ビニール傘がいつの間にか消えている。 でもそんなことは気にしない。 ちょこまかと逃げ続ける目前の人物を一発殴ることだけを考える。 しかしすでに何時間もこうして逃走を続けているだけあって臨也の息も上がり始めているようだった。それでも軽々とフェンスだの小さな雑居ビルだのを飛び越えていく姿に軽い殺意を覚えながらも、静雄は鬼ごっこを開始したときとなんら変わらない様子で眼前にある路上駐車のバンを飛び越えた。 「あ?」 刹那、臨也の姿が無い。 静雄か不意に空を仰ぐと顔面に衝撃が走り、サングラスが割れた。 「めーいちゅーう☆」 青空が話しかけてきたーーではない。臨也の楽しそうな悪意のある声と共に静雄は降ってきた物体を改めて見る。ありふれた赤茶色の植木鉢の破片である。濡れた静雄の髪や顔には粘土質の土がべったりと張り付いていた。さらに足元には三色パ「クソノミ蟲がァァァァァッ!!!!!!」 力任せに両脚の跳躍で全身を押し上げ、跳躍。 「げ」 その想像以上の速さに逃げ遅れた臨也が顔を青ざめさせ、後ずさった。 「あ」 がくん、と足元が掬われる感覚と体中に感じる重力。予想以上に足場は悪く、そして予想以上にこの場所は狭かったのだと今更ながらに気付いた。だがしかし気付いたところでもう遅い。 落下。 咄嗟に受け身を取ろうと身構えるが、3m強の高さからの落下ときては完全に衝撃を受け流すことは不可能だった。 どん、という鈍い音と共に全身に撃痛が走る。 「……ッ!!いぃっ…………っ!!!」 ごほごほと咳き込みながら、落下した路地裏で転がっている臨也を見下ろし、静雄は固まった。あまりに突然過ぎて理解が繋がらない。 とりあえず様子見に、静雄もビルから飛び降りた。 「……〜ッッ……だから厭だったんだ……」 背中を抑え、ごろごろとのたうち回っている臨也を見下ろし、静雄はにやりと意味ありげに笑う。 「なぁ逃げ足の速い臨也くんよぉ……ちょこまかちょこまか逃げやがってびしょ濡れじゃねぇか!どうしてくれんだ、あぁ!?」 誰がどう聞いても理不尽極まりない理論を吐いた静雄を睨み付け、臨也はその場から離れようと両手を伸ばし、ずずず、と身体を引きずる。 だがしかしそれも静雄の足によって止められた。 「……………っ!!!!!!!!」 ごり、厭な鈍い音と声にならない臨也の声が雨音が響き、静雄は眉を寄せる。 「……〜っっ!!!……最悪だね、シズちゃん、今絶対折れたよ……っ!っていうか、最悪、なんで生きてんの?死ねよ。マジでさ。頼むから」 「手前がその五月蝿ぇ口閉じたら考えてやるよ」 臨也は解放された掌を庇いながら、せせら笑った。 「ははは!……そりゃ面白いね。ならさぁ、シズちゃん俺の側に来なければ良いじゃないか。そうだよ。今日は俺、池袋行ってないしさぁ!なんで来たんだよ!?」 「五月蝿ぇ、今日は仕事もうまくいかねぇしよぉ……金返さねぇ癖にペラペラペラペラ言い訳ばっか言いやがって」 「はぁ?!なにそれ、愚痴?俺関係ないじゃん。不条理じゃない?もしかしてシズちゃん俺以外に愚痴聞いてくれる人見当たらなかったの?うわ俺優しいなぁ!死ねよ」 苛々と手の骨を鳴らす静雄に、臨也も負けじと無事な方の手でナイフを構える。 「あぁそうだよ悪ィか!?あぁ?!」 「………………ッちょ、 次の瞬間、ノイズのような雨音にかき消され、凄まじい破壊音と粉塵が巻き上がり、ガラガラと細かくなったコンクリートが降り注ぐ。 ーーーーーーーーーーー 群青続きでした。でも間が見つからなくて;サーセン orzしかも続き書けない;;;;; このあと恐らく二人仲良く救急車だと思います。でもシズちゃんピンピン。 雰囲気小説にも程があるww 穴埋めしてその内別物として………やろうか、なー……なー…… 言い訳でしたっ |