closed loop



「おかえりィ」

部屋に戻った新開を迎えたのは、ほんのり掠れた気だるい声。その声の主はといえば、ぐしゃぐしゃになったシーツの上で、情事の痕を隠すこともせず、ながい四肢を投げ出している。

「……シャワーくらい浴びたらどうだ?」

新開はそんな荒北に対して、どうせ言っても無駄と知りつつ、溜め息混じりに促した。

「ダルいからあとでいーや」

やっぱ1日に三人相手は疲れるなァ、と続けた唇は、しかし満更でもなさそうで。寝返りを打った拍子に、ぼたり。荒北の脚の間から滴る残滓が、シーツの白を濁らせた。

「あのさ、」
「『いい加減自分を大事にしろ』ってぇ?」
「……そうだよ」
「これでも相手は選んでるよォ?」
「そういう問題じゃなくてさ」
「なに、オレだけにしろとでも言いたいわけェ?」

そう言えたなら、どんなに良いか。けれど言ったところで、荒北には従う気などさらさらないに決まっているから言わないだけだ。荒北はそれをすべて知った上で聞いてくるのだから、本当にたちが悪い。
見上げた先の新開に、見下すような視線を投げて。くだらなァイ、と笑って一蹴。

「それより、手ェ空いてんなら手伝ってくれるゥ?」

これ、と示す指先を、つぷりと後孔に飲み込ませれば、反射的に新開の喉はこくりと動く。それを見た荒北は、いかにも愉しげに薄い唇を歪ませた。



「ン……ふ、ぁ」

わざとらしい甘ったるさを秘めた声に、脆弱な理性はぐらりと揺れる。
いったい自分はなにをしているんだろうな、と。誰のものとも知れない精液を荒北の中から掻き出しながら、新開はひっそりと自嘲する。
どうしてこんな、誰にでも(本人にはそれなりの基準があるらしいけれど)足を開くような相手に、ばかみたいに固執しているんだろう。けして自分だけを選んではくれないというのに。

「せっかくキレイにしてもらったとこ悪いけどさァ、」

その上、性格だってひどく歪んでいる。新開の気持ちを知っているくせに、踏みにじるのを楽しんでいる。それをわかっていても尚、荒北を諦めきれない新開も大概ではあるけれど。

「なーんかまだ物足りないから、付き合ってくれるゥ?」

選択肢などあってないようなものだ。捕らわれたら最後、この男から抜け出せる日なんて来るのだろうか。きっとそう思っているのは新開ばかりではないのだろう。恐らくは、割り開いた太股に日ごと増える傷の数ほどに。



「そこ、ン……あ、ァ、もっと、」

使い込まれた荒北の孔は難なく新開を迎え入れて、的確に快感を搾り取っていく。 なけなしの理性で外に出そうと気遣う腰に巻き付く脚はそれを許さず、奥へ迸る熱さだけをひたすらに求めた。

「…お疲れさまァ」

満足気に言い放った荒北のしろい肌に、またひとつ刻まれるあかい勲章。
所詮はそのうちのひとつにすぎない男は、持て余した感情のやり場も見当たらず、力なく溜め息を落とすばかりだ。



(H23/11/29)
えっちな兄さんいい肉便器の日ということで、ここはやはり初期北さまだろ!!と。笑

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