「は…?」
「聞こえなかったかぁ?そのネズミの嬢ちゃんをこっちに渡してくれりゃあいいんだぁ。その嬢ちゃんはな、俺らのテリトリーの森に入ってきてしかも勝手に食いもんを取ってったんだよ。ちゃあんとケジメ取って貰わねぇとなぁ?」
ずいっと小太りの男が前へ出てくる。
それにあわせてチェシャとロウも前へ出て盗賊を睨み付ける。
小太りの男は眉を寄せる。
「なんだテメぇら」
「森は皆のものだろ?」
「そーそー勝手に自分等のテリトリーなんて言ってんじゃねーよ!デブ!」
「んだと…!?」
額に血管を浮き出しながらキレる男にチェシャは挑発的な笑みでロウは表情を変えずに対峙する。
奥に居たまた別の細長い盗賊の男が声を上げた。
「おいそこの小僧ぉ!そっちのメスネズミをとっとと渡しやがれ!」
「は?ほいほいキャンディを渡すわけないじゃん。てか小僧って誰のこと」
「テメェのことだってんだ、そこの赤髪の小僧!」
ブチッ
その場に何かが切れたような音が聞こえた気がした。
アリスはキョロキョロと辺りを見回すが音の正体はわからない。
ふとダイヤの方を見るとどす黒いオーラを放っていた。
アリスは声をかけようとしたが、ダイヤからキャンディを渡され阻止される。
「ダイヤ…ちゃん?」
「あ〜あ。あいつらやってもうたわ。ウチ知らんで」
「やっちゃったなぁ」
メアリーはやれやれとロウは困ったように笑い、同じ台詞を言う。
アリスはきょとんとする。
パンッ
「うがああっ!」
突然響き渡った銃声に盗賊の叫び声。
叫んだ盗賊は手から血を流し唸っている。
「へぇ〜?誰が小僧、だってぇ…?」
いつもの声よりいくぶんか低いトーンで呟きダイヤは盗賊の一人を見つめる。
目は笑っていない、寧ろ据わっている。
その手には拳銃が握られていた。
煙が出ているということは先程の銃声はこれからなのだろう。
「えっ?拳銃?」
「アリス、この国には治安の悪い部分もある。コイツらみたいな賊もいるんだよ。だからオレらは護身用として武器を携帯してんだ」
「そっ。何かしら防衛術を持ってるって訳や。しかしこの盗賊達やってもうたなぁ」
ロウもチェシャもメアリーの言葉にうんうんと頷く。
「ダイヤに性別の間違いは御法度や」
その一言を皮切りにダイヤは盗賊の中へと飛び込んでいく。
あ、コイツら終わったな。
「お前らタダで帰れるとは思うなよぉおおお!」
軽やかな動きでもう一丁拳銃を取りだし銃口を盗賊に向けその手足に弾を打ち込んで動けなくしていく。
撃たれた盗賊の数人は悲鳴を上げるがダイヤは見向きもしない。
「ボク盗賊だいっきらいだから手加減出来ないんだよ。だからゴメンね?」
「このクソガキがぁああ!!」
無事だった盗賊の一人がダイヤの背後に回り込み刃物で襲おうとする、がその刃はダイヤには届かない。
「なあダイヤになにするんだ?」
ギチギチと鉄通しが触れ合う音がする。
いつの間にかダイヤの傍に移動したロウがダガーナイフで盗賊の攻撃を受け止めながらにこりと笑う。
怯む盗賊の刃物を跳ね返すと一瞬を付き懐へ入り、ナイフの柄で鳩尾へと一発叩き込む。
「大丈夫か?」
「余計なお世話だよ。でもま…ありがとう。残りはあと五人か」
辺りを見渡しながらダイヤは呟く。
殺気立ちながらいる残りの盗賊達は武器を取り今にも飛び掛かってきそうだ。
後ろには戦えないアリスとキャンディがいるしどうしたものか。
そうこうダイヤが思案している内にふわりと淡い色の光の粒子が浮かんできた。