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▽煎餅布団の上/シャツ/冷めた

ふたり縺れ込んだ煎餅布団の上に、数時間前の熱は欠片も残っていない。手を伸ばせばひんやりと、冷めた温度が知らせる現実。いくらくしゃくしゃに乱しても、アイロンひとつで消えてしまう、あいつのシャツに刻んだ波のように。ひとたび夜を越えればなかったことになるような、頼りない関係にすぎないのだ。(11/05/29)


▽屯所/結婚/乱暴

通い慣れた屯所を後にしてぼんやりと仰いだ空を侵食してゆく、淡く柔く新しい朝。かわりに静かに去る夜と同じようなさりげなさで、あいつの中から消えることができたなら。『結婚、するから』そう告げた声が震えていたのに気付かぬ振りで、唇ごと乱暴に塞いだ臆病者なんざ忘れて、どうかお前は幸せに。(11/05/22)


▽ホストクラブ/すべる/小説

華やぐ会話に飛び交う睦言。きらめくホストクラブにずかずかと、無遠慮に踏み入ったのは紛れもない俺の恋人で。びしゃり、言葉より先に浴びせられたのは店で最も高価なワイン。「悪ィ、手がすべった」ああもうこいつは、安いドラマや小説じゃあるまいし。苦笑いを押し殺し、尖る唇にごめんねのキスを。(11/04/26)


▽会社/座る/ローター ※gh

昼下がりの会社内、隣に座る男を見遣ってほくそ笑む。涼しい顔でキーボードを叩くこいつは、果たしていつまでその表情を保っていられるんだろう。きっちりと着込んだ品の良いスーツ姿には、一分の隙も見当たらない。そんなこいつが奥の奥、忍ばせたローターに弄ばれているなんて、一体誰が想像できる?(11/04/24)


▽夕方の坂道/浮気する/鍵

傾く夕日がつくる、伸びた影がふたつ。ゆっくりと距離を詰めて、ぴたりと重なるのを見た。その瞬間、浮かれた掌から滑り落ちた合鍵が、冷えた音を響かせながら坂道を転がっていく。すがるように拾い上げ、増えた傷痕をそうっと辿る。きっとまだ大丈夫、祈るように握り締めた指先は震えていた。(11/03/15)


▽朝の歩道橋/溺れる/プレゼント

錆びた歩道橋を一段登るたび、カン、カン、と。朝の静寂に響くふたつの足音は、陽が昇るまでのカウントダウンのよう。思わず足を止めて、目の前の背中に腕を伸ばした。ぎゅう、と力を込めれば、額にやさしい唇がふわり。別れ際にこんなプレゼント、なんて、狡いひと。こうしてまた、溺れてゆくばかり。(11/01/15)


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