほしいとも思う自分はまだ子どもなのかもしれない。

「俺、ホントお前がいないとダメなんだよ」

抱き締めた腕に力を込めると、私も一静がいないと寂しくて…と抱き締め返してくれる名前にもう一度、ごめん。と謝って強く強く抱き締めた。

「もうすぐご飯出来るよ!」
「……」
「一静…?どうかした?」
「……名前」
「ん?どうしたの?」
「俺の傍にずっと一緒にいてほしい」
「…えっ」

大学を卒業したら俺と結婚してください、と花束と指輪を渡す前に飛び付いてきた名前に驚きながらも、喜んで!と嬉しそうな名前に幸せな気持ちが溢れた。

桜音羽様 [付き合って長いカップル(大学生or社会人)、すれ違いでケンカ、素直に仲直り、最後にプロポーズ]「俺、ホントお前がいないとダメなんだよ」ということで。お待たせしましたー…!お祝いのお言葉ありがとうございます!企画参加もありがとうございます、長編も楽しんでいただけているようでとても嬉しいです!!リクエストに沿えているか不安ですが…リクエストありがとうございました!(御井)





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