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▼心配で仕方がない


「あれ、白澤先輩じゃないっすか!」

「……どちら様?」


轟のクラスに行ったら声をかけてきた赤い髪を立てた少年。人懐っこい笑みを浮かべて俺の方に来たけどこいつ誰だっけ…。


「あ、俺同じ中学だった切島です!」

「え、お前切島なの…?随分イメチェンしたな…?」

「まあ色々ありまして」

「そうか、似合ってるからいいんじゃね?」

「へへ」


話しかけてきたのは同じ中学で交流もあった切島鋭児郎だった。中学の時と随分変わっていたから全然気づかなかったけど、よく見れば人当たりのいい笑顔とか中学の時と変わらねぇな。


「白澤さん雄英だったんすね。うちのクラスに用ですか?」

「ああ、まあ「白澤さん?」


振り返ると轟が俺の後ろから目を丸くして見ていた。どこかに行ってたのか、道理で教室にいねぇはずだ。クラス間違えたかと思った。


「あ、もしかして轟に用だったんですか」

「そうそう、邪魔して悪かったな」

「全然そんなことないんでいつでも遊びに来てください!」

「いい子か」


切島見た目はすっかり変わったけど中身全然変わってないな。すげぇヒーロー向いてそう。…あ、でも中学の時はもっと自信なさそうにしていたっけ。
中学の頃に思いを馳せていればくいっと袖が引かれた。


「轟…?」

「…帰らないんですか」

「うん?…ああ、そうだな、帰ろうか。じゃあな切島」

「お疲れ様っした!」


ぶんぶんと手を振る切島に応えるように手を振っていると、荷物を持ってきた轟に無言で手を引かれた。いつもは俺が手を引いて帰るから、轟に手を引かれるのは新鮮でこれもありだな。


「……切島と知り合いですか?」

「ん?そうだな、中学が同じ。後輩の中では仲が良かったほうかもな」

「今日クラスに来たのは切島に会うため…?」

「は?」


ようやく前を歩く轟の顔が見えた。あー…泣きそうな顔してる。そこでさっきまでの彼の行動と今の言葉に合点がいった。つまり轟は切島に対して焼きもちを焼いていたわけだ。
いつもは正門を出たところで待ち合わせている。今日轟のクラスまで迎えに行ったのはもちろん切島に会うためじゃない。そもそも切島が雄英に入学したのだって俺は知らなかったのだ。俺がわざわざ出向いた理由なんて決まっている。


「あのなあ…お前のクラス昨日敵に襲撃されただろ?」

「?ああ」

「それで俺達には特に何も知らされないまま1年A組は帰宅。俺がどれだけ心配したか、お前わかってる?」


轟がハッと息を呑むのがわかった。俺、今結構機嫌悪ぃんだよごめんな。
心配で心配で仕方がねぇのに、轟からは一向に返信は来ない。轟が強いのは知っているけれどそれは高校という箱庭の中での話であって、世間には通じない時だってある。


「……すみません、でした」

「…いいよ、もう。見たところ怪我もなさそうだしな」


帰ろうか、と立ち止まったままの轟の手を引く。今度は俺が前を歩くから結局いつもと同じパターンだな。
轟は自分の家に着くまで一言も話さなかった。俺が話を振っても上の空。やめろよ俺が一人で空回ってるみたいで悲しいだろ。不機嫌さを前面に出してしまった俺も悪いけど。


「じゃ、また明日な」

「………」

「(無視か)」

「……俺のこと嫌いになりましたか」

「!?」


俺が背を向けた途端聞こえた言葉に慌てて振り返った。なんでこいつこんなに自分に自信ないんだろうか。


「白澤さん、俺のこと「嫌いになるわけねぇだろもー!」


轟の家の前であることを忘れて思いっきり抱きしめた。腕の中で彼の力が抜けていくのがわかる。そしてよかった…なんて小さく呟かれて服を握られてみろ。
かわいすぎかよまじギルティ。