おしおきしましょう | ナノ




「別にね、俺は怒っている訳じゃないんです。俺は寧ろ喜びさえ感じています。だってあなたは俺が予想していた以上の行動を取ってくれたんですから」
男の上に跨る黒服の青年は、上機嫌な様子でにっこりと笑いながら首を傾げた。単に表情だけを見たとしたら男の美しい相貌と相まって年に似合わぬ可愛らしささえ感じられる。
男は青年よりも十以上は年上に見えたが、この場の主導を握っているのはどう見ても青年だ。男は青年に圧し掛かられたまま、口にはボールギャグを銜えさせられ、全裸で仰向けに倒れている。そして四肢を不自由に縛られ、自由に身動きが取れないようになっていた。
しかしその表情はうっすらと快感を孕んでおり、臨也に哀願するような表情を浮かべている。状況だけを見ればどこからどう見てもマニア同士のプレイにしか見えない。それは互いにとっても同じような認識なのだろうが、男にとっての意味は多少青年の思うものとは異なるらしい。
「これだから人間が好きなんです。人間はいつも俺の想像以上だ。何をするかわからないし、見ていて退屈もしない。くるくる表情を変えて、はした金で人を信じたり裏切ったり。でもそんな自分の選択にさえ罪悪感や恐怖を感じたり……そんなところがどうしょうもなく好きなんです」
青年――――もとい、折原臨也は男に向かって流麗な微笑を浮かべ、指で男の陰茎をピンっと弾いた。
「…………ッ!」
「あなたのことも、勿論好きですよ。愛しています」
引き攣った声が男の喉元から漏れる。男の陰茎は細いピアノ線のような強靭な糸でカリ首の辺りをきつく縛られており、固く勃起した状態で苦しげに赤く充血していた。つ、と透明で粘ついた粘液が陰茎を伝い、男はギクリと震えた。臨也は楽しそうにその声を聞きながら慈しむような視線を男に向け、男の上に乗ったまま自身のズボンのポケットからナイフを取り出して床に放った。ナイフは臨也の手から離れ、カラン、と呆気ないほど軽い音を立てて床に落ちる。
「でもねえ……これもビジネスだからさぁ……俺もただアンタを許すわけにはいかないんだよね。これでも俺だって辛いんですよ? でもやっぱりこういうところ、しっかりしとかないと後で響いてくるでしょう? おじさんも大人だからわかりますよね?」
臨也は小首を傾げてうっそりと笑った。童顔であるが故に年よりも幼く見えるその表情は一見して何を考えているのか分らぬ、得体のしれないものだった。
「だからね、お仕置きしようかなぁって」
悪戯っぽく臨也が笑うと、男はごくりと喉を鳴らした。
「悦ばないでくださいよ。お仕置きなんですから」
そして男の充血した陰茎に手を伸ばし、臨也はそれを無造作に掴んだ。男の身体が陸に上がったばかりの魚のように背をのけ反らせて跳ねる。
その衝撃で臨也の身体も一緒に跳ねたが、そんなことは微塵も気にせず臨也は男の陰茎のカリ首からゆるゆると撫でる。
「あっつ……もしかして、興奮してます?」
掌にじんわりと広がった熱に臨也は男を辱めるかのように笑った。男はふうふうと荒い息をこぼしながらこくこくと頷く。
「あは、嫌だなあ……遊んでるんじゃないんですから、興奮しないで下さいよ。変態なんですか?」
きゃらきゃらと楽しげな笑みを浮かべる半面で、ひどく落着きを払っている臨也の台詞に反応するように男の陰茎がびくんと震える。
臨也はそれに気が付かないようなふりをして男の陰茎を爪で引っ掻いた。
「やだなぁ……涎、だらだらですね。本当ならどうして欲しいんですかね。俺、まだ子供だからわかんなーい。俺に食べて欲しいの?」
小首を傾げながらあーんとそれを口に含む真似ごとをすると、男はあからさまな落胆の声をあげた。臨也はそれを横目でちらりと見やって、コートのポケットに手を突っ込んだ。
ごそごそと中身を探り、目当ての物を見つけてのにやりと笑う。
「これ、なーんだ?」
臨也が取り出したのは本来ならば髪を縛る為の苺の飾りがついた髪ゴムだった。輪っかになっているそれを人指し指でくるくると弄び、男の上に馬乗りになったまま臨也は尋ねる。
「かわいいだろ? これは、俺がおじさんのだらしないおちんちんをかわいく飾る為に俺がわざわざ妹の部屋から持ってきたものです」
臨也は跪いて男の股間に顔を寄せた。熱く滾って硬く反り返っているそれに唇を寄せると、精子と尿と汗の籠った臭いが鼻腔につん、と広がる。ちゅっと音を立てて男の亀頭にキスをすると、男の太い太ももがビクンと波打った。
「ふふ、ん、興奮する……」
それをにやにやと楽しそうに見つめ、臨也は器用そうな長い指でくるくるとゴムを陰茎に巻きつけていく。ぎゅっときつく縛り、仕上げに苺の飾りが反り返ったペニスの正面に来るように調整する。男が動く度に苺と白い花が付いた飾りがチャラチャラと揺れた。
「完成! ね、嬉しいですか? 俺の妹、女子高生なんですけど女子高生の髪を結んだヘアゴムでおちんちん縛られて、気持いい?」
パチンと手を叩き、男を見下ろすように体勢を変えると、臨也は楽しそうな声をあげた。
「我ながらかわいく出来たと思うんだけど、どうかなぁ……俺、昔から妹の髪結ってたから、上手なんですよ」
小首を傾げ、艶然と微笑む姿に男は息を荒げた。臨也は満足げにゴムの飾りを指で弄りながらふう、と息を吐く。壮年の使い込まれた黒いペニスに、まるで対照的な、少女が好むような可愛らしい飾りが付いた髪飾りが不自然に揺れていた。
臨也はそれを恍惚とした表情で見つめながら、熱に浮かされたように微笑んだ。
「……ん、そろそろいれたい……」
臨也は自分のズボンと下着を足から抜くと、頬を赤らめながら男の眼前に膝立ちで跨った。
男の目の前に臨也の若く、勃起したペニスが現れる。男はそれを鼻息荒く眺めながらも舐めようと首を伸ばした。
「あっ……いや……」
突き出した舌の先が臨也のペニスの亀頭に微かに触れる。驚いた臨也は思わず腰を引いてしまい、男のでっぷりとした腹の上に尻もちをついてしまった。尾てい骨に滾った男のペニスが当たり、ぬるぬると熱い粘液に臨也は腰を上げる。
「んっんん……や……」
ぬるぬるとした性器に腰を擦り付けるように動き、臨也はふうふうと息を吐いた。臨也が尻を動かす度に男の身体がぴくぴくと動く。
「俺、も、きもちよくなりたぃ……」
尻たぶと尻たぶの間の谷に男の陰茎を挟み、臨也は腰を動かした。自分で着けた苺の飾りがごつごつしていて気持ちがいい。上半身を寝そべった男の腹の上に預け、発情した雌犬のように腰を振る。
ピアノ線のお陰でボンレスハムのようになってしまったペニスは、今にもはち切れんばかりだった。臨也が腰を振る度に男の身体が跳ね、上に乗った臨也の身体も浮く。
「ひゃう、やぁんっ……ひぁぁ……きもちひぃ……」
臨也はうっとりと呟きながら、自分のペニスを男の腹に押し付ける。腹の毛が擦れて気持ちがいい。ペニスに絡み付く剛毛が臨也の尿道や陰嚢に擦れる。臨也は涎を垂らしながらよがった。
「いきたぃ? んん、おじさんっねぇ、いきたいっ? おれ、も……っきもちい……っ」
腰を男の腹に押し付けながら、ぷるぷると上半身を上げる。そして柔らかく熟れた尻孔に男のカウパーで濡れた亀頭が当たるように動かす。
「う、うごいちゃらめぇ……っ!」
男がびくびくと震えると臨也の手が汗で滑って落ちてしまう。臨也は男に必死で跨りながら悲鳴を上げた。
「や、ぁぁん、いれるっいれるの……っ……! はふ、ぅ、んん……はぃ、はぃってくるぅ……っぅぅぅん」
そう言うと臨也は、騎乗位で跨りながら、ゆっくりと男のペニスを飲み込み始めた。まず先端が入り、次に苺の飾りが不恰好に臨也の孔を広げる。
「あっ……ああ……っ! ごりごりってぇ……!」
ずぶずぶと飲み込んでいくと、敏感な内壁を苺の飾りがごりごりと引っ掻き、臨也は仰け反った。前立腺に触れた辺りでビクンと震え、そこだけを狙って腰を動かす。
「おちんちん、いぃ……っ! きもちぃよぉ……っ! もっとぉ、ごりごりしてぇ」
前立腺を削り取らんばかりに腰を動かす臨也に、男の腰も我慢しきれず跳ねる。
「ぁぅんっ……! おく、おくぅ……っ! おっきぃのぉ……もっとぉ……おく凄いぃいい」
その拍子に奥まで穿たれた臨也は腰をびくびくと跳ねさせながら果てた。男のペニスをきゅうきゅうと美味そうに食み、舌を突き出しながら獣のように喘ぐ。
ふうふうと息を整えながら、臨也は舌で垂れた涎を拭った。にやりと微笑んで、腰を浮かせる。ずるりと途中まで引き抜くと、大きくいきり立った男の陰茎が、臨也の粘液に濡れて先程よりも更にぎちぎちに膨らんでいた。
「はぁ……あは、きもちよさそー……」
真っ赤になってピアノ線を食むそれを見下ろし、臨也は笑う。
「おれのなか……そんなにヨかった……?」
男の性器と同じくらい真っ赤になって呻く男の顔は苦痛に満ち満ちていた。てらてらと光る苺の飾りが醜悪な男と不釣り合いで、酷く滑稽だ。臨也は男の、毛の生えた黒い乳首を白魚のような手で弄り回しながら熱っぽい息を吐いた。
「おれのなか、おじさんにぐちゃぐちゃにされちゃったぁ……」
汗で湿ったカットソーを脱ぎ捨てると白い肢体が露わになる。男とは対照的な薄桃色をした臨也の乳首はツン、と尖り、それを臨也が自分でなぞると、ひくひくと全身を震わせながら快感に揺れる。
その様子を血走った目をして男が眺め、芋虫のようにもぞもぞと腰を動かした。
その度に臨也の身体も跳ねるので、臨也は両腕で男の上半身を抑えつけながら、男の唇に人差し指を押し当てた。
「だーめ、んん、おじさん、忘れてなーい?」
可愛らしく尋ねる臨也に、男はふーふーと獣じみた息を吐く。臨也はくすくすと笑いながら続けた。
「気持ち良すぎて忘れちゃった? 駄目ですよぉ……おじさんってば」
そしてゆっくりと腰を下ろし、再びずぶずぶと男の陰茎を飲み込んでいく。
ごりごりと内壁を擦っていく髪飾りに喘ぎながら、臨也は恍惚とした表情で呟いた。


「これはおしおきなんだから」