気づいたらいつの間にか一緒に居て、いつしかよく三人で行動するようになった。
このまま大人になったらずっと一緒かな?なんて笑いあったりもしたりして。
だけどそれぞれ違う道を歩き出してお互いの関係に溝が出来るのではないだろうかと不安になったりしたが、そんなのは余計な心配だった。
今もあの頃と変わらないままだ。
「…だがクロッカよ、一応エミリアも女王という立場なのだからもう少し口調を改めたらどうだ」
「んーそうなんだけど。ついこの前改まったらエミリアに怒られてさー」
「ええそうですわクロッカ。ワタシ達昔からの仲じゃないですの。昔みたいに接して頂戴?」
「しかしエミリア」
「タクト、貴方もよ?いつも言ってるじゃない」
「諦めなよタクト〜エミリアは中々折れないし?」
「…はあわかったよ」
謁見の間でエミリア、クロッカ、タクトの談笑が響き渡る。
この三人どうやら学生時代からの旧友のようで仲が良い。
いつもは微笑を浮かべているエミリアもこの三人で居るときはよく笑っている。
「…入りづらいですね」
謁見の間の扉を少しだけ開き隙間から中の様子を見るビットとロウ。
入りづらい、とても。
「約束の時間に遅れてますのでこのまま行っても首を跳ねられますし、かと言って女王の談笑を妨げる行為もまた首を跳ねられますね…」
「…帰っていいか?」
「待ちなさい。何処かに打開策が…うわっ?!」
「いてっ!」
「ビットに帽子屋か。こんなところで何をしてるんだ」
いきなり扉を開かれバランスを崩したビットとロウは部屋へとなだれ込む形で倒れた。
扉を開いたのはタクトの様でよく分からないと言った顔をしている。
「あらあら。ビット遅かったじゃないですの」
「はっ…女王申し訳ありません!」
「まーまーエミリア良いじゃん?それまでの間久し振りに三人揃っていっぱい喋れたし?」
「まあそれもそうですわね。クロッカに免じて今回は見逃しますわビット」
「ありがとうございます」
なんとか首を跳ねられずに済んだビットとロウはほっと胸を撫で下ろす。
そして当初の目的だった帽子をエミリアへと献上する為ロウは一歩前に出た。
「遅くなり申し訳ありません、ご依頼頂いてた帽子をお届けに参りました」
「ご苦労様です。タクト帽子屋から受け取って見せて頂戴?」
「嗚呼」
ロウから箱を受け取り中の帽子を取り出してエミリアへと見せる。
それを見たエミリアはまあと嬉しそうに手を合わせた。クロッカも興味津々に見ている。
「どうですか?」
「とても素敵だわ。やはり帽子は貴方達帽子屋に頼むべきですわね」
「へースッゴい!同じ職人としてアタシも見習わなくちゃなぁ」
「ありがとうございます。妹も一緒に作りましたので伝えておきます」
「そうなの。…アナタの妹、赤の帽子屋も大部元気になりましたわね。あの頃とは見違えたわ」
「…っ」
あの頃とは、の言葉にロウはピクリと反応する。
後の3人は顔を合わせて首を傾げているが。
「…今日のところはこれで失礼します。まだ残っている仕事もあるので」
「あらあら。ご免なさい。長く止めてしまいましたわね、ビットお見送りを」
「はっ。では出口まで案内します」
「頼む」
何か引っ掛かったがその考えを頭の片隅へと追いやりビットはロウを連れて謁見の間を後にした。
エミリアは二人出ていった扉を眺めたまま。
気になったことは聞かずにいられない性格のクロッカはエミリアに尋ねる。
「えーなになに?なんの事?」
「クロッカ、」
そんなクロッカを咎めるようにタクトは名前を呼ぶがエミリアは視線を戻しいつもと同じ笑顔を見せる。
「いえ。何でもありませんわ。ところでクロッカ」
「ん?」
「貴方ワタクシに何か用があって来たのでしょ?」
「あ〜それね。実はちょっと気になる事があってさ」
「…気になる事、か?」
「うん。時計塔の針が変な動きしててさ。うちの婆ちゃんが言ってたんだけどあの針の動き、悪い事の前触れらしいんだよねー。うちに代々言われてる伝承なんだけど」
「まあクロッカのお婆様には昔お世話になりましたわ。しかしそう、悪い事の前触れ」
「ちなみにその話の信憑性はどのくらいだ?」
「結構高めだよ。婆ちゃんが現役時計屋してた頃にも同じ事があったみたいでその時は災害が起こった。今回はアタシの勘違いだったらと思ったんだけどさ、一応エミリア達にはいった方が良いかなって今日来たわけ」
「わざわざ知らせに来てくれてありがとうクロッカ。タクト、すぐに国の警備の強化を」
「ああ分かった」
「…何もなければいいのだけども」
そう呟いたエミリアは天井を見上げ杞憂であるように願った。