※学生銀←高と銀←土



委員会の打ち合わせで殆どが潰れてしまった昼休み。
ちらりと目を向けた窓の向こうに広がる空は青く青く突き抜けて、教室を出た足は気付けばふらり、屋上へ向かっていた。
錆びた音を立てるドアを開ければ、草臥れた白衣姿は見当たらない。どうやら今日は貸し切りのようだ。

「……あ、」

忍ばせた煙草を、やっと一息つける、と緩んだ口に咥えたところで気がついた。

(ライター、忘れた)

教室に置いてきた上着のポケットに入れっ放しだ。けれども授業開始のチャイムは、つい今しがた鳴ったばかり。

(今から取りに戻るのは面倒くせェな)

唇に挟んだままのタバコを持て余して舌打ちをひとつ。すると。


「ほらよ」

す、と差し出された百円ライター。
顔を上げると、なんとなく見覚えのある隻眼がそこにあった。

(いつの間に、)

確か隣のクラスの奴だ。銀八と話しているところを時折見かける。


「……、わりィな」
「構やしねぇよ。持ってっていいぜ」

───元々は銀八のだしな、ソレ。



「え、」

付け加えられた言葉に目を見開く。その様を面白がるような目でじとり、ひと舐めして目前の男は口端を歪ませた。

「あいつに返しといてくれよ。どうせ今晩も会うんだろ?」
「な、んで……」

どういう訳か、この男は銀八と自分がどんな間柄にあるのか、を知っているらしい。

「何で知ってるんだ、ってか?気になるんなら、大好きな“センセイ”に聞いてみるこったな」

揶揄を滲ませるその言い草が鼻について、思わず相手の胸倉に手が伸びた。

「てめェ、あいつの何なんだよ」
「さァな。少なくともお前さんよりは銀八のこと、知ってると思うぜ?“優等生”の土方くん」

ククッ、
剥き出しの嘲りを漏らしたそいつが続け様に放った言葉に、背筋を伝う厭な汗。


ふざけんじゃねぇ、

叫ぶよりも早く生まれた動揺が喉につかえて、僅かにタイミングが遅れた。
その隙に振り払われた腕がほんの少しだけ、余裕を失っているように感じたのは気のせいだろうか。

突き抜ける青の背景にはおよそ似つかわしくない、歪んだ笑顔が脳裡で囁く。

───テメェなんかに銀八はやらねェよ。


(ああ、もしかしなくても、これは)



宣戦布告




(10/04/12)
高杉くんと先生はご近所さんだったらいい

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