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01



この学校、並盛中学の風紀委員長である雲雀恭弥の顔に一目惚れして早半年。初めの内は容赦なく咬み殺されていた俺だが、最近では出会い頭にトンファーを出されることもなくなった。おまけに名前を呼んでくれるようになったのだから、俺はよく粘ったものだ。
そんな俺は風紀委員ではないが、応接室に顔を出すうちにヒバリの手伝いや雑用をするようになっていた。今日もいつも通り応接室に向かい、いつも通り仕事を手伝うはずだった。
………そう、はずだったのだ。


「……お前、何したんだよ」

「僕じゃないよ」


いつもは閉まっている応接室の扉が開いている時点で違和感は感じていた。が、中を覗いて確認した惨状に思わず唖然としてしまった。
ヒバリが今日の委員会会議で使用許可を取って来た応接室。その部屋は以前の面影がなく、何故か爆発した後の様に散らかっていた。にも拘らず風紀委員長様の機嫌は宜しい様だ。


「面白い赤ん坊に会ってね」

「赤ん坊…?お前が気に入るなんて何者だよ」

「さあ?僕は相手が強くて咬み殺しがいがあればそれで良いよ」

「ああ、うん。お前はそういう奴だよな」


態とらしく溜め息を零せば怪訝そうに睨まれる。うんうん、睨んだ顔も美人で好きだぞ。
ヒバリはふいっと俺から顔を逸らすと欠伸を一つ零した。


「僕は屋上に行く。片付けが終わったら起こしに来て」

「は!?おい、この部屋を片すの俺一人にやらせるつもりか!?」

「何か問題でもあるの?」

「大有りだろ!」


思わず声を荒げると今まで此方を見ていなかったヒバリと目が合った。あ、顔が良い。


「………仕方ねェな」

「(相変わらずちょろいな)」


ヒバリが呆れたような目で俺を見ていたけど気にしない。
俺は自他ともに認める面食いで、特にヒバリの顔が一番好みだ。そんな奴からの頼みを断れるわけがない。惚れた弱みというかなんというか、俺は顔が良い奴に弱いのだ。
俺は誰も居なくなった応接室で一人気合いを入れた。


「っし、さっさと終わらせるか」


この時、俺はその赤ん坊とやらのことについて詳しく聞いておかなかったことを、後に後悔することとなる。


***


応接室の片付けが終わった頃にはすっかり日が傾いていた。俺の苦労も知らず屋上ですやすやと眠っていたヒバリには若干苛立ちを覚えたが、こいつの寝顔も好きだから許す。相変わらずスリーピングビューティーだな畜生。


「……おい、ヒバリってうおっ!?」

「何だ、悠斗か」

「何だじゃねェよ。折角起こしに来てやったのに…」


そういえばヒバリは葉の落ちる音でも起きる程だったと今更ながら思い出す。もう少し反応が遅れれば危うくトンファーの餌食になるところだった。
ヒバリは既に日が沈みそうな景色を一瞥すると、随分時間がかかったね、と呟いた。


「あのなァ…あの部屋どれだけ散らかってたか判るか?ずっと寝てただけのお前に文句を言われる筋合いはないんだが?」

「………」

「…まあいいけどな。俺が好き好んでやってることだし」


ヒバリは我儘だ。自分の思い通りにならなければ気の済まない子供。多分昔の俺だったら絶対に関わらないであろう子供だ。たださっきも言った通り、俺は綺麗な顔に弱いわけで。


「帰るのかい?」


ヒバリが俺の持つ鞄を見て言う。


「当たり前だろ。俺はお前と違って学校が好きな訳じゃねェからな」

「ふうん……。ねえ、」

「あ?」

「僕も行く」

「は?何処に?」

「君の家」

「……何で?」


ヒバリの発言の意味が判らなくて全て疑問形で返答する。自分の意図を掴めない俺に腹が立ったのかヒバリは不機嫌そうに顔を顰めた。


「一人暮らしなんだから料理くらい出来るでしょ」

「そりゃ人並みには」

「ハンバーグが食べたい」

「…作れと?」

「それ以外に何があるの?」


当然だとでも言いたげにヒバリは立ち上がると、俺を置いてさっさと屋上から出て行く。
どうやら俺に拒否権はないらしい。俺は諦めてヒバリの後を追った。


「はいはい、おひいさんの仰せのままに」


地獄耳であるあいつがこの発言を聞き逃すはずがなく、飛んできたトンファーが俺の顔面を直撃したのは言うまでもない。
ちなみにこの日を境に、ヒバリはいつの間にか俺の部屋の合鍵を作って入り浸るようになった。一応俺に対して気を許してはいるらしい。