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「雲雀の腰巾着ってのはお前だな?」
俺の周りには明らかに不良ですという感じの男達が五人。俺を見てニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。
というかあいつの腰巾着になった覚えは毛頭ないんだが、周りからしたらそう見えてるのか。
「おい、黙ってないでなんとか言えよ」
「それとも雲雀がいなきゃ怖くて何も出来ないか?」
さっきから一言も発しない俺に痺れを切らしたのか不良達が一気に捲し立てる。面倒くせェなこいつら。
「黒瀬君!?」
「沢田…?」
誰も見てないのを良いことに思う存分暴れようとした矢先、後ろから現れたのは沢田だった。制服に指定の鞄ということは帰宅途中にこの場面に遭遇してしまったのだろう。
「お前もよく面倒事に巻き込まれるなァ」
「普通に話しかけてきた!?大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫。こいつら倒すのなんて赤子の手を捻るも同然だ」
そう言って笑えば後ろから怒声が聞こえてくる。それを聞いて沢田は更に顔を青くさせた。
「や、やばいって黒瀬君!」
沢田がそう言うや否や不良の一人が殴りかかって来る。俺はそれを軽く避けると、その勢いでそいつの腹を蹴った。
「ヒバリの腰巾着ってのは百歩譲って良しとしよう。…だがヒバリが居ないと何も出来ないってのは訂正して貰おうか」
不良達に向かってにこりと笑う。
「あの雲雀恭弥の隣に立とうとする男が、弱かったら示しがつかないだろう?」
仲間の一人が倒されて放心している奴等のうちの一人の顔面に蹴りを入れる。他が反応を示す前にもう一人。今度は腹を殴る。
「このっ…!」
「遅せェよ」
俺を殴ろうと伸ばされた腕を掴んで背負い投げる。残り一人。目が合った男が短く悲鳴を上げた。それに構わず顎を蹴り上げる。
「…呆気ねェな」
「す、すごい…」
「だから大丈夫って言ったろ?」
こちらに駆け寄ってくる沢田に笑いかける。
「黒瀬君強いんだね」
「まあそれなりになァ。ヒバリは弱い奴が嫌いだから」
「もしかしてヒバリさんと戦ったことある?」
「いや、ねェよ。万が一俺のミスであいつの顔に傷でも付けてみろ、俺がショックで寝込むぞ?」
「ほんとにヒバリさんの顔好きなんだね…黒瀬君…」
「まあな」
実際に今までヒバリから何度か勝負を持ち掛けられている。しかしその度にそんな理由で断って逃げているので、最終的に、僕が整形すれば戦ってくれるわけ?とキレられた。勿論全力で阻止したが。ついでに勝負からは逃げたので三日程口を利いてくれなかったのはつい最近の事だ。
「そんなことより、巻き込んで悪かったな。お詫びにそこのコンビニでなんか奢ってやるよ」
「え!?そんな、巻き込まれたなんて思ってないしいいよ!」
「いいからいいから。子供は素直に奢られておくモンだぞ?」
「俺ら同い年じゃん!」
俺はそんな沢田の言葉に笑いで返して、結局コンビニで肉まんを三つ買って一つを沢田に渡した。後の二つは俺とヒバリの分だ。
「あ、そーいえばさっきの不良達はどうするの?」
「嗚呼、ヒバリに連絡しといたから後で風紀委員が適当に処理するだろ」
やっぱ風紀委員怖えぇ…と顔を引き釣らせる沢田に思わず笑ってしまった。