羨ましい。妬ましい。
昔からその感情ばかりで。
私が一番なのに、容姿も頭脳も何もかも一番のはずなのに。
なのに、何であの子ばっかりなの?
嗚呼本当に嫉妬しちゃう。
めんどくせぇ。うぜぇ。
どいつもこいつもヘラヘラしやがって。特にアイツは気に食わねぇ。
何でそう呑気で入れるんだよ。
本当に気に食わねぇ。
「…サラ?スペンド?」
なんでこんなところに。
ダイヤは大きく目を見開きながら目の前にいる相手の名前を口にした。
ロウ以外のメンバーは誰だろうと様子を見ている。
サラと呼ばれた少女は目を細目ながらクスクスと笑い、スペンドと呼ばれた少年は不機嫌そうな表情をした。
「久しぶりねぇ。イカれ帽子屋のダイヤちゃん」
「っ!」
サラの一言にダイヤの表情が一瞬強張る。心なしかその手足が震えているように見えた。
後ろにいたロウが出て来てダイヤを庇うようにサラとスペンドの前に立つ。
「お前達久しぶりだな。どうしたんだ?こんなとこまで来て。お茶会なら残念ながら満員だぞ」
「あはっ。ロウちゃんごめんなさいねぇ。私達、お茶をしに来た訳じゃないの」
「じゃあ何しに来たんだ?…帽子屋一族の屋敷からここまでは随分遠いのに」
帽子屋一族?
聞きなれない言葉にアリスは首を傾げた。
あの二人も帽子屋のダイヤ、ロウと同じ帽子屋なのだろうか。
ロウの問い掛けにサラは楽しそうに口の端をつり上げた。
「それは」
「宣戦布告だ」
「ちょっとスペンちゃん私の台詞取らないでよぉ」
口を尖らせながらムッとするサラを尻目にスペンドはそっぽを向いた。
困惑した風にダイヤは見つめ、ロウは冷静そうに二人の様子を伺っている様だった。
(カラーレスに連れられてきたサラ達。それにスペンドの宣戦ってまさか、)
「そのまさかですヨ。黄緑色サン」
「!」
考えを読まれた?
ニヤリとした笑いを浮かべたままこちらに視線を向けるカラーレスにロウはギクリとした。
以前の時といい、相変わらず食えない相手。
「彼女達は私ノ同胞。私に賛同してくれたかた達デス!」
そう高らかに言うカラーレスは両腕を上げると腕に巻かれている包帯がいくつも伸びて跳んできた。
「うわっ!!」
「キャッ!」
それはダイヤ達帽子屋以外の者達を弾き飛ばし、四人を囲むようにドーム状になった。
まるで獲物を逃さないための檻だ。
「皆!」
「ねぇ、余所見してて良いのぉ?」
「わっ?!」
突然鞭が飛んでくる。間一髪でそれを避けると鞭は地面に当たりその部分は抉れている。
サラは、残念と呟く。
「私の鞭は鉄も編み込んでるの。当たったら怪我じゃすまないわよぉ?」
「何でこんな事するんだよサラ!」
「カラーレスちゃんも言ってたでしょ?彼の考えに賛同してるの。私も原色欲しいもの。協力したら原色をちゃんとくれるって言ってくれたのよぉ?こんな話中々ないわ。まあ、あっちはまた別の目的だけどね」
チラリとサラが目を動かした方を見るとスペンドが愛用のメリケンサックを手にロウに襲いかかっていた。
ロウは必死に避けている。
「スペンド止めろ!」
「誰がやめるかよ!くたばれ!!」
「くそ!」
「…スペンド。止めてよ!サラもこんな事して何になるんだよ!ボク達あんなに」
「仲良しだと思ってたぁ?アハハッ笑っちゃうわ!本当は気付いてるんじゃないのぉ?」
「…!」
一方外野に弾き飛ばされたメンバーは必死にドームを壊せないかと手をあぐねいていた。
「畜生!全然ビクともしねーじゃねーかコレ!それにダイヤもロウも何でアイツらに一方的にやられてんだよ!」
悪態をつきながらチェシャはドームに蹴りを入れるが傷一つ付かない。寧ろ自分の足に衝撃が走り思わず顔が歪む。
アリスもトランプを投げるが切れず弾かれ、ビットの炎系の術も効かない。
(衝撃にも炎にも動じないとは…)
このドームを形成している包帯、ただの布ではないとビットは分析していた。
「カラーレスの力が宿った特殊な包帯というのでしょうか」
「なら術者のカラーレスを狙った方がええんちゃうの?今なら包帯に繋がったまんまやし。チェシャー!」
「チェシャがんばってなの!」
「オレかよ!ってかそれ先に言えって!」
「フフっ、気付きましたカ?確かにこのドームを保つ為今の私は動けませんネ、ですがコレならどうデス?」
パチンとカラーレスは指をならすと彼の着ているコートから包帯が落ちてくる。腕に巻かれている物と同じであろうそれは次々と人の形をとっていった。数は数十体、見た目はまるで包帯人間。
「何、あれ?」
アリスはゾクリと悪寒が走る。
なんだろう凄く不気味だ。
包帯人間達はじりじりとこちらに寄ってくる。
「私の使い人形、とでも言いましょうカ。さあ相手をしてあげなサイ」
「ウゲッ?!面倒な相手増やしちまった!」
「少し数が多すぎますね…」
「…さあ、こちらも楽しみましょウ?皆サン」