BASARA成り代わり短編 | ナノ
2010.バレンタイン

今は2月。
まだまだ冬で、とても寒い。極寒と言うのに相応しい気温だ。
はぁと溜め息を吐けば白い湯気となって出てきた。
雪が降っていないだけまだマシか。
マフラーに顔を埋めながら早足に登校。
鏡を見れば自分の頬や耳が赤くなっているであろう。
自分のクラスの教室に入り友人に挨拶をしながら席に着く。
暖房が掛かっている教室は、芯まで凍えていた体を温かく包み込む。
極楽だ。
一時間目の授業の内容を用意していれば、私の名を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ってドア付近を見る。そこに居たのは・・・・・・


お市Ver.
今日も可憐で儚げな姿の黒髪美少女、織田市の姿があった。
か細く何度も私の名を呼ぶ姿はとても愛らしい。
・・・少々声が小さいのが難点だ。気付くのに遅れてしまった。
慌てて市の傍へと駆け寄った。

「おはよう。我に何用だ?」
「あの・・・市、××様にコレを渡しに来たの」

そっと差し出されたのは可愛くラッピングされた箱だった。
躊躇なく受け取り、これは何だと問えば、
「知らないの?今日はバレンタインよ・・・」
「ああ、そういえばそうであったな」
すっかり忘れてた。市は顔を赤く染めて俯く。
年相応のリアクションに微笑ましくなるが一つ気になることがある。
追求すべく視線を床に落とす市に疑問を述べた。

「我に渡しても良いのか?そなたの彼氏の浅井が黙ってはいないぞ」
「良いの・・・義理チョコだもの」

それで浅井には本命か。義理でも貰えただけでも嬉しいものだ。
にしても浅井の名前を出すだけでここまで赤面するとは。
市の言葉は淡白だけど顔が真っ赤だ。林檎のように赤い。
流石は校内熱々カップル。前田夫婦にも負けないお似合いな二人だ。

「ありがたく頂く。ホワイトデーを楽しみにしておけ」
「はい、××様・・・」

市、待ってる・・・と赤い顔のままで教室から去って行った。
まだ手にチョコの箱を持ってたということは、これから浅井に渡しに行くのか。
頑張って欲しいところだがツンデレの浅井が素直に受け取るかどうか・・・
遠くなる市の背中を見つめながら、こっそりとエールを送った。


かすがVer.
「早く来い!いつまで待たせる気だ」
そこに居たのは今日もナイスバディの金髪美少女のかすがだった。
朝日に照らされキラキラ光るその髪はいつ見ても綺麗だ。
それを本人に言ったら顔を真っ赤にしてビンタされたけど。
思春期+照れ屋というのも考え物だな。
彼女の傍に行けば、ずいっと目の前に箱を差し出された。
思わず受け取ったがコレは何だ?
私がワケが分からなさそうな顔をしていたからか、かすがは眉を寄せ仏頂面になった。

「これは?」
「バレンタインチョコだ。そんな事も分からないのか!」

そこまで怒る必要は無いと思う。
顔を赤くして怒鳴る姿は威嚇する猫みたいで可愛い。
ナデナデ、と知らず知らずの内にかすがの頭を撫でる。
目を見開くかすがに(あ、引っ込みがつかないな)と思った。

「ありがとう」
「〜〜〜っ・・・・・・」
結局平手打ちされた。
「す、すまないな叩いてしまって・・・だがいきなり撫でるお前が悪い!」

吃驚しただろ!先に撫でると言え!と吼えたかすが。
次からはそうしよう。
何気なくかすがの持っている箱を見た。
薄い水色の箱は清涼感があって好ましい印象を受ける。
何となく上杉先生を思い出す・・・・・・あ、そういう事か。

「上杉先生にそれを渡すのか?」
「か、関係ないだろう?!」
「関係は無いが応援くらいはしても良いだろう。精々励むがいい」
「〜・・・、ああ!」

それじゃあな!とまた怒鳴って走り去る彼女に再度エールを送った。
そしたらかすがは走るスピードを上げていた。相変わらずのツンデレぶりだな。
叩かれた頬は痛いが貰ったチョコを大事に鞄に入れた。
とりあえず保健室行こう。


いつきVer.
そこに居たのは後輩の銀髪ロリっ子美少女のいつきだった。
そのキラキラ光るお星様みたいな髪はとても好ましい。
それを本人に言えば、輝く程の眩しい笑顔を見せてくれたな。
素直な子で大変貴重な感じがする。今時の子供は皆マセているので余計に。

「おおーい!××兄ちゃん」
元気そうに私を呼ぶ声に癒されながらも、いつきの傍へと駆け寄った。
「どうした?」
「えーっと・・・はい!兄ちゃん受け取ってけろ」
ゴソゴソと大きい袋から取り出された箱を差し出された。
受け取ったは良いものの、これは何だ?
「今日は2月14日、バレンタインデーだべ」
「ああ、そうか。今日だったな」

前世ではよく友チョコといって友人に渡していたな。
いつきから渡されたチョコの箱は銀色の箱でピンク色のリボンで包まれており可愛らしい。
「ありがとう」
「い、良いって。改めて言われると照れるべ!」

ぽっ、と頬を赤く染めたいつきは可愛い。
いや、私はロリコンでは無いけれど。
彼女が持っている大きな袋を覗けば、まだまだ箱は残っている。

「まだ誰かに渡すのか?」
「んだ!友達とか先輩とか・・・あと、あいつに」
「あいつ?」
聞けば、いつきは周りをキョロキョロと見渡した。
「兄ちゃんを信用して言うけど・・・内緒にしてくれな?」
「ああ、分かった」

耳元で言われた名に、ああ、成程と納得した。
前からいつきは奴に好意的な視線で見ていたなと思い出した。

「ホントのホントに内緒だべ!」
「誰にも言わぬ内緒だ」

指切りげんまんをし終えた後、いつきが明るく笑った。
こちらも笑い返すといつきは「まだ渡す人居るからこれで!」と走り去った。
本命、渡せると良いな。
いつきの背中を見つめながら私は上機嫌で席に戻った。



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