やっと実家から戻ってきたダイヤとロウはビットの家へと呼ばれていた。
呼び鈴を鳴らし中へと入ると中で待っていたのは帰省前に見送りをしてくれたメンバー。


「ダイヤちゃーんお帰りなさーい!!」

「ただいまアリス、皆ってうわっ!?」

「セーフ」


勢いよく飛び付いて来たアリスから守るようにロウはダイヤをひょいっと抱き上げる。

目標が無くなったアリスはそのまま床へとダイブする結果になりロウに噛みついた。


「ちょっとロウくん私とダイヤちゃんの感動の再開を邪魔しないで!」

「そんなこと俺が許しません!」

「何よ何よ〜ただの女の子同士のスキンシップじゃない」

「駄目だ。アリスのは邪なオーラを感じる」


確かに…とアリス以外のその場にいた全員の心の声が揃ったのは言うまでもない。


「ちょっといい加減降せよ」

「あ、悪い」


抱き抱えられたままのダイヤが不機嫌そうに言うとロウはその場に降ろしてやる。
一連の様子を見ていたチェシャはやれやれといった表情をした。


「なんつーか、やっとお前ら帰ってきたんって感じすんな」

「相変わらずで安心したやろ?で、アンタら実家での結果はどうやったん?」


メアリーの問いにダイヤとロウは顔を見合わせ笑顔でブイサインを向けた。

それが意味することは成功。

なら、


「今度はこちらの結果を言わなくてはいけませんね」


奥の部屋からお盆を持って入ってきたビットは二人に座るように促し目の前へとお茶を出す。


「二人がいつも飲んでいる物よりかは質が落ちるかもしれませんが…」


どうぞとビットに言われカップを手に取り口を付けて一口。


「これは…レモンバーベナか」

「はい」

「こっちのコーヒーはダイヤモンドブレンド?」

「ええ流石。お見事です」

(一口しか飲んでねぇのに当てやがったコイツら!)


口をあんぐりと開けながら驚いているチェシャにはお構い無しに三人はなお盛り上がっている。

それにしても舌が肥えすぎだろ、どんだけ茶飲んでんだこの二人は!

基本的にお茶会しかしてへんからあの二人、とメアリーが言ったのは蛇足である。


「やっぱり!懐かしいなー!ボクこれ結構好きだよ!」

「口に合ったようでよかったです。ロウはどうですか?」

「ああ美味い。いい香りだ」

「レモンバーベナには疲労回復の効果があってですね、それに」

「あぁああもうそろそろ本題入れや知識オタクとお茶オタク!!」


このままでは日がくれる!と机をバンと叩きながらチェシャは叫んだ。

同じ様に蚊帳の外になっていたメアリーとアリスが止めてくれないかと淡い期待を込めていたが、その二人までもがお茶菓子を手に喋り始めたものだから自分が止めるしかないと叫んだのだった。

やはりチェシャは苦労人である。


「おっと失礼。では本題に移りましょうか」


コホンと咳払いを一つしてビットは懐から灰色の手帳を取り出した。


「これが旧図書館にて見つけた手掛かりです。最初は所々破けたり文字がかすれて読むのが困難でしたが、なんとか復元が成功して読めるようになりました…どうやらこの手記、僕のご先祖様が書いた物のようです」

「ビットの先祖?」


チェシャが聞くとビットは頷く。


「ええ僕と同じく白兎でした。どうやら色の国を転々として色々と調べていたようで。このご先祖様の手記にはこのように書かれています」

XXX年X月X日
今日は北の方までやって来た。
もう随分とこの国の特徴【色】について調べているがまだまだ分からないことばかりである。

「ビットくんのご先祖様は色について調べてたのね」

XXX年X月XI日
森の中を進んでいくと白髪の女に出会った。変な喋り方をする女で自分は夢魔だと言った。
こんな住人は初めて見る。

「ん?これってメアリーのご先祖?」

「いいや?これ多分ウチや」

「嘘ぉ?!」

XXX年X月XII日
今度は西の最果てまで来た。
そこには今では使われていない遺跡、コロシアムがあった。神秘的な雰囲気がしてどこか空気が違う。

中に進んでいくと一人の男がいた。

その男は自分は鏡の国から来たと、無色の住人だと言った。

「!」

「僕のご先祖様は偶然にも無色の住人に会っていたようです」

「大昔にもいたんだな…コイツもカラーレス見たいな奴だったの?」

「いえ、どうも違うようだったんです」

XXX年X月XJ日
あれから数日。私はこの男を監視と言う名目で会いに行っていた。
だがこの男はただ上の空で日々を過ごしているだけ。
敵意が感じない。無害なのだろうか。

XXX年X月XO日
無口な男の口から小さくて聞き取りづらいが言葉が漏れた。

…寂しい?

XXX年X月VL日
男と初めて出会った日に聞いた鏡の国について調べてみた。
どうやらこの色の国と相対する国らしい。但し行き方は不明だ。恐らくゲートは鏡。
…ここまでしか分からない。

「…鏡の国(懐かしい響きなんやろか、この気持ち)」

「メアリーさん?」


ぼんやりと呟くメアリーを不思議そうにアリスは見つめる。
それには気付かず他のメンバーは話を進める。ロウは首を傾げた。


「鏡の国って本当に存在するのか?名前だけは俺も聞いたことはあるけど」

「昔ビットと調べたことあるけどよ、あるみたいだぜ?まあこちら側から行ったことのある奴なんていないから信じていない奴が多いだろうがな」

「ですがあちら側からきたのなら話は別です。異世界と繋がりやすいこの国、可能性は無くは無い」

「で、続きは?どうなるの?」

ダイヤが手帳を覗き込もうとするとビットはなんとも言えない表情をした。

「それが…」

XXX年X月O日
今日もあの男の様子を見に行ったが、

男は姿を消した。


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