(あれじゃない、これでもない。中々見つかんないなぁ…)
街でアリス達と別れた後、ダイヤは材料の調達の為西の森へと来ていた。
一通りの材料、道具は街で買った。でも現地調達でしか手に入らない物もある。
(黄緑の薔薇だけ見つからない)
辺りを見回しながら探しているのは黄緑色の薔薇。
この色の国には色とりどりの薔薇が育っている。無難な色から奇抜な色まで様々だ。何故そうなっているのかは分からない、ただ一つ言えるのはこの色の国は何でも有りだと言うことだ。
「他の色の薔薇は見かけたけど黄緑だけないな。こっちの森じゃなかったのかな」
探すのに夢中でだいぶ奥の方まで来てしまった。
目当ての薔薇は見つからないし、お腹は減ったし、もう帰ろうかなとぼやいていると一本の薔薇の木が目についた。
こんなとこに一本だけあるなんてと珍しく見ているとその薔薇の色は
「黄緑!」
見つけた!とダイヤは急いで木に近づくがあることに気づいた。
「とっ…とどかない」
自分の身長では薔薇の花までとどかない事に。
精一杯手を伸ばしても。爪先で立ってみても。一向に薔薇の花に触れることは出来ない。いつもなら一緒に来るロウに取ってもらったり、空中を飛ぶことが出来るメアリーに頼んだりしているが。
嗚呼この身長が恨めしい。
なるべくヒールのある靴を履くようにしているがそれでも小さいのには変わりないのだ。
いやいや周りがでかすぎる。その年の平均身長で言えばそのぐらいだ。…なんて言ってくれる者はおらず。
「チビで悪かったなぁあああ!!!」
ドン!
ヤケになり一人で勝手に叫んで木に向けて蹴りを一発。
一言言っておく、薔薇の木に罪はない。
「あ、やば、ってうわあ!?」
冷静になったダイヤがまずいと顔をひきつらせたその瞬間。蹴りの衝撃のせいか、上から大量の薔薇が落ちてきた。
「…結果オーライ?」
うん。そういう事にしよう。
前向きに考えるようにして座って手頃な大きさの薔薇を拾っていく。
「これで材料全部揃った!アイツの帽子ちゃんと直すことが出来るな」
アイツと言うのはロウの事だろう。
今回拾った薔薇は帽子の装飾品として使うために探しに来たようで。ダイヤ達の帽子に飾り付けられている薔薇は造花ではなく生花を特殊加工を施して枯れないようにした物だった。
「(転んだりして帽子も痛んできてるみたいだし、たまには直してやろうかな。うん。深い意味はない!)さてと!帰ろうかな」
薔薇を腰につけたバッグにしまうともと来た道を戻っていく。ふとそこでダイヤはあることを思い出し青ざめた。
「げっ幽霊話思い出した最悪。しかもこの森雰囲気あるし本当に幽霊か何か出そう。リエヴルの話ではこの話と同調して変な事件まで起きてるみたいだし…早く帰ろっと!」
「こんにちハ」
「ひっ?!」
後ろから突然声を掛けられる。驚き振り向くとそこには真っ白な人物がいた。
「なんだ人か…驚かさないでよ」
声の主を認識したダイヤは安心から胸を撫で下ろした。見たことない人間だな、と相手をまじまじと見る。
全体的に色素が薄いような…長くて白い髪。あれ?
ー白い髪の長髪の幽霊が徘徊している
「(そんなはずないよね?だって目の前にいるのちゃんとした人だし!)えーっとボクに何か用?」
「…」
問い掛けても何も答えない。表情を伺おうにも俯いていてよく分からない。もう一度声を掛けようとしたらその人物は急に顔を上げた。
その黄色い瞳と目があうと身体にゾワッと悪寒が走った。
「!?」
「アハッアハハハハッ。見付けタ見付けタ見付けタ見付けタ!」
「何だよコイツ…!」
「貴方素敵な色を持ってますネ?」
「色ってまさかお前」
あの事件の犯人。
ダイヤは駆け出した。急いで逃げないと。何故だか分からないがアイツはヤバイと本能で察した。
必死に走っていると道を外れたのか森を出て崖へと出てしまった。
「!」
「待ってくださいヨ」
「嘘?もう追い付かれて」
また森へと引き返そうとしたが追い付いてきた先程の人物に前方を塞がれ退路を閉ざされる。
やるしかないかとダイヤは銃を取り出した。
「お前誰なんだよ。何が目的だ」
銃口を向けながら睨み付けると相手はニヤリと笑う。
「初めましテ赤色サン。私はカラーレス。無色の住人ハンプティダンプティ」
無色の住人カラーレスと名乗ったその人物はふっと姿を消した。ダイヤは目を見開きどこだと辺りを見渡そうとした瞬間、背後に気配を感じる。
「しまっ…!」
口端を吊り上げながらダイヤを映すカラーレスの瞳には狂喜が滲み出ていた。
「先ずは一人」