確かに朝見た占いだと、災難な一日でしょう。とか何とか言っていたような気がするけれど。

「…これは…」

酷くないかな。結構なスピードで水溜まりを走り去った車の方向を見たところで何も解決はしないけれど、どうしてくれるんだ。もう学校に着くのに、白色のブレザーは斑模様になっているし、眼鏡も汚れてしまった。

「……」
「なぁ大丈夫…?」
「!…だっ大丈夫…多分…」

今のは無いよな、と同情してくれる松川くんに、そうだね…と返すと上貸そうか?と言われて丁重にお断りしておいた。松川くんから借りるなんて心臓がもたない。

「じゃあ名字よろしくな」
「……」

先生…バレー部に渡してほしいって、放課後のバレー部の体育館に行くのがどれほど恐ろしいか知らないからそんな事言えるんだ。でも

「…松川くんに会える…」

一本!今の拾えただろう!カバー!という声と凄く重い音が聞こえてきて。体育館の外の小窓から練習を見ている女の子達の及川さんカッコいいよねー!3年の先輩方カッコいいー!と話している声が聞こえて、何だか体育館に入るのが嫌になってきたけれど、とりあえず体育館の中へ入ろうと扉を開けた。

「…失礼します…」
「!あっ!危ない!」
「へ?ぶっ…!」
「あっ?!」
「うわっ…!」

一体何が…何だか顔が痛い…。大丈夫!?と心配してくれている人の顔がハッキリと見えない。

「…めがね…」
「眼鏡ー…あっ。ちょっと曲がっちゃってる…」
「本当大丈夫!?」
「すんませんでした…!!」

大丈夫だよ、と言わなきゃいけないけれどそれ以上に顔が痛くて。

「あっ鼻血…!」
「えっあっ…本当だ…」
「すっすんません…!!」
「金田一落ち着け。名字さんこれで押さえて」
「…これタオル…うぷっ」

気にしなくていいから。と松川くんのタオルで鼻を押さえてもらって、嬉しいような何だか悲しいような。

「名字さん保健室行こうか」
「おっ俺が…!」
「俺が連れていくからいいよ」
「…あの…」

一人で行けるよ、と言う前に松川くんに腕を引かれて保健室へ向かうと先生が居なくて、タイミングが良いのか悪いのか。

「名字さん大丈夫?目とか平気?」
「…平気だよ」

本当は凄く顔が痛いし、泣きそうだけれど心配かけたくない。それにこれ以上残念な所を見られたくない。

「松川くんありがとう、もう大丈夫だよ」
「本当?痛くない?」
「平気平気…!」
「……」

ぼやっとしか松川くんの顔を見れないけれど、少しむすっとした顔をしているのが分かってどうしたの?と聞く前に何故か抱き締められた。

「…!…まっ松川くん…?!えっあの…!」
「…いいから…」
「へっ?」
「いいから黙って泣いてなさい」

我慢しなくていいから、俺しかいないから。という言葉に溜め込んでいたものが溢れてきた。

「…ーっ…痛い…すごく痛い…」
「うん」
「…ううっ…」
「大丈夫、大丈夫」

優しく背中を撫でられて落ち着くと、家送るから待ってて。と言われて今度も丁寧にお断りしようとすると拒否権ないから。と言われてしまった。

「…でも…」
「名字さん視界ぼやけてるでしょ?危ないから送る」
「…ごめんね…ありがとう」
「俺がそうしたいだけ…あっ血が付いちゃってる…」
「えっ…!松川くんのに…!?ごめんなさい…」
「いや名字さんのに。多分ぶつかったときに垂れちゃったのかな…」

今日は制服を汚す日らしいけれど、上は着れないしとりあえず家までは我慢しよう。と思っていると、これ着てて。とバレー部のジャージを着させられた。

「いやいや…!ダメだよ…!」
「さっき羽織っただけだから臭くないと思う」
「そういう問題ではなくて…」
「俺のじゃダメ?」
「そういう問題でもなくて…」

じゃあ着ててほしい、と言われたら何も言えなくて。部活終わったら迎えに来るからそれまでちゃんと居てね。と念を押され松川くんを見送った。

「…松川くんのジャージ大きいなぁ…」

今日は災難な一日でしょう、しかし思わぬ幸せが訪れ幸せを築けるでしょう。

月人様 [眼鏡っ子、同学年、スパイク直撃、鼻血、水溜まり、彼ジャー]「いいから黙って泣いてなさい」「大丈夫大丈夫」という事で。水溜まりを生かせず申し訳ありません…!両片想いな松川と名前ちゃんな感じにしました。この後の展開は妄想でお楽しみください…!笑 リクエストありがとうございました!(御井)




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -