覚えているのはカラーレスの攻撃を避けて足を踏み外したこと。
そこからの記憶はよく覚えていない。


(…痛い、身体中痛い。頭もよく動かないし。誰か…)


助けて、と唇を動かすが声が出ない。

本当にまずいなと思うがどうすることも出来ずダイヤは意識が遠退いた。

意識を手放す瞬間、ロウとは違う深い緑をした髪が見えたような気がした。










…ヤ、
…イヤ、
…ダイヤ、


「ーーーーッ」


目を覚まして最初に映ったのは高い天井、真っ白な壁。
清潔なシーツの感触に自分はどこかの部屋のベットで寝かされているとダイヤは結論づけた。

ここはどこだろう、と身体を動かそうとするがズキッと鋭い痛みが走る。


(痛ッ!…そうかボク崖から落ちて。誰かに運び込まれたのかな…ん?)


重みがあるのに気づき、ダイヤは身体の痛みが出ないようにゆっくりと上半身を起こした。

するとそこにはいつもより軽服のロウが近くの椅子に座りダイヤの寝ているベットにうずくまった体制で眠っていた。

その表情には疲れが滲み出ていた。


(ロウ…もしかして付き添ってくれてたのか?)

「…やーっと起きたん?」

「!メア、」

「しーっ。もう少し小声で喋り、ロウが起きてまう」


いつの間にか現れていたメアリーにダイヤが驚きの声を上げるが、それよりも先に口の前で人差し指を立てる。

落ち着いたのを確認しメアリーは話始めた。


「先ずは今の状況話しとこうか?ここは女王の城の医務室や。アンタ…丸々三日間も寝てたんやで」

「ウソ、そんなに…!?」

「無理もないわな、崖から落ちて身体中打ってボロボロやった訳やし。皆で探しまくったんやで?ああ、一番最初にアンタを発見したんはビルらしいけど。後で礼言っとくんやで」

「そうかビルが」


崖の下で意識を手放したあの時に見た緑はビルだったのかと合点した。


「スッゴい驚いとったで〜あそこらへんの薔薇の手入れしに行ったらダイヤが傷だらけで倒れとって。凄いテンパったって」

「あはは…」

「そっからは大変やったわ…ビットは治癒魔術掛けて応急措置して必死になって。アリスやキャンディ達は泣き出す始末やし。…特にこいつは、ロウは、見てられんかったわ。寝んとずっとダイヤの事見てたんやで」

「…ロウ、みんな」


メアリーに向けていた視線を寝ているロウへと向ける。

こんなに心配を掛けてしまったんだ。

起きたらちゃんと


「…素直に謝るんやで?」

「…うん、」

「まあ何でアンタがあんなところに行ってたのかは聞かんとくわ〜」

「!!!」


ニヨニヨと笑う口許を服の袖で隠しながら言うメアリーの顔には、大方ロウがらみなんやろ?、としっかりと書かれていた。

コイツ知ってる!

顔が真っ赤になったダイヤは叫ぼうとするが、ロウの呻き声で割られた。

どうやら目を覚ましたらしい。


「うーん、…?」

「ロウ」

「…ダイヤ?起きて、」

「うん。おはよう」


目をぱちくりとさせるロウにダイヤは安心させるように笑ってやる。


「っ!ダイヤーーー!!!」

「げ?!やめろバカッ!!!」

「げふん!!!」


素早い動きで立ち上がりダイヤへと抱きつこうとするロウにダイヤは身体が痛むのをそっちのけで右フックを彼の頬に撃ち込んだ。
ロウはそのままひっくり返り床へと倒れる。

うん、相変わらず良いパンチだとメアリーは傍で見ながらそう思ったのだとか。


「怪我人に何抱きつこうとしてんだコラ!」

「ごめん、つい嬉しくて、」

「ったく…あれ。ロウ、その湿布どうしたの?」


床に倒れた衝撃でシャツが捲り上がりロウの脇腹に貼られている湿布に目が行く。
それに何とも言えない表情をするロウにダイヤは何かあったのだと察した。


「何があったの?」

「………実は…」


じっと見つめられ隠すことは出来ないかと折れたロウはメアリーと一緒に自分達に起こった出来事を話始めた。

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