尻切れトンボ | ナノ


※尻切れトンボな軍パロ。皇国を読んで滾っていたところにアニくじの破壊力でした(今更)


チッと小さな舌打ちをして折原は呟いた。傍らに立つ少尉には聞こえるか聞こえないかの小さな声だ。「忌々しい」そして広げた東西の地図を睨みつける。
戦況は折原属する東軍が制している。にも関わらず、折原の機嫌が著しく悪いのは、彼が自分自身で下した戦法が気に食わないからであった。折原は手袋を外し、血が滲むほど強く親指を噛んだ。折原の悪癖とも自傷とも呼べるその行為は、彼の苛立ちを顕著に示していた。
砲弾と断末魔、血と硝煙の匂いが風下の駐屯地に流れてきていた。そして未だ合流していない小隊。――無能な上司の子守を任された東軍きっての<人間兵器>率いる精鋭部隊。
それらの合流で全てが決まる。
精鋭とは言え、個々の兵士の戦力値は大した事はない。問題なのは<人間兵器>の実力である。奴は、ただの人間でありながら銃も剣も通さない強靭な身体を持ち、圧倒的な力の差を以てして、ものの数分で一個隊を殲滅させてしまう。彼が属している限り東軍の勝利は約束されたようなものだった。
折原にはそれが気に食わない。
彼が東軍の秘密兵器、最終兵器であるが故に、彼を中心とした作戦が回っていく。そうして短気な彼を出来るだけ隠密に、かつ効果的に戦力として利用するために、戦略が練られ、そうした中で折原の部下達が捨て駒として何十と死んでいくのだ。
「忌々しい」
今度は少尉にも聞こえるような苛立ち紛れの声で言った。その威圧感に少尉の肩がビクリと震える。折原は血の滲んだ指の傷口を抉るように舌を這わせ、肉を削ぐように噛み付いた。苛立ちの為に痛みなど微塵も感じなかった。
「あの化物のせいで俺の愛すべき人間たちが死んでいくなんておかしいよねぇ」
唇の端に血を滲ませ、折原は独り言のように言い放った。



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おわりです
すみません(--;)