そもそも俺はキリスト教じゃないし、この日に特別な思いがある訳でもない。家族でフライドチキンとケーキを食べるくらいの行事だ。しかもそれは毎年俺が買っていた。(両親は大体年末ギリギリにならないと帰ってこない)
親に言われた買い物をこなし、早朝妹たちの枕元にプレゼントを用意する。別にサンタクロースなんか信じるような性格ではなかったが俺は枕元のプレゼントなんて見たことが無かった。(俺の時は大体手渡しだった)
大人になってからはクリスマスも仕事を入れていたし、逆に休みやイベントに囚われない性格が幸いした。情報は生き物なので働けば働く程俺の好奇心を擽る情報に出会える。まさに天職だ。……が。
今年の24日は流石の俺も休みを入れていた。追われる身である波江には悪いが、今年はどうしても休まなくてはならないのだ。
人ラブ、仕事ラブな俺がそれよりも更に優先しなくてはならない事とは、

付き合って3ヶ月。デートは数回。キスはもうした。お泊まりはまだだが……今夜、俺は初めて『彼氏』の家に泊まる。
俺の家の方が広くて綺麗で夜景も見えるしお洒落なのだが、相手がどうにも落ち着かないと言うので仕方がない。
『お泊まり』とは言ってもお互い大人だ。いい関係同士のいい大人が二人っきりで一晩過ごすとあれば当然、あはんうふんでごにょごにょごにょな展開になる筈だ。
今までも数回、本番にはいかずとも、少しえっちな展開になった事はあった。だから不思議と嫌ではない。
しかし、『彼氏』と言うからには相手は当然男だ。そのうえご存じの通り俺も男である。女の子相手ならともかく、男同士。弊害もたくさんある。俺も男同士は初めてだった。
向こうも恐らくそうだろうと思う(そもそも性行為自体したことあるのか?)ので、一応こっそり事前にネットで調べてみたりしてみた。そして必要と思われる材料を揃え、現在に至るわけである。

一応今日は朝からサンシャイン水族館に二人で行き、美味しいご飯を食べ、買い物をするという一人前のデートなるものもしてきた。今はその帰宅の最中だ。

「ん」
ワインの入った重いビニール袋を俺から引き取り、傍らに立つ男はまるで重みなんて感じていないかのような足取りで歩いていく。彼のトレードマークである金髪は健在だが、今日はバーテン服ではなく普通の私服だ。とは言っても特別洒落込んできたようには見えない。ジーンズに、パーカー、そのうえにコートとマフラーという出で立ちた。しかし彼はそもそもの顔とスタイルがいいのでそれだけでも全くみすぼらしく見えない。
俺は防寒対策の為ぐるぐるに巻いたマフラーに顔を埋め、軽くなった手を手持ち無沙汰にコートのポケットに突っ込んだ。
「おい」
その手をゴツゴツと骨ばったシズちゃんのでっかい手がきゅっと握りしめる。俺はなんだか少し暖かい気持ちになってしまって、ふとこれが一般的な恋人同士というやつなのかと感慨深く思ったりした。
そうこうしている内に辺りは完全な住宅街で、シズちゃんのアパートまであと数十歩というところである。

…………駄目だ。ドキドキしてきた。俺は熱くなってきた頬を隠すために殊更マフラーに深く顔を埋める。アレを、アレを使うときが来たのだ。遂に。いやでもまだ時間はたっぷりある。よし、どうとでもなれ。

程なくしてシズちゃんの部屋に着いた俺達は、さっき帰り際に買ったワインを飲みつつのリラックスタイムに入っていた。緊張したせいかいつもより酔いが回るのが早い。二時間ほどして緊張もだいぶ解けてきたのか俺はすっかりいい気分になっていた。
普段はそれ程飲まないのだが、それも俺がシズちゃんにすっかり気を許したと言うことだろう。
「なあ……臨也」
「……?」
不意にシズちゃんに呼ばれ、とろんとした目を向ける。と、頬を微かに朱色に染めたシズちゃんと目があった。いつになく真剣な目である。不覚にもドキッとして俺は口を閉じた。
「……い、いいか……?」
恥じらいながら伸ばされる手にドキドキする。俺はコクコクと頷き、鞄に忍ばせたアレのことを考えた。全身に柔らかくずっしりとした人肌の重みが掛かり、ゆっくりとソファーベッドに押し倒される。
シズちゃんの熱い息が俺の首筋にかかり、シズちゃんが興奮してるのが分かった。それを感じながら俺もバカみたいに興奮していて、お互いにはぁはぁ言いながら唇を重ね、シズちゃんの舌が俺の唇舐める。俺は口を少しだけ開けてその舌にぱくりと食い付き、ちゅうちゅうと吸った。唇の端から唾液が伝うのも構わず、シズちゃんの舌を舐めたり甘噛みしてみたりと夢中になって貪った。鼻に抜けたような色っぽいシズちゃんの声に耳まで犯されてゾクゾクする。
「………ん…っ」
俺がバカみたいに興奮していると、反撃だと言わんばかりにシズちゃんに舌を取られる。舌根からがぷりとシズちゃんの口内に引き入れられ、クラクラするくらい強く噛まれた。ジンジンする患部をぬらぬらと労るように舐めあげられて、正直腰が抜けた。そして自分でも吃驚するくらい勃ってる。それはシズちゃんも同じらしく、俺の足にも熱くて硬いものが当たっていた。
興奮しすぎて眦に流れる涙なんか全く気にならなかった。シズちゃんから荒い息の雨が降ってくる。
「…臨也……いざや……っ」
うわごとのようにシズちゃんが何度も俺を呼ぶ。唾液と涙でぐちゃぐちゃになってる筈の俺の顔いっぱいにちゅっちゅっと啄むようなバードキスで、あっという間に俺の顔はシズちゃんの唾液と汗まみれになった。でも不思議と不快じゃない。
「…………っ、シズ、ちゃ」
遂にシズちゃんの手が俺のカットソーの裾から服の中に侵入してくる。思わず声をあげてしまったが、シズちゃんの手は止まらない。腹の上を乾いたシズちゃんの手が滑って少し擽ったかった。シズちゃんの手が徐々に上がってきて、飾りみたいな胸の尖りを撫でて捏ね回す。別段気持ちいいとも思わなかったが、シズちゃんに触られてるだけで興奮するから不思議だ。
「……いざや、いざや」
シズちゃんに呼ばれる。これは本格的に、アレの出番だ。手を伸ばしてシズちゃんの股間に触れてみる。苦しいくらいに膨れたそこは驚くほど熱くて吃驚する。俺にも同じものが付いてるけれど全然違った。余りに苦しそうなので可愛そうだと思って撫でてやるとシズちゃんがちょっと呻いて、俺の首筋に噛みついた。
「…………ッた……!」
周知の事実だとは思うけど、シズちゃんはバカみたいに力が強い。強いなんてもんじゃない。化け物なみだ。そんな奴に興奮間際に噛まれてみろ。それはそれは、食いちぎられるかと思った。痛いなんてレベルじゃない。
俺は目を白黒させながら、シズちゃんの股間の釦を外し、チャックを下ろした。下着を下ろし、遂にシズちゃんのチンコが露出して俺の手の中に収ま……らなかった。
「……シ……ッ、シズ、ちゃ、」
さすがの俺も吃驚しすぎて思わず手を引っ込めてしまう。
チンコから手を離すと、シズちゃんは少し息を吐いて俺からちょっと離れた。
しかし離れればシズちゃんの屹立した立派なそれがしっかりと目に入り、よりその大きさが際立つ。先走りでてらてらと濡れた亀頭や、血管が浮き出る棹の部分。痛みで萎えかけていた俺のチンコもいつの間にか興奮の形に姿を変えていた。
「……シ、ズ……ッ、」
シズちゃんの手が俺のズボンへと伸びる。ズボンを乱暴に脱がされ、足を一くくりにして持上げられた。昨日と今朝念入りに洗ってきたとは言え、俺の恥ずかしいところが全部シズちゃんから丸見えになる。恥ずかしい。なんとか足を下ろして欲しくて暴れる。そこではたと気付いた。
「……ま、まって、生は駄目……っ」
ネットでの情報によると、男同士の性行為では生でのリスクがかなり大きいらしい。そりゃそうだ。元々は出す為のところに入れるのだから、それくらいのリスクはあって当然である。少なくとも、女の子とするときと同じくらいは重みがある。それだけでは無く、ただするだけでもかなりリスキーな事なのだ。ネットでは長い目で見たらやらない方がいいとも書いてあった。それでも俺はシズちゃんに俺で気持ちよくなってほしい。
シズちゃんが俺から少し離れる。はぁはぁと荒い呼吸と興奮して紅潮する頬と潤んだ目が欲にまみれていた。シズちゃんが俺に興奮してると思うと堪らない気分になる。
同時に、どうしたらいいのかわからないといったような表情をしている所を見ると、やはり何も考えて無かったんだろうと思った。
でも大丈夫。こんな事もあろうかと俺は予めアレを用意してきたのだ。

俺はシズちゃんの下から身体を起こして自分の鞄からコンドームの小さい箱を取り出した。シズちゃんはきっと大きいと思って念のため一番大きいサイズを買ってきたけれど、正解だったようだ。ゴムの小袋を一連手にして、四つ足で布団に戻ってくる。シズちゃんの部屋は狭いから、こういう時雰囲気が壊れなくていいと思う。
「……着けてあげる、ね」
胡座をかいているシズちゃんに跪くようにして開けたゴムの先端をシズちゃんのチンコに押し付けた。
距離が近くなったため、シズちゃんの大きくなったチンコの迫力たるや凄いものだった。まさに威風堂々と立派に勃起しきったそれを見て羨ましさ半分、恐怖半分で複雑な気分になる。
上手くゴムを装着しようと、棹を支える為に添えた手のひらがシズちゃんの熱で火傷しそうに熱い。手の中で血液がドクドクと波打っているのがわかる。びくびくと震えるそれが触っている内にまた大きくなった。片手だと心許ないので両手で包むように大事に持ち、ゴムの両端に指をかける。
「…………っ!」
シズちゃんの切羽詰まった息がかかって、大きな手が俺の手に添えられた。
「……ごめ、ま…待って、も、ちょっと……っ」
まず一番大きな亀頭をゴムの中に納めるためにぐいっとゴムの口を目一杯左右に拡げる。
「…っ、ん? …………んっ」
目一杯拡げている筈なのに、どう考えてもシズちゃんの亀頭よりもゴムの口の方が小さい。シズちゃんの先走りで入り口も俺の手もヌルヌルになっている筈なのに、まず亀頭が入らないのでどうにもならない。
これ以上拡げるともう元に戻らなくなりそうだ。……というより、破けそう。
「……っ、おい……っ、!」
力任せにぎゅうぎゅうと押し込んでいるうち、シズちゃんが辛そうな声を出す。そしてゴムを持った俺の手を制すシズちゃんの手に力が篭る。瞬間、俺の手首がみしみし言って、ずきずきと痛んだ。眉根を寄せてシズちゃんのチンコから手が離れる。ぽろっと口の伸びたゴムが俺の手から滑り落ちる。
「…い゛ぃ……っ! ぃたたたたっ、ちょっ、痛い痛い痛い……! シズちゃんっ!」
「……ぅわっ! すっ、すまん!」
慌てたシズちゃんの手が離れ、締め上げられていた俺の手がやっと解放された。シズちゃんに掴まれていた手首にはくっきりとシズちゃんの手の跡が残っている。その跡をシズちゃんが撫でた。見るとシズちゃんは泣きそうな顔をしていた。俺はシズちゃんに大丈夫だと必死に伝える。そしてシズちゃんのチンコが萎えていない事を確認した。だってこんな中途半端な所でやめるなんて出来ない、というかしたくない。
「…………大丈夫、だから……続き、ね、しよう……?」
萎えかけたシズちゃんのチンコにさりげなく触れ、棹から亀頭に向けてゆっくりと優しく撫でる。それだけで再びガチガチに硬度を取り戻したそれにほっとしつつ、俺のものも熱くなるのを感じて自然に息が上がった。そのまま何度もシズちゃんのチンコを上下にゆるゆると撫でた。手の中でシズちゃんのチンコがびくびくと反応し、シズちゃんが息を詰めながら半身を俺に預けてくる。シズちゃんの方が一回り俺より大きい為、ずっしりとした重みが俺に伝わる。俺もいい加減苦しくなってきて、はぁはぁとシズちゃんの首元で喘ぐ。