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12



並盛町のとある公園、そこの桜並木は春になるとたくさんの桜の花を咲かす。その為毎年多くの人々が朝早くから場所取りを始め、昼頃には賑やかな場所となる。しかし今年は違った。


「それで?花見をするために僕の風紀委員を勝手に使ったわけ?」

「仕方ねェだろ。お前人が居ると絶対来ないじゃねェか」

「当然だよ」


早朝、俺は風紀委員の一人を呼び出し、この辺一帯に人が立ち入らないように見張って貰うように頼んだ。勿論ヒバリと花見をする為だ。


「朝早く君から連絡が来たから何かと思えば…」

「悪かったって。でもお前と花見したかったんだよ。…桜、嫌いだったか?」

「別に、嫌いじゃないよ。ただ君なら他にも来る人が居たんじゃない、と思っただけ」

「?…いや、なんだかんだ俺が一番一緒にいるのお前だしなァ」

「ストーカーに近いもんね、君」

「失礼な」


その時一際強い風が吹いて、桜の花びらが舞う。風に靡くヒバリの柔らかそうな黒髪。普段トンファーを振るい、皆が恐れる並盛の頂点に立っているとは思えない儚げな印象。
そんなヒバリと桜、ちょうど一年前に見た光景を思い出して、俺は思わず目を細めた。


「…何だい?」

「やっぱりお前に桜は似合うな、と見惚れてた」

「馬鹿な事言ってないで早く準備すれば?」

「そうだなァ」


昨日のうちに買っておいたレジャーシートを地面に広げて、途中のコンビニで買ってきた弁当をシートの上に置いた。


「悠斗の作った料理じゃないの?」

「そりゃな。休日の早朝から弁当作る気力はねェ……って、あ。飲み物買ってくるの忘れた」

「馬鹿」

「うるせェよ。ちょっと買ってくるから、先に弁当でも食っててくれ」


俺は財布と携帯だけを持つとダッシュでコンビニまで向かった。


***


コンビニから戻ってくると、見張りを頼んでおいた風紀委員は地面に倒れ、ヒバリは沢田達と花見を掛けて勝負するという展開になっていた。


「俺が十数分席を外している間に何故こんなことに…」

「ごめん、黒瀬君…」

「気にすんな、沢田。どうせあそこにいる小さいのが原因だろ…」

「ほんとごめん…」


相変わらず苦労している沢田の肩をポンと叩く。しかしそんな彼に対して一緒にいた獄寺と山本は乗り気のようだ。


「やりましょう、10代目。いや、やらせて下さい!」

「一応ルールあるし花見してーしな」

「みんなやる気なのー!?」

「おい、黒瀬。てめーもこっち側につきやがれ!」

「お、悠斗も参加するのか?」

「普通に嫌だけど?つーかヒバリとお前らが勝負って洒落にならねェだろ」

「心配すんな、その為に医者も呼んである」


そう言ってリボーンが指差したのはDr.シャマルと言う並中の保険医だ。沢田からマフィア関係の人間だと聞いているが、大丈夫なのだろうか。


「あの人女しか診ないんだろ!!」


嗚呼、マフィアとかそれ以前の問題か。
シャマルは酒瓶を手にしたままヒバリに近付くと、姉ちゃんいる?という質問と同時にヒバリに咬み殺された。


「……おい、リボーン」

「何だ?黒瀬」

「今、あの男がヒバリに仕掛けたモンは何だ」

「気付いたか、流石だな。だが安心しろ、命に係わるモンじゃねーぞ」


その答えに、はいそうですか、と簡単に引き下がることはできなかったが、ヒバリと獄寺が戦い始めてしまった為、会話を中断した。
獄寺は新技ボムスプレッズで応戦するが、ヒバリはトンファーでダイナマイトの爆風を吹き飛ばした。


「二度と花見をできなくしてあげよう」


ヒバリの攻撃を獄寺はギリギリで避けるが、膝を付いてしまったことで決着がついた。


「獄寺はヒザをついた。ストップだ」

「やだよ」


しかしヒバリがそれで終わる訳もなく、獄寺にトンファーが振り下ろされる。それを止めたのは刀を握った山本だった。


「…今、野球のバットが刀に変わらなかったか?」

「あれは山本の武器、山本のバットだ。ヘッドスピードが時速300kmを越えると日本刀に変形するぞ」

「ネーミングセンスどうした」


山本はヒバリの攻撃を全て刀で防ぐが、ヒバリの武器であるトンファーには様々な仕掛けがあるのだ。ヒバリはその内の一つ、仕込み鉤で山本の刀の動きを止めるとそのままトンファーを振り下ろした。反動で山本が地面に伏す。


「くっそー、またかよ」

「山本!」

「次はツナだぞ」

「ええー!?俺は無理だよ、なんにも強くなってねーし!」


渋る沢田にリボーンは銃口を向ける。そしてそのまま撃った。